2011年のドラマ [ドラマレビュー]
【 総評 】 本年は、なんと言っても『鈴木先生』(テレビ東京)の衝撃は絶大でした。テレビドラマの新しい可能性を提示してくれた作品だったと思います。一方で、数字が伴わない以上、現状の価値基準(世帯視聴率至上主義)では、新機軸への挑戦は依然としてリスクが高いということもテレビ業界は思い知りました。『鈴木先生』の(作品としての)成功が、少なくとも業界に「一石を投じた」ぐらいの効果を及ぼしてくれることを願っています。そして、その対極に位置すると言ってもいいドラマが『家政婦のミタ』(日本テレビ)でした。レビューでも触れましたが、このドラマはある意味「古典」です。同じく花王提供の『マルモのおきて』(フジテレビ)が終盤に欠けて盛り上がりを見せ、大きな話題になったのも偶然ではありません。「家族」というテーマは永遠の命題なんだと思います。インターネットやSNSの普及、地デジ化などによって、テレビの視聴環境は大きく変貌していますが、テレビの歴史が60年を超えた今、テーマそのものは原点に回帰する時期に来ている可能性もあります。数字だけを見れば、新しいことをやるよりも、原点に立ち返る方に軍配が上がった形ですが、私は今年を代表するテレビドラマには敢えて『鈴木先生』を堂々と推したいと思います。いつの時代もどんな時代も新しいことへの挑戦を止めたらその業界は停滞するでしょう。制作者の勇気に最大級の賛辞を贈りたいと思います。ただし『家政婦のミタ』も本当に素晴らしいドラマだったということをもう一度強調しておきたいと思います。その年の最高視聴率のドラマと最低視聴率のドラマにほとんど同等の評価を与えることになろうとは皮肉なものです。
ジャニスカ的最優秀作品賞 | ||
『 鈴木先生 』 (テレビ東京=アスミック・エース) | ||
<優秀作品賞> 『美しい隣人』(関西テレビ=MMJ) 『それでも、生きてゆく』(フジテレビ) 『家政婦のミタ』(日本テレビ) 『使命と魂のリミット』(NHK) |
【 作品 】 上位2作品についてはすでに述べたので、そのほかについて。『美しい隣人』(関西テレビ)はサスペンスドラマの秀作だったと思います。この種の作品では珍しく、原作がないオリジナル作品である点を高く評価したいと思います。メディアミックス・ジャパンはコンスタントに良作を送り出せる数少ないドラマ制作会社です。『それでも、生きてゆく』(フジテレビ)は人間ドラマの秀作。数字が伴わないからといって、こういう作品を作らなくなったらテレビはおしまい。フジテレビの良心とでも言うべきドラマでした。『使命と魂のリミット』(NHK)は、原作ものとしては非の打ち所がない出来だったと思います。原作の世界観の理解度という点において、民放のドラマ制作者はNHKのスタッフのインテリジェンスを見習うべきです。こちらは単発ドラマですが、『この世界の片隅に』(日本テレビ)のスタッフにはこの点において猛省してもらわなければなりません。ちょっと悪態をつきますが、頭が悪い人が作っていると思われても仕方がない出来でした。ただ、日本テレビをフォローしておくと、阿部寛さん主演の『幸福の黄色いハンカチ』(日本テレビ)の出来は素晴らしかったです。この2作品の明暗には、わかりやすく監督の力量差を感じました。それと珍しく続編を観てもいいなと思わせてくれたのが『DOCTORS 最強の名医』(テレビ朝日)です。もちろん『鈴木先生』の続編が観られれば最高ですが、こちらは続編があるとすれば映画化でしょう。魅力的なキャラクター(主人公)を創作できれば、それだけでストーリーを牽引できてしまうということがよくわかるのがこの2作品です。そして、本年最大の期待はずれが、『蜜の味~A Taste Of Honey~』(フジテレビ)です。昨年放送された同じ大石静脚本の『セカンドバージン』(NHK)とほとんど変わりないテーマ設定なのに、こんなにも完成度に差が出てしまったのはプロデューサーの能力差としか考えられません。二人が手を握り合って眠っているラストシーンのチープさと言ったらないでしょう。まるで二人の人生の終着点がここだと言わんばかりの終り方は、はっきり申し上げて子供だましです。二人の人生はむしろこの先にこそ波乱万丈があるはずなのです。私はそれに立ち向かって行こうとする二人の決意、あるいは前向きさを印象づけて終わるべきだったと考えています。
ジャニスカ的最優秀監督賞 | ||
河合勇人 (『鈴木先生』) | ||
<優秀監督賞> 今井和久(『美しい隣人』) 塚原あゆ子(『ラストマネー-愛の値段-』) 片岡敬司(『使命と魂のリミット』) |
【 演出 】 『鈴木先生』の演出が、他と毛色が違うのはご覧になられた方ならばすぐにわかると思いますが、私が評価したいのはその斬新な映像表現よりも、制作スタイルです。ROBOTはもともと映画制作会社なので、そもそもノウハウがなかったということもあるのかもしれませんが、こんなにも妥協を許さず丁寧に撮影をした連続ドラマはいまだかつてなかったのではないでしょうか。そのあたりことは出演者の感想を漏れ聞いた話でもあるし、DVDに収録された未公開映像の豊富さからもわかるところです。そんな芸当が可能なのは、演出担当者の頭の中に明確な演出・撮影ビジョンがあって、現場では迷いがないからだと思います。テレビも映画も「制約」が付き物で、時間も予算も限られた中で撮影しなければならないのは同じですが、こと「制約」に関して、やっぱり映画業界の切実さはテレビとは比べ物にならないんだと思います。時間がないという事情は大差ないのかもしれませんが、最初から1話あたり数千万円の制作費という世界でぬくぬくとやってきたテレビディレクターと映画畑のスタッフでは、下積みの苦労が全然違うような気がします。『鈴木先生』の演出には、表面的な「見た目」だけでは測れない、作り手の経験とそれに基づく高い技量・思考力、そして何よりモノ作りへの情熱が感じられました。『鈴木先生』以外でも制作会社のディレクターの活躍が目立った印象です。フジテレビのディレクターは優れた創造力と高い技術を兼ね備えた方が多いですが、本年のドラマに関しては、そのテクニックが空回りしていた作品が多かったように思います。『全開ガール』(フジテレビ)のレビューで武内英樹監督の演出を高く評価しましたが、最終回の演出はあまり好きではありませんでした。
