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(8)大切なことはすべて君が教えてくれた [ドラマレビュー]

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『 大切なことはすべて君が教えてくれた 』
第8回
( 2011年 フジテレビ 公式サイト
演出:西浦正記(FCC) 脚本:安達奈緒子 出演:戸田恵梨香、三浦春馬、武井咲

この脚本を執筆している人は、自分が創作した登場人物を愛せているのだろうか。

序盤に上村夏実(戸田恵梨香)と山下有悟(福士誠治)が会食するシーンがありましたが、
あの山下の言動というものは、女性から見て本当に魅力的に映るんでしょうか。
私は男ですが、あいつとは友達になりたくはありません。
たとえば、昨年NHKで放送された『セカンドバージン』における布施明さんの役柄が、
女性を口説く時に山下のような言動を為したならば、とてもスマートだったかもしれません。
しかし、夏実と同年代の男が慣れた手つきでワインを注ぎながら「中東では・・・」とか「外堀を・・・」などと言い出したら、
こいつこの若さでどんな人生送ってきたんだろうと思わずにはいられません。

そんな山下を見つめる夏実は前回に続いて、彼の言動にドン引きするでもなく、
東堂さやか(篠田麻里子)に山下の「品定め」を依頼します。さやかは山下の言動について、

「絵に描いたような素敵さ」

と評し、さらに、

「夏実とのことをなんとかしたいって、必死だった」

とまで言って、山下の人物像を掘り下げます。これはまさに「外堀」が埋まった感じ・・・。

今に始まったことではありませんが、
この脚本家はやはり登場人物に言わせればそうなると思っているとしか考えられません。
直前に見せられたあの山下の言動が「絵に描いたような素敵さ」だって?「必死だった」だって?
ある意味山下は本当に「必死」なのかもしれないが、彼の必死さには不純なものを認めざるをえません。
前回も見せられたとおり、彼が感じた「運命」が直接夏実に対して向けられたものだとは私には思えませんから。

百歩譲って山下は前回登場したばかりの新参者で、
技術的には物語に新展開をもたらす役割を担う「脇役」と考えて目をつぶりましょう。
私が今回それ以上に「大問題」だと思ったのが、いよいよ学校内での立場が危うくなった柏木修二が
「依願退職」を迫られたとき、何を思ったのか、理事会にて「解雇してください」などと言い出したことです。

教頭の鶴岡悟司(風間杜夫)は、苦渋の思いで、修二に辞表を書くように求めます。
そして元教え子への温情から「退職金付きの依願退職」という形で決着をつけようとしてくれたわけですが、
なんと修二は理事会の場で、「退職金は要らないので解雇して下さい」とのたまうではありませんか!
こいつ「退職金付きの依願退職」が本当に温情だと思ってやがる・・・。

修二が「解雇」という形を取りたいのは、自分を貶(おとし)めることで、自分の気持ちが楽になると考えたからで、
これを自分の生き方を貫く、と言ってしまえば聞こえがいいですけど、修二は「そういう自分が好き」なだけでしょう。
社会においては「自分」よりも優先しなければならないことがあることを彼は知らないのでしょうか。
彼の中には学校の体面や尽力してくれた教頭の立場を思いやる気持ちがまったくないようです。
なぜ学校側が「退職金付きの依願退職」という条件を提示したのかといえば、
「一身上の都合で自主退社(校)」の方が波風が立たなくて望ましいと考えたからではないのか。
そういう想像力を働かせることができない人間が今まで教師をやっていたとは、確かに「解雇」が相応しいな・・・。

どうやらこのドラマの中にはそのあたりの社会通念が存在しないので、
解雇だろうと、依願退職だろうと、別にどっちでもいいのかもしれませんが、
今回の彼の行動はある意味では純粋・・・裏を返せば世間知らず・・・
これらは少なくとも実社会においては、とても「めんどくさい」性質のものであり、
現実世界で社会生活を営んでいる視聴者にとっては、こんなやつとは絶対に関わりたくないということになるでしょう。

今さらながら言いますが、このドラマの脚本担当者は、実生活でこういう男がいたとしたら、本気で愛せるのでしょうか。
そう思っているとしたら、多くの人の共感を得て、感動を生み出すことを目的とするテレビドラマの仕事には向いていないし、
仮に「こんな男、最低だよね」という意識で作っているとしたら、今度は視聴者をバカにした最低の仕事ということになります。

結局解雇となり、我を通すことに成功した修二を見守っていた夏実は、大いに彼に同情したらしく、
これまた「めんどくさい」ことに雪の中、修二のマンションの前で彼の帰りを待っており、
修二に「大切なことは夏実がいることなんだと気づいた」という甘い言葉を囁かれて、惚れ直しちゃったみたいです。
あの山下に好感を持ち、この修二を愛してしまう夏実・・・
我々はこのドラマの登場人物をどこの世界に存在する人たちと考えればいいのでしょうか。
ひとつ確かなことは脚本担当者の頭の中には何の違和感もなく存在しているということです。

