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(7)天気予報の恋人 [ドラマレビュー]

2000年にフジテレビで放送された『天気予報の恋人』を毎週お届けしています。
今週は第7話です。動画は原則1週間の掲載となります。第6話もまだご覧いただけますのでお早めにどうぞ。


(6/3まで。本編動画の掲載は終了しました。)

『 天気予報の恋人 』
Vol.7
( 2000年 フジテレビ=共同テレビ 全12回 )

ドラマも折り返し地点ということで、
今週は矢野がついに自分の殻を打ち破って、積極的行動に打って出る重要な回になっています。
ラストシーンでは以前にも触れた澤田鎌作監督の「イベント演出」が炸裂していますので注目してみてください。
また、これより前、田口が早知に告白するシーンは、言ってみればこのラストシーンと対になっていて、
真逆とも言えるコミカルな演出によって田口と早知のキャラクターをうまく引き立てています。
このあたりの硬軟幅広い演出センスこそが澤田監督の非凡な才能の裏づけだと思います。

私はストーリーだけでなく、表現上もひとつの転換点を迎えていると思っていて、
ひとつの嘘から始まるドタバタ劇の色彩が強かったエピソードは一歩踏み込んで、
主要な登場人物の奥深くに眠っていた、あるいは隠していた感情をえぐるような性質を帯びていきます。

それを象徴するのが冒頭で祥子が矢野の前で達也の母親だと嘘をついてしまう一連のシーンで、
これは祥子がついた
新たな嘘によって矢野と早知の関係がつなぎとめられるという切ない仕掛けになっています。
祥子が咄嗟にとった行動とは、彼女が不意に自分自身の本当の気持ちを思い知るきっかけとなっていて、
矢野への思いを人知れず抱えてきた祥子が、自分の気持ちを初めて目に見える形で表に出したのがこのときの涙です。
早知はこのとき祥子が流した涙が何を意味しているのかに薄々気がついており、
次回以降、祥子が隠してきた矢野を巡る感情は彼女の意思に反してさらに浮き彫りになっていきます。

もうひとつ重要なのは矢野の感情で、矢野は娘との関係を大事にしていきたいという思いと
唯川幸を好きなのかもしれないという自分の気持ちの狭間で揺れ動いています。
今回、その構図を端的に浮き彫りにしたのが潤子であり、核心
ついたのが祥子だったわけです。
水族館のシーンにおける矢野と祥子の会話はとても味わい深いものがあって、
これまで知る由もなかった二人の人間的背景がつぶさに織り込まれています。

  「私が好きになった男の子は絶対友達のことを好きになって・・・
 で、友達もその男の子を好きになって・・・いつもそうなんです」
 「そうなんですか
 「・・・矢野さんて、本当に女の気持ちがわからない人ですよね」

この会話ってすごいなって思うんですよ。矢野という男がこれまでの人生において
女性に対してどのように接してきたのかが、このたったひとつの台詞だけで想像できてしまう。
このときの矢野の言葉の肩透かし感って、たぶん女性の方がよくわかるんじゃないかと思います。
祥子だってなにもこの会話だけで自分の気持ちを矢野にわかって欲しいと思っているわけではなくて、
もっと女心(=あえて負の部分を語った祥子自身の気持ち)に寄り添ったリアクションをして欲しいと感じたんだと思います。
つまり、矢野が語った高校生のときのデートで、突然女の子の機嫌が悪くなってしまったのも、
潤子が離婚話を切り出さなければならなかったのも、あるいは雪美ちゃんを不安な気持ちにさせてしまったのも、
それらの原因のすべてがこの台詞に集約されているような気がするのです。

今回、このときの祥子の言葉に後押しされる形で唯川幸に自分の気持ちを伝えた矢野が、
冒頭に書いたとおり、ひとつの殻を打ち破ったのは間違いありませんが、
実は問題(=女心がわかっていない)の本質がどこにあるのかを理解するまでには至っていません。
今回浮き彫りになった矢野が抱える課題は、終盤にかけてとても重要な要素になってきますので、心に留めておいてください。

矢野克彦(40) - 佐藤浩市
:気象庁の主任予報官。バツイチで月に二度の娘との面会を何より楽しみにしている。女心に鈍感なお天気オタク。
原田早知(28) - 稲森いずみ
:ラジオ局の食堂でアルバイトをしている訳ありシングルマザー。夜はキャバクラで働く。天真爛漫な明るさが魅力。
金子祥子(27) - 深津絵里
:恋愛のスペシャリスト・唯川幸としてラジオDJを務める。実際は恋愛に臆病な超オクテ。早知とは正反対の性格。
田口正二(30) - 矢部浩之(ナインティナイン)
:気象予報官。まだ見ぬ唯川幸の大ファンで、矢野が二人のサチと出会うきっかけを作る。周りが見えていないところがある。
須藤郁子(25) - 米倉涼子
:気象庁の事務官。普段は無口で化粧気がないが、実は器量よしの隠れ美人。軽薄な田口の言動に嫌悪感を抱いている。
白石潤子(38) - 原田美枝子
:矢野の前妻。矢野を嫌いになって別れたわけではなく、結婚後は彼の女性観に疑問を持ち続けていたようだ。

 脚本
音楽
演出
プロデュース
-
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-
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岡田惠和
溝口肇
澤田鎌作(フジテレビ)
高井一郎(フジテレビ)、松村俊二(共同テレビ)

引用元:Wikipedia(というか私が書いた)

関連記事 : (12)天気予報の恋人 (2012-07-04)
(11)天気予報の恋人 (2012-06-23)
(10)天気予報の恋人 (2012-06-16)
(9)天気予報の恋人 (2012-06-10)
(8)天気予報の恋人 (2012-06-03)
(6)天気予報の恋人 (2012-05-19)
(5)天気予報の恋人 (2012-05-12)
(4)天気予報の恋人 (2012-05-05)
(3)天気予報の恋人 (2012-04-28)
(2)天気予報の恋人 (2012-04-21)
(1)天気予報の恋人 (2012-04-14)


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コメント 4

bule bird

こんばんは!お邪魔いたします!