ジャニスカ的最優秀脚本賞 | ||
遊川和彦 (『家政婦のミタ』) | ||
<優秀脚本賞> 神山由美子(『美しい隣人』) 古沢良太・岩下悠子(『鈴木先生』) 坂元裕二(『それでも、生きてゆく』) 吉田紀子(『使命と魂のリミット』) |
【 脚本 】 『家政婦のミタ』の最終回を観るまでは、こちらはダントツで『鈴木先生』の脚本を推すつもりでおりました。具体的なことは『家政婦のミタ』のレビューを読んでいただくとして、やはりオリジナル脚本である点を高く評価しなければなりません。『鈴木先生』の脚本は、テーマについては原作をそのまま踏襲しているところが大きいので、脚本のオリジナリティという点ではどうしてもひとつ評価を下げなければなりません。一方で、漫画原作の世界観(特に性教育の描写)を忠実かつ的確に実写に誘導した手腕と、生徒たちの個性を際立たせる生き生きとした台詞まわしは高く評価したいと思います。今年は全体的にベテラン脚本家の活躍が目立った印象です。逆に言えば若手脚本家が全然育っていない。そのことを象徴しているのが『大切なことはすべて君が教えてくれた』(フジテレビ)という作品だと思っていて、現役のドラマプロデューサーは若い脚本家を育てようとする意識が低いような気がしています。どうも今のドラマプロデューサーは、若い脚本家のことを自分が構築した世界観に台詞を当てはめていくだけの道具のように捉えているきらいがあります。本作りがプロデューサーと脚本家の「共同作業」ではないから、世界観と台詞に微妙な齟齬が生まれてくるんだと思います。私はその齟齬が微妙どころではなかった作品が『大切なことはすべて君が教えてくれた』だったと感じています。当作品のレビューでは、脚本家を名指しで酷評したこともあるのですが、安達奈緒子さんのデビュー作をたまたま再放送で拝見して、その才能の片鱗に触れてからは認識を改めました。フジテレビのドラマプロデューサーはちょっと勘違いしているところがあると思います。才能を消費するのではなく、コントロールするのがプロデューサーであって、プロデューサーが脚本家を育てようとする気概を失ったら、将来テレビドラマを支える人材が枯渇するのは目に見えています。たとえばかつてのフジテレビには「大多亮=野島伸司」のドラマは鉄板という時代がありました。本作りはプロデューサーと脚本家との共同作業であるという基本をもう一度思い出す必要があります。
ジャニスカ的最優秀主演男優賞 | ||
長谷川博己 (『鈴木先生』) | ||
<優秀主演男優賞> 阿部サダヲ(『マルモのおきて』) 瑛太(『それでも、生きてゆく』) 伊藤英明(『ラストマネー-愛の値段-』) |
【 主演男優 】 今年のテレビドラマ界の顔がこの方と言っても過言ではないでしょう。『鈴木先生』をご覧になっていない方には寝耳に水の話かもしれませんし、もしかすると誰それ?とう方も未だにたくさんいるのかもしれません。しかし、申し訳ありませんが、『鈴木先生』を観ていない人は「モグリ」だと自覚してもらわなければなりません。それぐらいの圧倒的な存在感を示してくれたのが長谷川博己さんです。昨年の『セカンドバージン』の鈴木行役も鮮烈でしたが、それから半年も経たないうちに登り詰めた感があります。この方は舞台出身ということもあって、台詞の抑揚のつけ方がとてもきれいで、ひとつひとつの台詞に役柄の気持ちを込めるのがとても上手です。ただ、『家政婦のミタ』を観ている限りでは、少しお芝居にメリハリがありすぎるような気もしています。たとえば表情から感情を滲み出すというような映像向きの芝居というものをもう少し勉強する余地はあるかもしれません。次クール『運命の人』(TBS)、『聖なる怪物たち』(テレビ朝日)でも新たな一面を見せてくることを期待しています。『マルモのおきて』(フジテレビ)の阿部サダヲさんはもっと評価されるべき人です。はっきりいって子役は所詮子役ですから。このドラマを支配していたのは間違いなく阿部サダヲさんです。『ラストマネー-愛の値段-』の伊藤英明さんはいつの間にやら重厚なお芝居ができる俳優さんになっていて驚きました。私は『海猿』シリーズというのをまったく観たことがないので、彼のお芝居をがっつり観たのは『ファースト・キス』(フジテレビ)以来でした。
ジャニスカ的最優秀主演女優賞 | ||
松嶋菜々子 (『家政婦のミタ』) | ||
<優秀主演女優賞> 仲間由紀恵(『美しい隣人』) 満島ひかり(『それでも、生きてゆく』) 菅野美穂(『蜜の味~A Taste Of Honey~』) 石原さとみ(『使命と魂のリミット』) |
【 主演女優 】 このカテゴリは最後までどちらにしようか悩んでいたのですが、『蜜の味~A Taste Of Honey~』の作品としての失速と『家政婦のミタ』の作品としての完成を見届けて決定しました。菅野美穂ちゃんは第1話から驚きのお芝居を披露してくれていたし、最後までこの役を完璧に演じきってくれたと思います。しかし、彼女の奮闘が作品の出来に結びつかなかったのはちょっとかわいそうでした。それに対して『家政婦のミタ』は、松嶋菜々子さんの最終回でのお芝居によって作品が完成したと言っても過言ではありませんから、主演女優の役割を全うしたのは間違いなくこの方ということになります。『美しい隣人』は、仲間由紀恵ちゃんのお芝居で牽引したドラマだったということには、多くの方に同意していただけると思います。『使命と魂のリミット』(NHK)の石原さとみちゃんは、昔から天性とも言える存在感を放ってきた女優さんですが、お芝居も天才的に上手。特に感情表現の瞬発力がすばらしい。これとは対照的な役柄だった『坂の上の雲』(NHK)の季子役は、まさに彼女の「存在感」によって表現されたものだったと思います。