もう一度言います。脚本家がこのドラマの主人公を本当に魅力的だと思って書いているとしたら、
多くの人の目に触れるゴールデンタイムのドラマを執筆する資格はないし、
逆に自らが主人公に魅力を感じることがないまま書いているとしたら、
これは主人公に感情移入しようと毎週テレビに向かっている視聴者に対する背任行為です。
どのみち、とてもレベルの低い仕事に3ヶ月もつき合わされたということを私は今回はっきりと認識しました。

関連記事 : (10)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-03-30)
(9)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-03-24)
(7)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-03-03)
(6)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-02-23)
(5)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-02-16)
(4)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-02-09)
(3)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-02-01)
(2)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-01-25)
(1)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-01-18)


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ゆんママ

本当になにもかもおっしゃるとおり!!
みながらストレスばかりかんじました・・・ありえないセリフばかりまじめにしゃべる登場人物に、テレビにつっこみいれてもしかたないのにいれてしまいました。
最近はひかりちゃんさえ、うっとうしく思えて、いえ、役者さんではなく役柄として、
もうなにをたのしみにみればいいのかわかりません。
流れ星が恋しいです~~
by ゆんママ (2011-03-10 08:32) 

むーにゃ

ジャニスカさん、こんばんは。
今回は、てっきり風間杜夫さんのことを書かれるのかと思ってましたが…(笑)

そうですよねぇ~ 脚本がダメなんですよねぇ~
次は、こうなってほしいと思うこちらの気持ちをことごとく裏切って、違う方向へと進んでいくんですよ。「えっ、ここで、こうなる?こうする?こう思う?」 って?がたくさんついてしまうんですよ。一言で言えば、観終わった後、気持ち悪いんですよね。

しっくりこないながらも、ここまで見続けてきたのですが、あと数回というところで、リタイアしてしまいそうです。もう観なくてもいいかな、という気になっています。
やっぱり、最後は、2人元のさやに納まって、めでたしめでたしになる気がしますし。
途中、別の展開もありうるのかなと、期待した時もあったのですが、今回の終わり方をみると、やはり、当初の予定通りなのだと思わざるおえなくなりました。

さて、この底の浅いドラマの話から一転して、真剣な話になりますが、前回の私のコメントに返信いただいた「日本人としての誇り」の話なのですが、あれからもずっと考えていました。
ジャニスカさんが言われたように、
>考え方を平坦化すれば、争いが生まれる可能性は格段に減るのかもしれませんが、
人類の進歩は確実に停滞するでしょう。異なる国家同士、民族同士が互いの考え方や長所短所を理解して、それを人類の進歩ために生かしていこうとするのが本当の意味での「理想の世界」ではないでしょうか。

確かにその通りだと思います。私は単に臆病だったのかもしれません。一歩前に出ることよりも、その場に佇んで、何もしないことを選んでいたのかもしれません。本当に、理想を目指すのなら、前を見据えて、前に出る勇気を持たなければいけませんね。
「日本人として」という言葉に対するアレルギーのようなものは、長年に渡って私に染み付いていたものなので、いま、それが間違いであったと気付けたとしても、すぐに口をついて出てくるのかといえば、なかなかそれは容易ではありません。しかし、自分の思い違いであったということを自覚できた今、少しずつではありますが、いつか自然に発することのできる言葉になるような気がしています。

日本には、他の国にはないいいところがたくさんあるんですよね。
自然もそうだし、人もそう。そのいいところを、誇ることがいけないことだなんて、どうかしてました。他の国にも、たくさんいいところがあって、お互いにそれを認め合い、お互いを高めあうことができたら、本当に、いい世の中になりますよね。国同士などという大きな単位にしなくても、人間同士、みんながそれぞれを理解し、認め合い、尊敬し、思いやることができたら、人類の発展にもつながるし、戦争のない明るい世の中になるんでしょうね。
by むーにゃ (2011-03-11 01:42) 

ジャニスカ

ゆんママさん、こんにちは~。
このドラマの脚本については、当初からとてもレベルが低いものと認識していましたが、
前回ぐらいからまるで開き直ったかのようなエピソードと台詞が連発され、あきれ返っています。
このドラマのクオリティを低くしている元凶が紛れもなく脚本であることを指摘しておかなければ、
支離滅裂な役柄を演じさせられている俳優さんたち、
ありえないエピソードを然もあるように演出しなければならないディレクターが
あまりにもかわいそうだと思いました。
申し訳ありませんが、安達奈緒子さんという方は、
もう2度とゴールデンタイムのドラマを書いてはならないし、書くことはないと思います。
若手でも実力のある脚本家はたくさんいますから、これをもって確実に淘汰されるでしょう。
ただし、もうひとつ強調しておきますが、脚本のクオリティについての責任はプロデューサーにもあります。