この回・・・すごく好きなんです。
どこが?と聞かれても上手く答えられないのですが・・・。

矢野さんを取り巻く周りの女性(もちろん!雪美ちゃんも含みます)たちの視線がみんな
矢野さんに向けられている、こんなにみんなに気にされて羨ましいぞ~!って心の底からそう思う回だと思うからです。

なのに・・・当の本人はいたって自然。

「そうなんですか・・・。」

もう!まったく!なんで気づいてあげないの!

ジャニスカさんの仰るとおり!まさしく次の瞬間、機嫌そこねます!笑

矢野さんは純粋なんですね・・・。そう解釈するととってもかわいくて愛おしく思えます。

やっぱり最高のドラマ。


現在、浩市さんが出演している月9ドラマにしばらく嵌ってまして~今もですが・・・
でもやはり!「天気予報の恋人」が見たくなるんですよね。。。

またお邪魔させていただきますね♪



by bule bird (2012-05-31 22:28) 

ジャニスカ

bule birdさん、こんばんは。
この回が好きというのはわかる気がします。
矢野はもちろん早知も祥子もその想いがひとつのピークを迎えるんですよね。
次回からは「切なさ」を前面に出したストーリー展開になっていくので、
演出的にはこれが最後とばかりに思いっきり「おおらかさ」を表現しようとしている。
本文にも書きましたが、私は二つの告白シーンの対比がけっこう好きなんですよね。

女性的にはやっぱりあの会話の流れでは「気持ち」までわかって欲しいというところなんでしょうか。
男の立場からすると、いくらなんでもそこまで汲み取れというのは酷なような気がするんですが(^^;。
私は矢野が「言葉を選んでいない」ところが男としては問題だと思っていました。
逆に言えば深く考えずに素直に同意してしまうところが矢野らしさなんですよね。
おっしゃるとおり「純粋」なんですねぇ(^^)。

それはそうと、VHSの余った部分に浩市さんの秘蔵映像(?)が残っていたので、
次回掲載したいと思っています。そちらもお楽しみに!

by ジャニスカ (2012-06-01 19:40) 

kei

ジャニスカさん
こんばんは(^^) 7話目もありがとうございます。

この回は好き過ぎて、いろんなシーンてんこ盛りなので、
少し考え込んじゃいました。

ドラマの冒頭で、早知が息子を見て、笑顔になり
意を決して矢野へ「自分の息子で、シングルマザー」ということを打ち明けようと
したところへ思いもかけず、祥子が自分の息子だと言ってしまい、、、
また嘘をつくことになってしまう…。

早知が矢野だけでなく、息子にまで負い目というか、
存在を否定してしまうような状況になって、
さらに辛くなってしまう。
それで、「たつや、ごめんね」

前妻と祥子(唯川幸)のシーンでの前妻の鋭い勘に対し、
矢野さんと祥子のシーンでの矢野さんの鈍いというか、
女心がわからんちん! なところの対比も面白いし。
あー、でもそんな矢野さんだから惚れてしまうんですよね。
(私はもちろん浩市さんだから…ですが(^^ゞ)
もう浩市さんは“矢野さん”としか思えません。

田口と早知のシーンと
その後の矢野さんと早知とのシーン
自分で言っていたけれど、
田口、ホント
めちゃめちゃイイやつ!  (笑)
最後に矢野さんが告白した時に、カメラが
矢野さんと早知を交互に映して、唇が、気持ちが重なったように見えました。

どれも好きなシーンばかりです!!

前後しますが、
水族館で祥子が言っていた、
「もう別れたいと言っている女の子の8割は、ホントは別れたくはないんです…」
これすごくよくわかります(^^ゞ
矢野さんみたいなタイプと付き合うと特に…。

すみません、またコメントが長くなってしまいましたm(__)m
しかもまとまってないし。
好き過ぎて、コメントが長くなりそうだったので、整理してからコメしようとしたら
遅くなるし、結局まとまってないし。。。(^^ゞ

ジャニスカさん、浩市さんの秘蔵映像って!!!
そちらも楽しみにしていますっ!

by kei (2012-06-03 00:30) 

ジャニスカ

keiさん、こんばんは~。
冒頭で祥子がついた新たな嘘って、表現上はすごいレベルが高いですよね。
嘘に子供を巻き込んでしまう罪悪感は大人なら誰でも感じるものだと思います。
ましてや早知にとっては自分の子供ですからなおさらです。
かといって祥子の機転を責めることができない早知の立場もあるという。
切ない仕掛けですねぇ・・・改めてすごい脚本です。

「もう別れたいと言っている女の子の8割は、ホントは別れたくはないんです・・・」

この台詞って実はけっこう重要なんですよね。本文にも書いたんですが、
この時点では矢野がこの言葉の意味を実感として理解していないところが重要で、
今回、矢野が唯川幸に想いを伝えることができたのは、
あくまでも周囲(祥子と田口)の後押しがあったからです。
矢野が本当の意味での幸せを掴むまでにはもう一皮剥けなければならないようです。
そこに貢献するのが潤子なんですが・・・おっとネタバレですね(^^;。

またコメントお待ちしてます!

by ジャニスカ (2012-06-03 23:02) 

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