ジャニスカ的最優秀助演男優賞 | ||
高嶋政伸 (『DOCTORS 最強の名医』) | ||
<優秀助演男優賞> 柄本明(『それでも、生きてゆく』) 長谷川博己(『家政婦のミタ』) 佐々木蔵之介(『僕とスターの99日』) 吹越満(『使命と魂のリミット』) |
【 助演男優 】 こちらは迷わずこの方でした。『DOCTORS 最強の名医』の高嶋政伸さんは、主人公とライバル関係にある外科医という役柄で、主人公とは正反対のクセのあるキャラクターを好演していました。こういう役で主役に引けをとらない存在感を示してしまうのは流石です。その存在感がこのドラマを面白くし、終盤にかけてドラマを大いに盛り上げたのは間違いないし、沢村一樹さん演じる主人公の引き立て役という意味ではまさに「助演」でした。『僕とスターの99日』の佐々木蔵之介さんも同系統の役柄で、主人公をうまく引き立てていたし、このドラマのコメディ要素の大半はこの方が担っていました。役の幅がとても広い俳優さんだと思います。『家政婦のミタ』の長谷川博己さんはやっぱり上手です。どんな役にも対応してしまう器用さを持っていることが『家政婦のミタ』で確認できました。『砂の器』(テレビ朝日)の関川重雄役も強く印象に残っています。
ジャニスカ的最優秀助演女優賞 | ||
高島礼子 (『ラストマネー-愛の値段-』『使命と魂のリミット』) | ||
<優秀助演女優賞> 臼田あさ美(『鈴木先生』) 薬師丸ひろ子(『全開ガール』) 大竹しのぶ(『それでも、生きてゆく』) |
【 助演女優 】 高島礼子さんは2作品の合わせ技一本といったところです。『ラストマネー-愛の値段-』では、生命保険金をめぐる事件の中で、ひとりの女性の人生をそのたたずまいから滲み出すようなお芝居を観ることができました。高島さんの存在感によって作品が持つサスペンス性は大いに盛り上がったし、結果的に善悪では測れない、何ともやる瀬のない余韻を残してくれました。その後放送された『使命と魂のリミット』では、一転して主人公の成長を静かに見守る穏やかな母親役で、素直にそのギャップに感心してしまいました。薬師丸ひろ子さんと大竹しのぶさんは、自らのお芝居によって主演の若手俳優のポテンシャルを引き出していたところがあって、そういう意味でのベテラン女優の底力も思い知りました。
来年1月クールの連続ドラマの期待度ランキングは、できるだけ早い時期にアップしたいと思っています。ぱっと見た印象では、けっこう粒ぞろいのクールになりそうです。1年間、私のレビュー、ツイートにお付き合いいただきありがとうございました。来年もいい映画、いいドラマに巡り合えることを願いつつ。。。それでは皆様よいお年をお迎えくださいませ。。。
2011年の映画 [映画レビュー]
2020 | 2019 | 2018 | 2017 | 2016 | 2015 | 2014 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010 | 2009 |
Release | Title | Distributed by | Cast | Screenplay | Director | My Rating | |
1 | 7 | アンストッパブル UNSTOPPABLE [US] | 20世紀フォックス | デンゼル・ワシントン クリス・パイン | M.ボンバック | T.スコット | ★★★★☆ |
15 | 僕と妻の1778の物語 | 東宝 | 草彅剛 竹内結子 | 半澤律子 | 星護 | ★★★☆☆ | |
15 | ソーシャル・ネットワーク THE SOCIAL NETWORK [US] | ソニーP | ジェシー・アイゼンバーグ アンドリュ・ガーフィールド | A.ソーキン | D.フィンチャー | ★★★★☆ | |
15 | その街のこども 劇場版 | トランスフォーマー | 森山未來 佐藤江梨子 | 渡辺あや | 井上剛 | ★★★★★ | |
15 | サビ男サビ女 | ニューシネマWS | 桜庭ななみ 小泉今日子 | 吉川菜美 | 関口現 | ★★★☆☆ | |
22 | 嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん | 角川 | 大政絢 染谷将太 | 田中幸子 | 瀬田なつき | ★★★☆☆ | |
22 | 犬とあなたの物語 いぬのえいが | アスミック・エース | 大森南朋 松嶋菜々子 | 太田愛 | 長崎俊一 | ★★★☆☆ | |
22 | ねこばん | AMG | 伊武雅刀 | 永森裕二 | 有馬顕 | ★☆☆☆☆ | |
22 | 完全なる報復 LAW ABIDING CITIZEN [US] | ブロードメディアS ポニーキャニオン | ジェイミー・フォックス ジェラルド・バトラー | カート・ ウィマー | F.ゲイリー ・グレイ | ★★★★☆ | |
29 | 白夜行 | ギャガ | 堀北真希 高良健吾 | 深川栄洋 | 深川栄洋 | ★★★★☆ | |
29 | 冷たい熱帯魚 | 日活 | 吹越満 でんでん | 園子温 | 園子温 | ★★★★★ | |
2 | 5 | ジーン・ワルツ | 東映 | 菅野美穂 | 林民夫 | 大谷健太郎 | ★★★☆☆ |
5 | 毎日かあさん | 松竹 | 小泉今日子 永瀬正敏 | 真辺克彦 | 小林聖太郎 | ★★★★☆ | |
