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2012年第1四半期のドラマ [ドラマレビュー]

TermTitleKey StationCastScriptC.D.RatingMy Rating
1ラッキーセブンフジテレビ松本潤、瑛太早船歌江子佐藤信介15.59%☆☆☆☆
ストロベリーナイトフジテレビ竹内結子、西島秀俊龍居由佳里佐藤祐市15.39%★★★★★
ハングリー!関西テレビ向井理、瀧本美織大森美香本橋圭太12.68%★★★☆☆
タイトロープの女NHK池脇千鶴、高岡早紀金子ありさ梛川善郎05.18%★★★★
大地のファンファーレNHK高良健吾山本むつみ陸田元一-★★☆☆☆
本日は大安なりNHK優香西荻弓絵渋谷未来04.13%★★★☆☆
聖なる怪物たちテレビ朝日岡田将生、中谷美紀荒井修子藤田明二07.77%★★★☆☆
最後から二番目の恋フジテレビ小泉今日子、中井貴一岡田惠和宮本理江子12.36%★★★★★
とんびNHK堤真一羽原大介梶原登城08.10%★★★★★
キルトの家NHK山﨑努、松坂慶子山田太一本木一博06.95%★★★★★
運命の人TBS本木雅弘、松たか子橋本裕志土井裕泰12.04%★★★★
妄想捜査テレビ朝日佐藤隆太、桜庭ななみ森ハヤシ小泉徳宏05.45%★★★★
分身WOWOW長澤まさみ田辺満永田琴 -★★★★
 ※ 脚本担当者が複数いる作品については、トップクレジットを表記している。※ 視聴率は全話の加重平均(ビデオリサーチ社、関東地区)。

【 総評 】 今クールは真剣に観なければならないドラマが多くて大変だったというのが第一の感想です。作品のクオリティをトータルで評価すれば、近年では最もレベルが高いクールだったのではないでしょうか。もちろん今クールに限らず観ていないドラマの方が多いので、私の感覚的なものでしかありませんが。以下は当然私が観た作品の中での評価ということになります。

ジャニスカ的最優秀作品賞
  最後から二番目の恋
(フジテレビ)
 
 <優秀作品賞>
『ストロベリーナイト』
(フジテレビ=共同テレビ)
 

【 作品 】 この2作品が飛び抜けていたのが今クール。実は『最後から二番目の恋』の最終回を観るまでは『ストロベリーナイト』を上位に採るつもりでした。『最後から二番目の恋』(フジテレビ)については当該レビューにも書いたとおり、個人的にはテーマ設定、キャラクター造形、表現手法、タイトルの意味などあらゆる面で衝撃的なドラマでした。一見して軽いテイストの中に深いテーマを盛り込むという、テーマと表現の方向性が一致しない珍しいドラマでした。このドラマのテーマについては、私なりの結論を当該レビューのコメント欄に書きましたのでそちらをご覧ください。『ストロベリーナイト』(フジテレビ)は、これまでにない刑事ドラマを作り上げたという意味で高く評価しなければならなりません。「これまでにない」という意味は、物語の主軸を「事件」ではなくて「主人公の人間ドラマ」に仕立てている点で、本作における事件とは一貫して主人公の引き立て役でした。さらに脇役の人間ドラマをもしっかりと構築して間接的に主人公を魅力的に見せるという、「事件が主役」だった近年の刑事ドラマに対するアンチテーゼとでも言うべきドラマでした。その他のドラマでは意外にも『妄想捜査~桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』(テレビ朝日)を真剣にバカバカしさに徹したコメディとして高く評価しているのと、『聖なる怪物たち』(テレビ朝日)と『分身』(WOWOW)は純粋にストーリーを楽しめる良質なドラマでした。

ジャニスカ的最優秀監督賞
 宮本理江子
(『最後から二番目の恋』)
 
 <優秀監督賞>
佐藤祐市
(『ストロベリーナイト』)
土井裕泰
(『運命の人』)
 

【 演出 】 『最後から二番目の恋』の宮本理江子監督(フジテレビ)の演出手法についてはすでに『流れ星』のレビューで詳しく述べておりますので、あわせてご覧いただきたいのですが、やはり今作においても役者さんのお芝居を正攻法で撮るという宮本演出の特徴は健在でした。主人公二人の掛け合いのシーンはスタジオ、ロケを問わず、ほぼ1カットで撮っているものが多かったように思います。最終回で言えば、主人公二人がバーのカウンター席で並んで会話をするシーンなどがその典型で、複数のカメラを使用することによって、役者さんのお芝居を切らずに撮影することが可能となります。以前にも述べたとおり、これは監督自身が小細工をして何かを生み出してやろうという発想ではなく、役者さんが流れの中で生み出したもの(偶発的なものを含む)を掬い取ろうとする姿勢で、ドラマ監督にとってはこの手法を採用すること自体が案外難しいことなのです。特に若いディレクターは撮影で勝負せずにポスプロで映像をいじろうとする傾向にあり、こういう肝の据わった演出はベテラン監督ならではのものでしょう。その意味では、『運命の人』の土井裕泰監督(TBS)の演出もそういうベテランらしさを存分に感じることができましたが、こちらは時として細かいテクニックを用いて、ストーリー展開によってうまくメリハリをつけていたところはさすがでした。『ストロベリーナイト』の佐藤祐市監督(共同テレビ)はこのお二人の演出とは対照的で、台詞で表現しない部分を「絵」で見せていく手法を特徴としており、この方はどちらかと言えば映画監督に近い映像作家というイメージです。

ジャニスカ的最優秀脚本賞
 岡田惠和
(『最後から二番目の恋』)
 
 <優秀脚本賞>
龍居由佳里・黒岩勉・林誠人・旺季志ずか
(『ストロベリーナイト』)
金子ありさ
(『タイトロープの女』)
 

