最後の10完歩 - JRA

JRA（日本中央競馬会）
『 最後の10完歩 』
（ 2011年 ／ 博報堂 ）
演出：岡田隆　音楽：小田和正「woh woh」　出演：武豊、シルバーウルフ
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JRAは、ギャンブルという要素が先行しがちな「競馬」というものに対するイメージ戦略として、
馬券を売るための商品広告とは別に、2000年より「ブランド広告」を積極的に展開しています。
JRAのブランド広告はとても美しいものが多くて、毎年楽しみにしているのですが、
それらの歴代のCMの中でも間違いなくもっとも美しく、もっとも完成度が高いのが本作ということになります。

このCMは、2001年に「最後の10完歩」と銘打って通年で展開されたCMを再編集したもので、
2001年のものよりもジョッキーの美しい騎乗姿勢が余すところなく見ることができます。
このような映像は、競馬ファン、もっと言えば競馬サークルの中にいるプロでも目にしたことがなかったもので、
競走馬が走るときの躍動感やジョッキーの騎乗姿勢の美しさに多くの人が目を奪われました。

武豊という人は日本でもっとも有名な騎手ということになると思いますが、
同時に中央競馬で一番勝っている騎手であり、様々な記録にその名を刻む日本競馬界の至宝とも言うべき方です。
そして、このCMを見た誰もが、武豊が日本一美しい騎乗フォームのジョッキーであることを確認したのでした。
ぜひ注目していただきたいのが、ジョッキーの腰の位置で、
時速60km以上で疾走する馬上にあって、まったく上下動がないのは驚くべきことです。

馬の「完歩」とは、最初の前肢が接地してから次にその前肢が接地するまでのことで、
レース時に競走馬が1完歩で進む距離は7～8メートルにもなり、
名馬と呼ばれる競走馬はこの1完歩の距離が大きいと言われています。
記憶に新しい三冠馬・ディープインパクトは、200メートルを24完歩で走ったそうです。
この数字に基づいて1完歩で進む距離の平均を計算すると、およそ8.3メートルとなります。

競馬における「最後の10完歩」とは、すなわちゴールまでの100メートル弱（時間にするとおよそ5秒）となり、
競走馬が最後の力を振り絞ってトップスピードに到達する瞬間です。
サラブレッドの四肢が順番に大地を蹴って屈伸を繰り返し、1完歩ずつ確実にゴールへと近づいていく・・・
これが競馬の本質であり、真実というわけです。

（2011/04/15追記）
このCMに登場する馬を検索して訪れてくれる方か多いので補足しておきます。
この馬は、1996年日高産の牡馬で、シルバーウルフという名で競走馬登録されていました。
中央競馬未勝利に終わり、引退後はJRA競馬学校に在籍していたそうです。
お父さんは、タマモクロスと聞けば納得です。雄大な馬格と美しい芦毛は父譲りなんですね。
http://db.netkeiba.com/horse/1996105430/

		「最後の10完歩」完全版 リンク切れ
		「最後の10完歩」2001年版 リンク切れ
		「最後の10完歩」メイキング リンク切れ

ディープインパクト　伝説の若駒ステークス （2005年1月22日 京都競馬場）

コメント 6

　どうしてでしょう、この映像を見て涙が止まりませんでした。　美しい！！

　ここ何日か同じものが繰り返し繰り返し流される　AC　ＪＡＰＡＮのCMに「いい加減にして欲しい」と言う気持ちになっています。　仕方が無いのかもしれませんが・・・。
by サンタ (2011-03-19 13:56) 

ジャニスカさん、感動をありがとう。
武豊さんの美しい姿に、驚きと心からの敬意を感じました。

ジャニスカさんのレビューは、いつも私に、物事の本質を教えて下さいます。
有難うございます。
by めい (2011-03-21 08:38) 

サンタさん、こんにちは。
そう言って頂けて本当にうれしいです！
競馬というとまずは「ギャンブル」というイメージが付きまといますから、
どうしても「スポーツ」としても魅力が見逃されがちです。
競馬はスポーツではないという方もたくさんいますが、
競走馬がデビューするまでには1年以上の初期調教の中で、
まっすぐ走る練習をしたり、他の競走馬と並んで走る練習をしたりして、
なおかつトレーニングセンターで最低でも1ヶ月以上は
心肺機能を高めるための本格的なトレーニングをしなければレースに出ることはできません。
競走馬はアスリートなんです。
このCMの映像には、競走馬の鍛錬された筋肉の躍動や完成されたランニングフォームが刻まれています。
そして、競走馬にできるだけ負担をかけない騎乗フォームによって、
競走馬の能力を最大限に引き出し、勝利に導くジョッキーの技術というものを見ることができます。

サラブレッドは人間が作り出した最高の芸術品である、とはよく言われることなんですけど、
そのことを実感できるCMになっていると思います。

by ジャニスカ (2011-03-21 22:13) 

めいさんにそう言って頂けて本当にうれしいです！
私もこのCMを初めて見たときは驚きましたし、その美しさに目を奪われてしまいました。
ジョッキーの仕事とは、きわめて特殊なもので、
そのすごさというものはなかなか素人には伝わりにくいものなんですけど、
このCMの映像を見ればジョッキーがレース中にどんなにすごいことをやっているのかがよくわかると思います。
実際の「最後の10完歩」では、ジョッキーはステッキを振るいながら、片手で馬を御し、馬の首を押します。
武豊さんも最初からこういう騎乗フォームだったわけではなくて、
十数年かけて、このような美しいフォームにたどり着き、今でも進化を続けています。
ジョッキーの仕事は、大げさでもなんでもなく常に死と隣り合わせですし、
彼らの技術は、世の中でも屈指の特殊技能だと思います。
おっしゃるようにこの映像を見てしまえば、ジョッキーの仕事に対して敬意を払わずにいられません。

競馬の本質を映像に刻み、多くの人に知ってもらうのがこのCMの目的ですから、
それを伝えることができて私も本当にうれしいです(^^)。

by ジャニスカ (2011-03-21 22:22) 

ジャニスカさん、初めまして。

胸が熱くなりました。

今年には行ってこのJRAのブランドCMがとても気になっていました。
画面にみっていると胸が熱くなります。
騎乗の武豊さんと芦手のサラブレッドがモノトーンのバックに
とけて行くようで目が離せません。

私は投票券は買いませんが競馬が大好きです。
CMの検索で素敵なブログを拝見しておもわずコメントさせて頂きました。
ありがとうございました。

これからもこういったCMに期待したいですね。
by 雛 (2011-04-04 21:56) 

雛さん、はじめまして！
本当にこのCMには見入ってしまいますね。
私は武豊さんがステッキを取り出す動きがとてもスマートだと思っていて、
あの動きをアップで見せているところが、
競馬のことをちゃんと知っている人がこのCMを作っていると感じさせます。
それとサラブレッドの「つなぎ」の動きの柔らかさにも驚きました。
私も競馬が大好きで、もうかれこれ10年以上競馬を見続けているのですが、
このCMを観るたびに競馬の本質やその魅力を再確認する思いです。

実はこのブログは発足当時は競馬関連の記事を書いていたのですが、
競馬の魅力を伝える文章というのは素人にはなかなか難しいところがあって長続きしませんでした。
それを考えるとわずか1分のこの映像が持っている力には敬意を払わなければなりません。
JRAの新しいCMにも期待していますが、
個人的には競馬を題材にした映画を製作して欲しいとずっと思っています。

ご来訪とコメントありがとうございました！(^^)

by ジャニスカ (2011-04-05 20:26)