5 | ケータイ刑事 THE MOVIE 3 モーニン グ娘。救出大作戦!パンドラの箱の秘密 | BS-TBS | 大政絢 岡本あずさ | 林誠人 | 安藤尋 | ★★☆☆☆ | |
5 | 心中天使 | マコトヤ | 尾野真千子 郭智博 | 一尾直樹 | 一尾直樹 | ★★★☆☆ | |
11 | 洋菓子店コアンドル | アスミック・エース | 江口洋介 蒼井優 | いながききよたか | 深川栄洋 | ★★★★☆ | |
11 | 太平洋の奇跡 | 東宝 | 竹野内豊 | 西岡琢也 | 平山秀幸 | ★★★★☆ | |
19 | ヒア アフター HEREAFTER [US] | WB | マット・デイモン セシル・ドゥ・フランス | P.モーガン | C.イーストウッド | ★★★★☆ | |
26 | 死にゆく妻との旅路 | ゴー・シネマ | 三浦友和 石田ゆり子 | 山田耕大 | 塙幸成 | ★★☆☆☆ | |
3 | 5 | ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 | 東宝 | 水田わさび 大原めぐみ | 清水東 | 寺本幸代 | ★★★★☆ |
5 | わさお | 東映 | 薬師丸ひろ子 | 小林弘利 | 錦織良成 | ★★★☆☆ | |
5 | アレクサンドリア AGORA [SP] | ギャガ | レイチェル・ワイズ マックス・ミンゲラ | アレハンドロ・ アメナーバル | アレハンドロ・ アメナーバル | ★★★☆☆ | |
12 | SP 革命篇 | 東宝 | 岡田准一 堤真一 | 金城一紀 | 波多野貴文 | ★★★☆☆ | |
12 | 前橋ヴィジュアル系 | ケイダッシュ | 風間俊介 黄川田将也 | 一雫ライオン | 大鶴義丹 | ★☆☆☆☆ | |
19 | ランウェイ☆ビート | 松竹 | 瀬戸康史 桜庭ななみ | 高橋泉 | 大谷健太郎 | ★★☆☆☆ | |
19 | 漫才ギャング | 角川 | 佐藤隆太 上地雄輔 | 品川ヒロシ | 品川ヒロシ | ★★★☆☆ | |
19 | 市民ポリス69 | トランスフォーマー | 酒井敏也 早見あかり | ブルースカイ | 本田隆一 | ★★☆☆☆ | |
26 | わたしを離さないで NEVER LET ME GO [GB=US] | 20世紀フォックス | キャリー・マリガン A.ガーフィールド | A.ガーランド | M.ロマネク | ★★★★☆ | |
4 | 1 | 婚前特急 | ビターズ・エンド | 吉高由里子 | 高田亮 | 前田弘二 | ★★★★☆ |
1 | 高校デビュー | アスミック・エース | 溝端淳平 大野いと | 福田雄一 | 英勉 | ★☆☆☆☆ | |
9 | 管制塔 | SME | 山﨑賢人 橋本愛 | 持地佑季子 | 三木孝浩 | ★★☆☆☆ | |
16 | ダンシング・チャップリン | 東京テアトル | L.ボニーノ 草刈民代 | 周防正行 | 周防正行 | ★★★★★ | |
23 | まほろ駅前多田便利軒 | アスミック・エース | 瑛太 松田龍平 | 大森立嗣 | 大森立嗣 | ★★★☆☆ | |
29 | 阪急電車 片道15分の奇跡 | 東宝 | 中谷美紀 戸田恵梨香 | 岡田惠和 | 三宅喜重 | ★★★☆☆ | |
29 | 八日目の蝉 | 松竹 | 井上真央 永作博美 | 奥寺佐渡子 | 成島出 | ★★★★★ | |
30 | これでいいのだ!! 映画・赤塚不二夫 | 東映 | 浅野忠信 堀北真希 | 君塚良一 | 佐藤英明 | ★★☆☆☆ | |
30 | アバター | 太秦 | 橋本愛 | 野口照夫 | 和田篤司 | ★★☆☆☆ | |
5 | 7 | 岳-ガク- | 東宝 | 小栗旬 長澤まさみ | 吉田智子 | 片山修 | ★★★☆☆ |
7 | 星を追う子ども | メディアF | 金元寿子 入野自由 | 新海誠 | 新海誠 | ★★★★☆ | |
7 | それでも花は咲いていく | ケイダッシュ | 仁科貴 滝藤賢一 | 前田健 | 前田健 | ★★☆☆☆ | |
14 | 少女たちの羅針盤 | クロックワークス | 成海璃子 忽那汐里 | 矢口由美 | 長崎俊一 | ★★★★☆ | |
14 | 大木家のたのしい旅行 | ギャガ | 竹野内豊 水川あさみ | 前田司郎 | 本田隆一 | ★★★☆☆ | |
14 | コネコノキモチ | ジョリー・ロジャー | 遠藤舞 | 阿相クミコ | 高橋栄樹 | ★☆☆☆☆ | |
28 | プリンセス・トヨトミ | 東宝 | 堤真一 中井貴一 | 相沢友子 | 鈴木雅之 | ★☆☆☆☆ | |
28 | マイ・バック・ページ | アスミック・エース | 夫木聡 松山ケンイチ | 向井康介 | 山下敦弘 | ★★★★★ | |
6 | 4 | パラダイス・キス | WB | 北川景子 向井理 | 坂東賢治 | 新城毅彦 | ★★☆☆☆ |
4 | 軽蔑 | 角川 | 高良健吾 鈴木杏 | 奥寺佐渡子 | 廣木隆一 | ★★★☆☆ | |
11 | 星守る犬 | 東宝 | 西田敏行 | 橋本裕志 | 瀧本智行 | ★★★★☆ | |
11 | 奇跡 | ギャガ | 前田航基 前田旺志郎 | 是枝裕和 | 是枝裕和 | ★★★★☆ | |
11 | 見えないほどの遠くの空を | コミュニティアド | 森岡龍 岡本奈月 | 榎本憲男 | 榎本憲男 | ★★★☆☆ | |
18 | 東京公園 | ショウゲート | 三浦春馬 榮倉奈々 | 青山真治 | 青山真治 | ★★☆☆☆ | |
18 | あぜ道のダンディ | ビターズ・エンド | 光石研 田口トモロヲ | 石井裕也 | 石井裕也 | ★★★★★ | |