【 脚本 】 今クールはしっかりとした実績のある脚本家が書いたドラマはしっかりと面白かったという印象です。ここまできたらもう言うまでもないと思いますが、『最後から二番目の恋』はテーマ表現から台詞回し、各話の構成に至るまで大変レベルの高い脚本でした。この脚本の最大のみどころは何と言っても主人公二人の見事な掛け合いですよね。私はトマトマンさんのコメントを読んで初めてはっきりと認識したのですが、二人の会話の中には巧みに「世代」を象徴するキーワードが散りばめられていたようです。私は表面的な楽しさばかりに気をとられていたので、会話の内容にもしっかりとした意味があったということを知ってさらにこの脚本のすごさを思い知りました。『ストロベリーナイト』は、原作モノとは言え、概ね2話から3話の中に原作小説のポイントをコンパクトに詰め込んでいく作業は決して簡単なものではありません。さらに主人公の性格や過去、あるいはバックボーンとなるものを事件描写の中にバランスよく組み込んでいた点も高く評価したいと思います。複数の脚本家が分担していた作品ですが、クオリティのばらつきをまったく感じることなく観ることができました。その点はプロデューサーの手腕も感じます。『タイトロープの女』は地味ですが、主人公二人の言葉にしない心の葛藤が巧みに表現されたドラマで、今作のような台詞に頼らない表現ができる脚本家は近年ではとても貴重だと思います。こういう本を評価しなくなったらテレビドラマの未来は明るくありません。

ジャニスカ的最優秀主演男優賞 ジャニスカ的最優秀助演男優賞
中井貴一
(『最後から二番目の恋』)
長谷川博己
(『聖なる怪物たち』『運命の人』)
<優秀主演男優賞>
佐藤隆太
(『妄想捜査~桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』)
<優秀助演男優賞>
笹野高史
(『タイトロープの女』)

【 男優 】 最優秀主演男優は誰も異論ないと思います。中井貴一さん(『最後から二番目の恋』)のこういうお芝居は断片的には見たことがあったのですが、1クールがっつり観てしまうともう中毒ですね。思わず芝居を見ちゃう俳優さんというのはそんなに多くはいないし、「芝居を魅せる」というのが一流俳優の証なのかもしれません。中井さんは台詞回しも巧みですけど、常にちゃんとした意味のある細かい動きをつけているところも芝居を見ちゃう理由のひとつかなと思っています。佐藤隆太くん(『妄想捜査~桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』)はもしかしたら将来的に中井貴一さんのようなタイプの俳優さんになれるかも知れないと思わせるお芝居でした。真剣さとコミカルさを同居させるという難しい役柄を見事に演じきっていたと思います。長谷川博己さん(『聖なる怪物たち』『運命の人』)はもうテレビドラマには欠かせない顔ですね。2作品の正反対と言ってもいい役柄を同じクールで見られたのはとても興味深かったし、やっぱり素晴らしい俳優だと再認識しました。笹野高史(『タイトロープの女』)さんは、どちらかと言えば徳平に代表される人のいい役の印象が強いですが、狡猾な役柄をやらせてもやっぱり上手。笑顔の中に腹黒さを滲ませる見事なお芝居でした。

ジャニスカ的最優秀主演女優賞 ジャニスカ的最優秀助演女優賞
竹内結子
(『ストロベリーナイト』)
 真木よう子
(『運命の人』)
<優秀主演女優賞>
小泉今日子
(『最後から二番目の恋』)
長澤まさみ
(『分身』)
 <優秀助演女優賞>
飯島直子
(『最後から二番目の恋』)

【 女優 】 主演女優の竹内結子ちゃん(『ストロベリーナイト』)と小泉今日子さん(『最後から二番目の恋』)はほとんど同評価と言ってもいいのですが、役柄の難しさは姫川玲子の方が上かなというところで決めました。また竹内結子ちゃんは将来的に小泉今日子さんが演じた千明のような役にも対応できる女優さんになるだろうと思う一方で、現在の竹内結子ちゃんと同じ年齢の時の小泉今日子さんに姫川のような役が似合ったかということも考えました。姫川玲子は細部にわたる初期設定がいくつもあって、しかも繊細さと豪快さを併せ持った役柄であり、それらをひとつひとつ丁寧に落とし込んでいく作業は、ある種ストイックなものだったのではないかと想像しています。それとこの骨太な女性刑事という役の中に随所で「女」を意識させたのもすごい。それも彼女の計算がしっかりと感じられる形で。小泉今日子さんは彼女のキャリアの中でも屈指のはまり役だったのは間違いないところでしょう。今日子さんの地の部分も大いに役柄に反映されていたのかもしれませんが、やっぱりこれも簡単な役ではないですよね。真木よう子さん(『運命の人』)は、個人的にはこれまで高く評価したことはなかった(特に『龍馬伝』)のですが、女性的な繊細さもしっかりと表現できる方なんだということを初めて知りました。この役柄は一見して支離滅裂の言行不一致という掴みどころのない性質を帯びていましたが、最終的にしっかりと辻褄が合っていたのは彼女のお芝居によるところが大きいような気がしています。飯島直子さん(『最後から二番目の恋』)は、あの「バブルの残り香」を匂わせるハイテンションな芝居を難なくできてしまう女優さんは稀有だと思います。主演のお二人に準じてこのドラマのコメディ要素を盛り上げてくれました。

今クールは忙しかったので、しばらくは充電させていただくとして、4月のできるだけ早い時期に次クールの期待度ランキングをアップしたいと考えています。直感的にはやはり今クールほどの粒ぞろいとはいかないようですが・・・思い出しましたら覗いてみてください。。。


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