私は最後まで観るつもりですけど、
それはこのドラマがどんな手法を用いて失敗したのかを知っておきたいという個人的な興味からであって、
通常はもう観るのを止めてもいいんじゃないでしょうか、、、(^^;

by ジャニスカ (2011-03-14 00:00) 

ジャニスカ

むーにゃさん、こんばんは~。
風間杜夫さんのことを書けば十分に一回分は埋められるのですが(^^;、
今回、脚本のことはどうしても書かずにはおれませんでした。

三浦春馬くんのお芝居を酷評した手前、
それよりも決定的にこのドラマのクオリティを貶めている
脚本家の資質に言及しなければ彼も浮かばれないなと思うようになりました。
この脚本を書いている人はとても想像力の浅い人なんだと思います。
一言で言えば脚本家に向いていません。
この際なので、三浦春馬くんを擁護しておきますが、
できる脚本家ならば、今の彼の良さが生きるキャラクターを創作するべきであって、
俳優さんのイメージを生かした本作りができないレベルの人が
ゴールデンタイムのドラマを書いてはならないと思います。

「日本人」というものに対する価値観はあの戦争を境にして劇的に転換してしまったようです。
どうしてそんなことになったのかと言えば、GHQの統治政策による部分が大きく、
それに従わなければならなかった戦後の学校教育が果たした役割は大変大きいでしょう。
学校で教わったことが間違っていた、とまでは言いたくはありませんが、
戦後65年を経た今だからこそ、当たり前の価値観を疑ってみる姿勢も必要だと思います。
「戦後の常識」によって「日本人の良さ」に目を向けられなくなっているとしたら、
こんなにもったいないことはありませんから。

今度の地震で日本という国が直面している危機というものは、
ひとりひとりの中に眠っている「日本人らしさ」が目覚めれば確実に乗り越えられるものだと思います。
私は今まさに「日本人」というものが試されているような気がしてなりません。

by ジャニスカ (2011-03-14 00:02) 

むーにゃ

ジャニスカさん、こんにちは。
私は、仙台に住んでいて、先日の地震にあいました。幸いにも、家族全員無事で、住んでいる家にもあまり被害はありませんでした。
昨日まで、NTTが不通だったので、ネットもできませんでした。今朝、やっと復旧して、ネット上の知人の方に無事の連絡をしている所です。
今回の地震では、いろいろなことを考えさせられました。当然生活自体も一変してしまいました。
地震直後は、情報も入らない状態だったので、今、自分達の周りで何が起こっているのかを知る術もなかったのですが、一日一日、徐々にライフラインが復旧していく中で、日本国中、世界中の方々が、まるで自分が震災にあったかのように心を痛めている声を聞き、世界はひとつなんだなぁと、実感しています。
まだまだ厳しい状況にはありますが、頑張って乗り越えていこうと思っています。
多大な被害を受けた宮城県を支えていくのは、被害の少なかった自分達なのだと思っています。
“日本人としての誇り” 地震にあう前に考えることができて、本当によかったと思っています。
ジャニスカさんにも、いま私達を支えてくれている皆さんにも、本当に感謝しています。
きっと、乗り越えられると思います。
by むーにゃ (2011-03-17 09:20) 

ジャニスカ

むーにゃさん、こんにちは。ご無事でなによりです。
私も数年間、仙台に住んでいたことがあって、他人事ではない思いでおります。
親戚が仙台におりますし、よく知っている町がたくさん被災されている事実に何と言っていいかわかりません。

日本中が心を痛めているのは間違いないと思いますが、
その一方で関東地方では、ガソリン、食糧、生活必需品の買占めが問題になっています。
一昨日などは家の近所でも十数リットルのガソリンを入れるのに数時間待ちという状況がありました。
彼らには被災地であらゆるものが不足しているということの意味を考え、
被災者の皆さんが不自由な生活を強いられているということを思いやる想像力が欠けているようです。
直接的な被害を受けなかった人たちが浮き足立ってどうするのでしょうか。
被災地のためにできることを考える以前に、被災地のためにやってはいけないことがあるはずですが、
都会で便利な生活をしてきた人にはそのあたりの想像力が乏しいようです。
震災の義援金を募金する一方で、
目下被災地で必要とされている物資を買い漁っている自己矛盾に早く気が付かなければなりません。
石原都知事の発言が問題になりましたが、
「我欲」を洗い流さなければならない日本人がいるのは事実のようです。

被災地から離れた私ができることは、浮き足立つことなく、
今自分にできることを冷静に判断することだと思っています。
私はこのブログを通じて被災地に向けてエールを送るつもりはありません。
これまでどおり、映画やドラマのレビューを書き続けることが大事だと思っています。
「日常」に戻れる日が一日も早く訪れることを願っています。
私はその日まで「いつもどおり」を貫きます。
映画やドラマを観る余裕はないと思いますが、
むーにゃさんにも私のブログを訪れることで、日常を取り戻す励みにしていただければ嬉しいです。
また気軽にコメントをお書きください(^^)。

by ジャニスカ (2011-03-17 22:04) 

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