18 | 127時間 127 Hours [GB=US] | 20世紀フォックス ギャガ | ジェームズ・フランコ | S.ボーフォイ | D.ボイル | ★★★★★ | |
25 | アンダルシア 女神の報復 | 東宝 | 織田裕二 | 池上純哉 | 西谷弘 | ★★★☆☆ | |
25 | 犬飼さんちの犬 | AMG | 小日向文世 ちはる | 永森裕二 | 亀井亨 | ★★★☆☆ | |
7 | 2 | 小川の辺 | 東映 | 東山紀之 | 長谷川康夫 | 篠原哲雄 | ★★★★☆ |
16 | コクリコ坂から | 東宝 | 長澤まさみ 岡田准一 | 宮崎駿 | 宮崎吾朗 | ★★★★★ | |
16 | 大鹿村騒動記 | 東映 | 原田芳雄 大楠道代 | 荒井晴彦 | 阪本順治 | ★★★☆☆ | |
23 | ロック わんこの島 | 東宝 | 佐藤隆太 麻生久美子 | 水橋文美江 | 中江功 | ★★☆☆☆ | |
8 | 6 | 一枚のハガキ | 東京テアトル | 豊川悦司 大竹しのぶ | 新藤兼人 | 新藤兼人 | ★★★★★ |
6 | 行け!男子高校演劇部 | ショウゲート | 中村蒼 池松壮亮 | 池田鉄洋 | 英勉 | ★☆☆☆☆ | |
20 | うさぎドロップ | ショウゲート | 松山ケンイチ 芦田愛菜 | 林民夫 | SABU | ★★★☆☆ | |
27 | 日輪の遺産 | 角川 | 堺雅人 | 青島武 | 佐々部清 | ★★★☆☆ | |
27 | 神様のカルテ | 東宝 | 桜井翔 宮﨑あおい | 後藤法子 | 深川栄洋 | ★★★☆☆ | |
9 | 3 | 君の好きなうた | ネイキッド | 郭智博 山口尚美 | 鹿目けい子 | 柴山健次 | ★★☆☆☆ |
10 | 探偵はBARにいる | 東映 | 大泉洋 松田龍平 | 古沢良太 | 橋本一 | ★★★☆☆ | |
10 | タナトス | ユナイテッド | 徳山秀典 佐藤祐基 | 城定秀夫 | 城定秀夫 | ★★★☆☆ | |
23 | モテキ | 東宝 | 森山未來 長澤まさみ | 大根仁 | 大根仁 | ★★★★★ | |
23 | セカンドバージン | 松竹 | 鈴木京香 長谷川博己 | 大石静 | 黒崎博 | ★★★☆☆ | |
23 | 僕たちは世界を変えることができない。 | 東映 | 向井理 松坂桃李 | 山岡真介 | 深作健太 | ★★★☆☆ | |
23 | 極道めし | ショウゲート | 永岡佑 木村文乃 | 羽原大介 | 前田哲 | ★★★☆☆ | |
23 | スリーデイズ THE NEXT THREE DAYS [US] | ギャガ | ラッセル・クロウ エリザベス・バンクス | ポール・ハギス | ポール・ハギス | ★★★★★ | |
23 | 4デイズ UNTHINKABLE [US] | ショウゲート | サミュエル・L・ジャクソン H.キャリー=アン・モス | ピーター・ ウッドウォード | グレゴール・ ジョーダン | ★★★★☆ | |
10 | 1 | 天国からのエール | アスミック・エース | 阿部寛 ミムラ | 尾崎将也 | 熊澤誓人 | ★★★☆☆ |
1 | はやぶさ/HAYABUSA | 20世紀FOX | 竹内結子 西田敏行 | 白崎博史 | 堤幸彦 | ★★☆☆☆ | |
1 | DOG×POLICE 純白の絆 | 東宝 | 市原隼人 戸田恵梨香 | 大石哲也 | 七髙剛 | ★☆☆☆☆ | |
8 | 夜明けの街で | 角川 | 岸谷五朗 深田恭子 | 川﨑いづみ | 若松節朗 | ★★★☆☆ | |
8 | ツレがうつになりまして。 | 東映 | 宮﨑あおい 堺雅人 | 青島武 | 佐々部清 | ★★★★☆ | |
15 | 一命 | 松竹 | 市川海老蔵 瑛太 | 山岸きくみ | 三池崇史 | ★★★☆☆ | |
22 | スマグラー おまえの未来を運べ | WB | 妻夫木聡 永瀬正敏 | 山口雅俊 | 石井克人 | ★★★☆☆ | |
22 | シャッフル | ビターズエンド | 金子ノブアキ 賀来賢人 | 及川拓郎 | 及川拓郎 | ★☆☆☆☆ | |
28 | 三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチ の飛行船 THE THREE MUSKETEERS [FR=US=GB=DE] | ギャガ=テレビ朝日 | ローガン・ラーマン ミラ・ジョヴォヴィッチ | A.デイビス | ポール・W.S. アンダーソン | ★★★☆☆ | |
11 | 5 | カイジ2 人生奪回ゲーム | 東宝 | 藤原竜也 | 福本伸行 | 佐藤東弥 | ★★☆☆☆ |
5 | ハラがコレなんで | ショウゲート | 仲里依紗 中村蒼 | 石井裕也 | 石井裕也 | ★★★☆☆ | |
12 | 恋の罪 | 日活 | 水野美紀 富樫真 | 園子温 | 園子温 | ★★★★☆ | |
12 | 恋谷橋 | パル企画 | 上原多香子 水上剣星 | 井上正子 | 後藤幸一 | ★☆☆☆☆ | |
12 | コンテイジョン CONTAGION [US] | WB | マット・デイモン ケイト・ウィンスレット | スコット・ Z.バーンズ | スティーヴン ・ソダーバーグ | ★★★★★ | |
19 | アントキノイノチ | 松竹 | 岡田将生 榮倉奈々 | 田中幸子 | 瀬々敬久 | ★★★★☆ | |
19 | 指輪をはめたい | ギャガ=キノ | 山田孝之 | 岩田ユキ | 岩田ユキ | ★★★★☆ | |
19 | 明日泣く | ブラウニー | 斎藤工 汐見ゆかり | 伊藤彰彦 | 内藤誠 | ★★★★☆ | |
