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(1)鈴木先生 [ドラマレビュー]

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『 鈴木先生 』
第1回
( 2011年4月25日/テレビ東京=アスミック・エース/公式サイト
監督:河合勇人 脚本:古沢良太 出演:長谷川博己、臼田あさ美、山口智充、田畑智子、富田靖子、でんでん

本作が「学園モノ」の範疇であることは間違いありませんが、
第1話を観ただけでも、すでに既成概念を打ち破ることに成功している学園ドラマであり、
TBSの『3年B組金八先生』が完結した直後に本作のようなドラマが製作されたことは、
テレビドラマ界にとってとても大きな意義があるような気がしています。 

本作がこれまでの学園ドラマと一線を画するのが、
主人公である「先生」が特別な教育理念や確固とした信念・情熱を持った絶対的な存在ではなく、
クラスの問題に対して、彼自身が孤独に思い悩み、必死に最善の策を導き出そうとするところにあると思います。
そのことを象徴しているのが、鈴木先生(長谷川博己)のモノローグで展開するシーンの存在で、
彼の思考には最初から答えが存在するわけではなく、答えを導き出す過程が時にユーモアを添えて表現されています。

本作の特徴は学校の先生という存在を、「金八先生」のように生徒をひとつの答えに導いてゆく存在でもなければ、
「北野先生」のように情熱を持って生徒に寄り添う存在でもなければ、「GTO」のように型破りな存在でもなく、
あくまでも先生である前に一人の人間としており、その点がこれまでの学園ドラマが欠いていたリアリティを付与しています。

なんと言っても、冒頭のクラス編成会議は、「つかみ」としては最高のものだったと思います。
このシーンで早くも鈴木先生の「思考」が露(あらわ)になるわけですが、
贔屓の生徒・小川蘇美(土屋太鳳)を自分のクラスに入れるためだけにその思考回路が働いているところは、
およそ先生としてのそれではなく、“先生だって人間である”という部分が露骨に表現されたシーンだったと思います。

もっとも鈴木先生が小川蘇美にこだわるのは、ただの贔屓ではなく、彼の「実験」に必要不可欠な存在だからで、
その観点で言えば、鈴木先生の「教師としての野心」も髣髴とさせるまさに「スペシャルファクター」であり、
彼の小川蘇美に向けられた眼差しの二面表現はこのドラマの核となる部分だと思います。
そして、そのどちらの要素も一定のリアリティを伴っていると私には感じられます。

私は教育学部出身でありながら、これまで教師という職業に無関心だったので経験則では申し上げられないのですが、
直感的には本作の教師や学校についての表現には「現実」が大いに反映されているような気がしています。
冒頭のシーンが象徴的だし、先生が合コンするシーンや学校の喫煙所での先生たちの会話なども、
既成の学園ドラマならば成立し難い現実的な表現ということになるでしょう。
極めつけは山崎先生(山口智充)の「教師の性欲対策・・・」発言で、これほど「現実味」のある台詞はなく、
私はこの台詞を聞くに至って、このドラマが良作になることは間違いないと確信しました。

また、私は生徒のキャスティングや学校の雰囲気、ロケ地にも大変好感を持っています。
茶髪に化粧をした生徒やアニメのような制服を平気で登場させてしまうドラマに辟易していましたが、
本作が目指す方向性(=リアリティ)は、演出的にも作り手の確信をもって表現されていると思います。

テレビ東京がついにやってくれたかもしれません。初回視聴率2.6%、よし!

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(追記)
第1話をご覧になれなかった方へ。
こちらで公式に無料配信されております。ぜひお楽しみください!
http://gyao.yahoo.co.jp/special/suzukisensei/
ただし、当番組は放送地域が限られておりますので、
第4話以降がお住まいの地域でご覧になれるかご確認をお願いします。以下がネット局です。
 ・ テレビ東京(関東広域圏)
 ・ テレビ北海道(北海道)
 ・ テレビ愛知(愛知県)
 ・ テレビ大阪(大阪府)
 ・ テレビせとうち(岡山県、香川県)
 ・ TVQ九州放送(福岡県)
 ・ 岐阜放送(岐阜県)
以上が同時ネット。以下は放送日時が異なる。
 ・ テレビ和歌山(和歌山県)※13日遅れ
 ・ テレビ熊本(熊本県)※15日遅れ
 ・ 新潟テレビ21(新潟県)※40日遅れ
 ・ BSジャパン(全国)※7月2日(土)22:00より放送開始。
http://www.tv-tokyo.co.jp/suzukisensei/onair/index.html


