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(2)全開ガール [ドラマレビュー]

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『 全開ガール 』
第2回
( 2011年 フジテレビ 公式サイト
演出:武内英樹 脚本:吉田智子 出演:新垣結衣、錦戸亮

こんなに気軽に楽しめるドラマは本当に久しぶりです。本作はとにかく大きな欠点がないドラマだと思います。
出演者、脚本、演出のどれをとっても素晴らしい仕事です。だから余計なことを考えずに安心してストーリーを追っていけるし、
難しいテーマを扱っているわけでもないから、終始リラックスして画面に対峙できます。
私はラブコメディというジャンルのドラマがそんなに好きなわけではないのですが、このドラマは大好きになってしまいました。

前回のレビューで触れた武内英樹監督のテンポのいい演出は今回も健在で、
例えば序盤、鮎川若葉(新垣結衣)と汐田そよ子(蓮佛美沙子)がいっしょに昼食を摂りながら会話するシーンは、
テーブルに向かい合って座る二人をカメラドリーで外周から捉えるショットに、
そよ子の台詞に対する若葉のリアクションを捉えたショットと前回の回想シーンを短くインサートしていくことによって
心地よいテンポを実現しています。また、このシーンは若葉の口元に付いたパンくずを捉えるショットから始まっており、
最初から観るものを画面にひきつける工夫がなされていることも付け加えておきます。
このシーンはすごく巧妙なカメラ割がなされているので再度ご覧になれる方は注目してみてください。
前回紹介した保育園のシーンもそうですが、こういう複雑なシーンを構成するのは本当に大変な作業だと思うので、
できれば毎回スポットライトを当てていきたいと思います。

今週は、このドラマのストーリー上の方向性がかなり見えてきました。
もちろん大雑把に言えば、若葉が山田草太(錦戸亮)とくっつくかどうかというところがストーリー上の大きな焦点ですが、
重要なのはその過程をどのように見せてくのかということです。
私はこのドラマの表現上の核とは、若葉が真逆の価値観を持つ草太との交流の中で、
「幸せ」というものに対する価値観を転換させていくところにあると思っていて、
若葉の人間的成長の末に真の幸せが彼女に訪れるというのが大きな流れだと考えています。

今回で言えば、手作り弁当のエピソードにそのことが集約されていて、
若葉が落として台無しになった手作り弁当を草太が復元するというその「無償の優しさ」は、
法律とお金だけを信じて生きてきた若葉には到底理解できない種類のものだったはずです。
しかし、そんな若葉でも桜川日向(谷花音)の感謝の言葉に接してその心が大いに動きます。
そんな若葉の気持ちをこの台詞に織り込ませているのは見事でした。

 「これは、クマです」

お弁当のキャラクターをねずみと勘違いした日向に対して、
若葉は揺れ動く気持ちを隠すかのように、静かにこれを訂正します。
いつもの若葉だったらどうでしょう、全力でこれを打ち消したに違いありません。
そして、自分の行為を誰かに感謝してもらえたという状況におそらく生まれて初めて接した若葉は、
自分も草太に感謝の気持ちを伝えなければならないと、衝動的に走り出すのです。
このあたりの若葉の行動は普段の理屈っぽい言動とは違って、「感情」に支配されたものであり、
人間的にはある種純粋培養されてきた(=世間知らずとも言う)女の子の片鱗を初めて見せた瞬間だったと思います。
このときの若葉の感情が汐田そよ子の姿を目の当たりにすることによって一気に冷めてしまうところは、
とても興味深い趣向で、つまり若葉自身は当然無自覚ですが、彼女を我に返らせたのは「嫉妬心」だったわけです。

 「あんな汚いお弁当を届けたのは嫌がらせですか」
「は?ネズミなわけないでしょ」

完全にいつもの若葉に戻ってしまいました。でも実は、若葉は草太を通じて
彼女が知らなかった、あるいは軽視してきた「感謝」という価値観を思い知ることで、人間的には大きく成長しているのです。
彼女の成長は一見遅々として進まないようにも見えるかもしれませんが、
これこそがこのドラマの肝となる要素なんだと思います。これは若葉と草太の関係にもまったく同じ図式が当てはまり、
「若葉の人間的成長」と「若葉と草太の関係」がゆっくりと、時にもどかしく描かれるのがこのドラマだと思います。
と言っても、ラブコメなので、あんまり難しく考える必要もありませんけど(^^;。

いずれにしろ、ある程度の確信を持って以上のような深読みが可能なのは、
主人公の人格を形成したに違いない彼女の生い立ちが第1話においてしっかりと描写されていたからであり、
本作は、第2話にして早くも主人公に感情移入するのに十分な根拠を提示している優れた脚本だと言えます。

そういえば、今週は初めてタイトルバックが放映されましたが、そんなに手が込んだものではなくて私は好感を持っています。
前回、演出面から言及したアクティブな主人公を終始表現しているところは、
この作品の顔となるのに相応しい雰囲気を持った映像になっている思います。
それと本作の主題歌およびエンディングテーマは「月9」としては久々に作品のテイストにはまったとてもいい選曲だと思います。
もっともエンディングテーマについては必ずしも製作者が「選曲」したわけではないと思いますが。

関連記事 : (11)全開ガール (2011-09-24)
(10)全開ガール (2011-09-17)
(9)全開ガール (2011-09-10)
(8)全開ガール (2011-09-02)
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(6)全開ガール (2011-08-19)
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(4)全開ガール (2011-08-07)
(3)全開ガール (2011-07-27)
(1)全開ガール (2011-07-15)


タグ:全開ガール
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k_iga

「のだめ」とスタッフが同じでしたか。草太へのグーパンチも納得です(笑)
某所にも書きましたが、竹内力さん出演は昨年のAmazonでの「2011新垣結衣カレンダー」の件
(商品画像が新垣結衣ではなくて竹内力)のつながりですかね?
by k_iga (2011-07-23 18:20) 

ジャニスカ

錦戸亮くんの白目のむき方と鼻血の出し方は「まさに」といった感じでしたね(^^)。

竹内力さんの連続ドラマ出演は15年ぶりらしくて、言われてみれば、
竹内さんサイドとしても「新垣結衣ちゃん主演なら喜んで」という判断があったかもしれませんね。
キャスティングにしろ演出にしろ作り手の意図が感じられるドラマというのは楽しいものです。

by ジャニスカ (2011-07-23 19:59) 

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