26 | 映画 怪物くん | 東宝 | 大野智 松岡昌宏 | 西田征史 | 中村義洋 | ★☆☆☆☆ | |
26 | 惑星のかけら | スローラーナー | 柳英里紗 渋川清彦 | 吉田良子 | 吉田良子 | ★★★☆☆ | |
12 | 3 | RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ | 松竹 | 三浦友和 余貴美子 | 小林弘利 | 蔵方政俊 | ★★★☆☆ |
10 | 源氏物語 千年の謎 | 東宝 | 生田斗真 中谷美紀 | 川﨑いづみ | 鶴橋康夫 | ★★★☆☆ | |
16 | ミッション:インポッシブル /ゴースト・プロトコル Mission:Impossible - Ghost Protocol [US] | パラマウント | トム・クルーズ ジェレミー・レナー | ジョシュ・ アッペルバウム | ブラッド・ バード | ★★★★☆ | |
17 | CUT | ビターズ・エンド | 西島秀俊 常盤貴子 | A.ナデリ | A.ナデリ | ★☆☆☆☆ | |
17 | ブルックリン橋をわたって | テンダープロ | 石橋杏奈 | 横山浩之 | 江面貴亮 | ★★☆☆☆ | |
21 | ワイルド7 | WB | 瑛太 | 深沢正樹 | 羽住英一郎 | ★☆☆☆☆ | |
23 | 聯合艦隊司令長官 山本五十六 | 東映 | 役所広司 | 長谷川康夫 | 成島出 | ★★★☆☆ | |
※ 脚本担当者が複数いる作品については、トップクレジットを表記している。 |
ジャニスカ的最優秀作品賞 | ||
『 コクリコ坂から 』 (宮崎吾朗監督) | ||
<優秀作品賞> 『八日目の蝉』(成島出監督) |
ジャニスカ的最優秀監督賞 | ||
成島出 (『八日目の蝉』) | ||
<優秀監督賞> 深川栄洋(『白夜行』) |
ジャニスカ的最優秀脚本賞 | ||
奥寺佐渡子 (『八日目の蝉』) | ||
<優秀脚本賞> 大根仁(『モテキ』) |
ジャニスカ的最優秀主演男優賞 | ||
森山未來 (『モテキ』) | ||
<優秀主演男優賞> 西田敏行(『星守る犬』) 岡田将生(『アントキノイノチ』) |
ジャニスカ的最優秀主演女優賞 | ||
永作博美 (『八日目の蝉』) | ||
<優秀主演女優賞> 井上真央(『八日目の蝉』) 榮倉奈々(『アントキノイノチ』) |
ジャニスカ的最優秀助演男優賞 | ||
該当者なし | ||
<優秀主演男優賞> 古舘寛治(『マイ・バック・ページ』) 松坂桃李(『アントキノイノチ』) |
ジャニスカ的最優秀助演女優賞 | ||
長澤まさみ (『モテキ』) | ||
<優秀助演女優賞> 麻生久美子(『モテキ』『ロック わんこの島』) ミムラ(『天国からのエール』) |
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- e97h0017NHK『てっぱん番外編イブ・ラブ・ライブ』。瀧本美織ちゃんのショートカットが物語の端緒としてうまく生かされていた。オチはバレバレだったが、そういうドラマである。今ひとつはっきりしなかった「ラブ」要素は一応の決着を見せた。チューぐらいはしてもよかったと思うが、そういうドラマである。12/27 19:05
- e97h0017『僕とスターの99日』最終話。ラブコメとしての完成度は「全開ガール」をはるかに上回っている。キャラクターの初期設定が万全でそれが最後までぶれなかった印象。主人公二人が大して苦悩せずに未来に対する答えを見つけたのがよい。橋爪の心を動かしたのは一貫してぶれない二人の真っ直ぐさである。12/27 22:50
- e97h0017「嘘でもいいんで、最後にもう一度笑ってもらえますか。オレ、ユナさんの笑った顔、けっこう好きだったんで」航平のこの台詞が好き。彼がユナへの好意を初めて口にしたのがこれ。ただし言葉にしても尚自分の気持ちに無自覚なところが彼らしい。笑顔が好き・・・人を好きになるとはそういうことだろう。12/28 02:03
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- e97h0017『蜜の味~A Taste Of Honey』最終話。この終り方嫌いやわー。ラストは「高校教師」や「眠れる森」へのオマージュ?結局言いたかったのは二人の愛は永遠ってか。こっちはそんなに盛り上がってないからな!ARATAさんのカレーのアドリブのシーンで終わってればさわやかだったのに。 12/23 11:42
- e97h0017映画『アンダルシア 女神の報復』。前作よりはマシといった程度だが、外国人俳優のレベルが格段に上がっていた。稲川素子事務所をやめたらしい。伊藤英明さんが着実に存在感のある俳優に成長している一方で、黒木メイサは残念ながらテレビ女優である。音尾琢真さんの「うなづき」の芝居が秀逸だった。12/25 15:42
家政婦のミタ [ドラマレビュー]
『 家政婦のミタ 』
( 2011年 日本テレビ 全11回 )
演出:猪股隆一、佐藤東弥、石尾純、日暮謙 脚本:遊川和彦 出演:松嶋菜々子、長谷川博己、相武紗季、忽那汐里
良質なドラマに出会うと、最終回鑑賞後に改めて作品を振り返り、反芻する作業が気持ちよく、実に有意義である。そして、私は本作の脚本が大変緻密なものであったことに驚嘆している。これまでも複数回にわたってつぶやいてきたことだが、結城うらら(相武紗季)というキャラクターは、阿須田家にとっては義理の妹であり叔母でありという微妙なポジションにいて、どういう役割を担っているのか長いこと判断がつかなかった。私が考えたうららの役割は、三田さん(松嶋菜々子)はどこまでいっても他人だから、阿須田家と三田さんの中間という位置づけでストーリーを客観化する狂言回しであったり、あるいは笑わない三田さんの対極にあってこのドラマの喜劇的要素を担っているぐらいのことだったのだが、最終回を観て思わず唸った。もちろんある部分では、うららはこのどちらの役割も担っていただろう。しかし、彼女が阿須田家の「厄落とし」をしていたなどということを誰が考えつこうか。このような登場人物に対する観念的な意味づけは、若い脚本家にはなかなか思いつかない発想だと思う。