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  • e97h0017e97h0017日刊スポーツ文化面に今日から初主演ドラマが始まる武井咲インタビュー。お父上の薦めで国民的美少女コンテストに応募したというのはちょっと意外。顔はそのお父さん似だそう。負けん気の強さは女優の必須条件。やはりこの子は女優向きの素養を持っている。個人的には早い時期に映画を経験して欲しい。04/24 14:55
  • e97h0017e97h0017山下敦弘監督『マイ・バック・ページ』試写会。141分という長尺を感じさせないのはひとつひとつの絵に濃厚な情報が込められているからだと思う。観ていて飽きない絵を作る監督と観ていて飽きない芝居をする俳優の仕事がここにある。山下監督のお話を聞けて本当に良かった。監督の作品を見続けます。04/24 11:56

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  • e97h0017e97h0017テレビ静岡制作『誰(タレ)よりも君を愛す!』。やっぱり藤本有紀さんはこういうカラっとした人情物語でこその脚本家だと思う。限定された舞台設定で決して多くない登場人物それぞれのキャラクターを立たせるのがとても上手。このドラマの対極に位置するような大河ドラマを本当に書けるのか甚だ疑問。04/21 20:10

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  • e97h0017e97h0017大河ドラマ『天と地と』(1969年)デジタルリマスター版。撮影技術は確実に進歩しているはずなのに合戦シーンの迫力は近年の作品を凌駕しているように感じるのはどうしてだろう。これは俳優さんの馬術や殺陣の技術と多くのエキストラや大量の馬を動員できるマンパワーがなせる業ではないだろうか。04/19 08:50
  • e97h0017e97h0017大河ドラマ『竜馬がゆく』(1968年)デジタルリマスター版。『龍馬伝』のように善人ばかりではない真にリアルな人間ドラマがここにある。和田勉氏の演出は今ならテレビ向きではないと批判されるだろう。解りやすさを犠牲にする代わりにそこに存在する人間たちが放つ息遣いと臨場感を表現している。04/19 08:38
  • e97h0017e97h0017大河ドラマ『源義経』(1966年)デジタルリマスター版。数十分に及ぶ生々しく圧倒的な殺陣の連続に画面から目を逸らすことができない。殺陣ができる俳優がいないのも事実だが、しっかりとした殺陣を撮ることへのこだわりを止め、荒唐無稽な人間ドラマにこだわっているのが今の大河ドラマだと思う。04/19 08:21

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PRIDE - CHAGE&ASKA [音楽]


CHAGE&ASKA
 『 PRIDE 』
作詞・作曲:飛鳥涼 編曲:澤近泰輔
( 1989年8月25日 / PONY CANYON )

          Official / Wikipedia  Words          

私はこの曲を昔から何度も聴いているのですが、
この動画を見つけてからというもの、何度も繰り返して再生し、新たな感動に浸っています。

この「PRIDE」が名曲なのは間違いありませんが、このライブ映像に映っているのは、
その名曲にCHAGE&ASKAのお二人が「魂」を吹き込もうとする姿なんだと思います。
楽譜があって、CDが発売されて、多くの人が聴いて、多くの人にカラオケで歌われることで名曲になるのではありません。
表現者が自分の曲に自らの気持ちを吹き込み続けることで真の名曲になるんだと思います。

私はこの動画を観て、表現者のお二人がステージ上でその「魂」を剥き出しにすることで、
その周囲のスタッフの気持ちまでも支配し、牽引していると感じました。
演奏者やステージスタッフ、そしてカメラマン、ディレクターが「いいモノを作るんだ」という意識を共有し、
それぞれが完璧なプロの仕事をしてくれていると思います。
そして、その結果として観ている我々に表現者の魂が伝わり、我々の気持ちまでも支配してしまいます。

世の中にいる多くの表現者やクリエイターが見習わなければならない姿勢がここにあります。
作り手の「魂」がこもっていない、感じられない作品に人は感動することはありません。

 誰も知らない 涙の跡
抱きしめそこねた 恋や夢や
思い上がりと 笑われても
譲れないものがある プライド
  

演奏終了後、一歩下がって深々とお辞儀をする姿に、お二人の「PRIDE」を見た気がします。

関連記事 : no no darlin' - CHAGE&ASKA (2010-09-14)


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