映画『おくりびと』(小山薫堂脚本)に古代人が用いていたという「石文(いしぶみ)」というコミュニケーション方法がエピソードとして組み込まれている。それ自体はとても抽象的な話だし、物語の本筋とは少しずれていてたりするのだが、人の死と同様に人間の根本に関わる概念であるような気がして、ずっと私の心に引っかかっている。すごく感覚的な物言いで申し訳ないのだが、最終回で明らかになったうららの役割もまた、人間社会の本質なのではないかと考えたりしている。具体性(あるいは科学的根拠)に乏しくとも、確実にそこに存在する「物事の仕組み」のようなものがあって、だからこそ世の中が円滑に動いているということがあるんじゃないだろうか。つまり、当然誇張はされているが、うららのように自身の意思に反して周囲に迷惑をかけてしまうタイプの人間は現実社会にも必ず存在していて、そのことを自覚してしまったとき、人間はどういう考え方をして、どういう行動をとるべきなのかという、ひとつのテーマがここにあったような気がするのである。
最終回においてうららは、周囲(阿須田家)をトラブルに巻き込むことを避けるべく、人と深く関わることを止め、感情を表に出すことも止め、好きではない男との結婚に踏み切る。しかし、うららは三田さんに頬を叩かれたとき、初めて自分が為すべきことを思い知るのである。うららは決して阿須田家を不幸にしていたわけではない。むしろ阿須田家の「厄」を拾い集めて処理していたのが彼女なのかもしれない。やはり「石文」のごとく具体的な根拠に乏しい話なのだが、ひとつはっきりしていることがある。それは、その人の考え方次第で、自分の境遇は前向きにも後向きにも変わるということである。自分を単なるトラブルメーカーだと考えていたうららは、だからこそ自分が阿須田家にとって必要不可欠な存在になることもできるという考え方に切り替えた。このようなうららの気持ちの流れは、一般社会において困難な事象に対峙している多くの人たちに勇気を与えるような性質を持っていたと思う。このようなうららの役割が第1話から意図されていたものだと考えると、それは「緻密」と表現するほかはない。同時に人間に対する鋭い観察眼とそこに物事の真理を見出してそれをドラマに組み込んでしまうベテラン脚本家の手腕が見えてくる。
さて、話は三田さんだ。前回、三田さんを笑顔にするためには亡き夫の両親の赦免が不可欠であるとつぶやいたのだが、それがなんと本編が始まる前、21時台に早くも打ち消されて、私は大いに混乱した。結局、三田さんは笑わないのではないかとすら考えた。いや、こうなったらなんらかの「飛び道具」を用意しているに違いないと考えていた。たとえば「変顔」で思わず笑ってしまうというような。しかし、ふたを開けてみれば、実に正攻法のやり方によって三田さんに笑顔がよみがえった。三田さんに笑顔をよみがえらせたものは、直接的には恵一(長谷川博己)の「旦那さんとお子さんのために」という論法だったわけだが、それ自体は本当にきっかけに過ぎないような気がしている。というのは、実際に三田さんの笑顔を見てしまうと、そういう理屈を超越したものを感じてしまったからだ。三田さんはあの時、業務命令だからでも阿須田家に懇願されたからでもなく、笑いたいから笑ったのであって、あの笑顔には彼女自身の「意思」が確実に宿っているのである。
私は三田さんのあの笑顔の根底にあるものは阿須田家への感謝だったと考えている。三田さんのその種の気持ちというものは、最終回を前に彼女の中にすでに醸成されていたものであることは本作を丁寧にご覧になっている視聴者ならば気が付くところだと思う。なぜならこの脚本はしっかりと筋を通して、三田さんの心情を構築してきているのである。だからこそ三田さんが笑顔を見せた瞬間とは、それが我々が待望していたものであっても興奮や歓喜をもって受け入れられるわけではなく、静かに心に染みるような性質を帯びてくる。阿須田家のひとりひとりの目を見て微笑む三田さんの表情は、彼女の気持ちを具現化したものなのだから、もはや驚く必要はない。松嶋菜々子さんの表情に自然と浮かび上がった笑顔には、それが浮かんだ瞬間にすべてを納得させてしまう不思議な力があった。この瞬間をわかりやすく言葉にすれば、三田さんの心情と表情が一致した瞬間であり、緻密な計算を感じさせる脚本とそれを的確に表現した女優の名演がここにある。
このドラマを総括してみようと思ったのだが、いざ振り返ってみるとこのドラマを具体的に定義する言葉が出てこない。実は本作が表現しようとしていることは何も難しいことはなくて、単純にホームドラマでありコメディドラマだったと言えばいいのかもしれない。その意味では『鈴木先生』の対極に位置づけることができるドラマである。本作は斬新なテーマ設定で視聴者に深い思考を促したわけではないし、トリッキーな演出で視聴者の目を引いたわけでもない。ありのままが台詞で表現され、ありのままが画面に映っていたドラマだと思う。このことは、きわめて異例なことだが、このレビューを本放送を一度観ただけで書けているということからも実感しているところだ。つまり、このドラマは「シンプル」なのである。本作はテレビドラマの伝統的手法を用いて、古典的ともいえる「家族」というテーマを、今という時代に適合させて表現しきった原点回帰のドラマだったのではないかと感じている。そして、最終回の焦点を「三田さんの笑顔」に集約させた手法は、このドラマを大いに盛り上げ、見事に数字に結びつけた。エンタテインメント性という意味でも大変優れた作品であったことを最後に付け加えておかなければならない。
高視聴率ドラマのレビューを書くのは初めてなので若干の緊張感がありましたが、時機を逸したくなかったので急いで執筆しました。これまでにない断定調の文章で失礼致しました。
(了)
▼▼▼ 『家政婦のミタ』 Twitterまとめ ▼▼▼
- e97h0017日本テレビ『家政婦のミタ』。数字ほど面白いとは思わないが、遊川和彦脚本の安定感はある。『女王の教室』『斉藤さん』『曲げられない女』の系譜と考えられる。それがわかってしまった時点で今後の期待感は薄れるが、もう少し見守ってみよう。主演女優よりも長谷川博己さんのお芝居から目が離せない。10/16 17:26
- e97h0017日本テレビ『家政婦のミタ』第4話。長谷川博己さんの役が最低すぎて笑えるが、どこか生々しい人間の弱い部分が表現されているような気もする。いずれにしろ今度も簡単な役ではないのは確かだ。うららは面倒なキャラクターだが、物事の本質を簡略化して見せる狂言回しの役割を担っていると考えられる。11/03 19:34
- e97h0017『家政婦のミタ』第5話。翔の行動は長男たる自覚と未成熟な精神の狭間で迷走する。家族を守りたい。彼の心情を的確に汲み取ったのが三田さんだった。そしてもうひとり・・・なんだかんだ言っても父親が自分の一番の理解者であることを知った時、翔の思いは報われる。表現しているもののレベルは高い。 11/09 23:55
- e97h0017直感的な推察なので聞き流して頂いて構わないのだが、うららが義理の兄に惹かれていくという流れがあるのではないか、と二人が会食するシーンを観て思う。最終的に三田さんが阿須田家を去る可能性は高く、その時ただの父子家庭になるとは考えにくい。再婚相手を見つけてやり直すのが健全な流れだろう。11/10 01:05
- e97h0017『家政婦のミタ』第6話。結が思いのほか純粋で心が痛かった。かなり誇張されているが彼女が感じた疎外感は普遍的なもので、今回は多くの人の共感を誘うテーマだったと思う。父が語った名前に込められた意味は彼女の孤独を一瞬にして払拭するものだった。毎回しっかりとしたまとまりが感じられる本だ。11/16 23:12
- e97h0017今回も相変わらずうららの役割を量りかねている。11/16 23:14
- e97h0017「結」という名前は彼女がこれまで無自覚に果たしてきた家族内での役割を意味していて、そこに両親の深い思いが込められていると知った時、彼女は自分の価値をはっきりと自覚する。そして彼女の役割と価値を象徴しているのが妹の髪を「結う」という行為だったと考えられる。高いレベルの表現だと思う。11/16 23:46
- e97h0017「いつも真っ白でふかふかのシーツに寝れるってすごい幸せなことなんだね。もしかしてお母さんシーツを変える度に応援してくれてたのかな。一晩ゆっくり寝れば嫌な事があっても大丈夫だよって。お母さんが生きてる時に気づいてればよかった」些細な日常にいくらでも母親の愛情はあった・・・いい台詞。11/17 08:10
- e97h0017『家政婦のミタ』第7話。ついに三田さんが感情の片鱗を見せた。頼まれてもいないのに阿須田家の家族の証を探すという「出過ぎた真似」は、恵一の苦悩する姿が彼女の心を動かした結果だろう。超過料金を請求するというお馴染みのパターンを変えることで、三田さんの心境の変化が巧みに表現されている。11/24 20:46
- e97h0017迷いを打ち消した恵一が子供たちの父親たることを願う時、三田さんの表情が二度挿入される。このカットで松嶋菜々子さんが本編中初めて「色」のある表情を浮かべたのが印象的だ。確実に演出だとは思うが、長谷川博己さんのあの感情的なお芝居を眼前にして「無表情」でいるのはそもそも無理な話だろう。11/24 23:54
- e97h0017『家政婦のミタ』第8話。あらゆる不幸を味わった三田さんにとって、阿須田家なんていくらでも救いようがあると思ったに違いない。これこそが彼女が万能の家政婦たる所以である。阿須田家と三田さんの差は家族を構成するピースがそこにあるか、ないかだ。材料を欠く三田さんを救うことは容易ではない。12/02 21:08
- e97h0017冒頭の結の夢が示唆するものは興味深い。三田さんがうららで、うららが三田さんになる可能性だってないとは言えないのかもしれない。かといって三田さんが阿須田家のピースになるのは考えにくい。阿須田家は自立しなければならないのだ。私にはうららが喜劇的要素としてのみ存在しているとは思えない。12/02 21:09
- e97h0017『家政婦のミタ』第9話。家政婦としての三田さんのモチベーションは劇的に転換した。もうあの業務命令を待つ必要はない。一方で未来へのひとつの選択肢が絶たれた以上、彼女自身が真っ直ぐに過去と向き合う必要がある。それはあの三田さんに動揺を誘うほどの困難な課題だ。阿須田家の方向性は見えた。 12/09 20:00
- e97h0017『家政婦のミタ』第10話。三田さんはラストシーンですでに阿須田家との決別を企図していると思われる。阿須田家には三田さんの代わりにうららの石が再び還ってくるだろう。三田さんに笑顔が戻ることは亡夫の両親からの赦免なくしてありえないと思うが、我々の想像を超える仕掛けが用意されているか。12/15 21:53
- e97h0017こうやってダイジェストを観て思うのは、忽那汐里ちゃんを筆頭にとんでもない4人がそろったんだなということ。このドラマを引っ張ったのが子供たちであることは疑いようがない。 12/21 21:55
家政婦のミタ 視聴率 40.0%