SSブログ

(3)大切なことはすべて君が教えてくれた [ドラマレビュー]

2011011801.jpg 

『 大切なことはすべて君が教えてくれた 』
第3回
( 2011年 フジテレビ 公式サイト
演出:西浦正記(FCC) 脚本:安達奈緒子 出演:戸田恵梨香、三浦春馬、武井咲

前回までのこのドラマに対する私の印象はガラリと変わっています。
このドラマを観続ける価値はある、今回はそう思わせてくれる内容だったと思います。
 

先週まではこのドラマについてのレビューを書くといっても
コメントのしようがないと思っていたので、これまでどおりこのドラマの根本的な欠陥を指摘し、
どちらかと言えば、揚げ足を取るような形を取らざるをえないと考えていたのですが、
今回はそれなりに見所が多く、方針転換できそうなことを私は喜ばしく思っています。

とは言え、私の気持ちとしては主人公二人の動向については相変わらず無関心であり、
私がこのドラマを見続けるモチベーションは、
佐伯ひかり(武井咲)の存在にしか見出すことはできないという思いに変わりはありません。
前回も述べたとおり、このドラマの主人公が彼女だったらとても魅力的なドラマになっていたはずで、
私は今週回を観てその想いをさらに強くしています。

今週はひかりの過去や病気について、かなりの部分が明らかになりましたが、
そこまでのアプローチとして、ひかりの柏木修二(三浦春馬)に対する愛情の2面表現は、大変見応えのあるものでした。
修二の部屋で彼の帰りを待っていたひかりが、悪意を持って修二と上村夏実(戸田恵梨香)を困らせようとする様は、
このドラマが標榜している(と思われる)表面的で浅いドラマ性が垣間見られるシーンでしたが、
次のシーンで早々に、
それまでの修二と夏実に対するひかりの態度が虚勢に過ぎないことが明らかになります。

ひかりが唯一本音を話せる友人・園田望未(剛力彩芽)に好きな人への想いを正直に打ち明けるシーンは、
脚本的にも演出的にも、このドラマ始まって以来初めて賞賛に値するものだったと思います。

A                         (26'54")
2011020101.jpg

Z.I.
A'                         (28'31")
2011020102.jpg

このシーンは、最終的にひかりについての「謎」が彼女自身の口から明らかになるという大変重要なシーンであり、
そのことはあるキーワードをもって端的に表現されます。
西浦監督は、そのキーワードに向けて、110秒にも及ぶカットを企図して、ひかりの表情を余すところなく捉え続けます。
そして、望未の「こんだけかわいくて、何言ってんの」に対するひかりの返答から彼女についての謎の核心が始まります。
それと同時に、カメラはひかりの表情にゆっくりとズームインし、あるキーワードを巧みに印象づけます。

「違うの・・・あたし・・・普通じゃないの・・・」
「あたしね・・・薬飲まないと、女でいられないの・・・」
「欠陥品なの・・・」 

このシーンの直後、CMに入っていくわけですが、
この「欠陥品」という言葉の響きはある種の衝撃をもって受け止められるものであり、
私は、CMの間ずっと目を閉じて、彼女のこれまでの言動を振り返ってしまいました。
このシーンにおける彼女の心情の吐露と、最前のシーンで修二と夏実に対して見せた彼女の態度との落差は、
それ自体が佐伯ひかりというキャラクターの奥深さということになります。
そして、この落差から生じる彼女に対する同情の念は、それだけで十分に彼女に感情移入する要素となりえるし、
同時に佐伯ひかりというキャラクターを魅力的に見せることに成功しています。
前回のレビューで取り上げた、ひかりが望未に対して見せた偽りのない笑顔は、
やはり作り手が明確な意図を持って盛り込んだものであり、このシーンへの伏線だったのは間違いないでしょう。

そして、このシーンを見せたのちに重要なのは、ひかりが修二に対して見せた二つの顔が、
どちらも等しく修二に対する愛情に基づいているということをはっきりと視聴者に認識させることだと思います。
そのためのシーンが、ひかりの家を訪ねてきた修二に、姉の存在とともに自身の辛い過去を語り、
修二への率直な想いを告白してそれまでの言動を謝罪するシーンであることは間違いありませんが、
その種のひかりの想いを表現するものとして、それ以前に大変重要かつ巧みな描写があったことは見逃せません。

ひかりの家にて、ひかりの母が姉の遺品を処分しようとしていることを聞いたひかりが、
表情を一変させて、姉のワンピースを探し始めるシーンは、最初は姉への想いが表れたものかと思いました。
しかし、それが「あの日」に着ていたワンピースであることが明らかになり、
母に対してこれだけは処分しないで欲しいと必死に懇願するひかりの姿を見てしまえば、
その行動が姉に対してではなく、修二に対しての愛情が表出したものであることは疑いようのない事実となります。
このときのひかりの姿は、修二との数少ない思い出を必死に守ろうとするものであり、
この直後のシーンで、率直に口にした修二への想いに大前提を付与し、説得力を生み出しています。

以上のような今週回におけるひかりについての繊細な人物描写を見ている限り、
前回述べた『月の恋人~Moon Lovers~』よりもクオリティが劣るという発言は撤回しなければなりません。
ただし、『月の恋人』同様、主人公に感情移入できないという根本的な問題は相変わらず厳然と存在しており、
このドラマに対する評価は、依然として低いままであることも付け加えておきます。

今回は佐伯ひかりが抱える事情のうち、かなりの部分が明らかになってしまったと考えられるので、
今後、彼女がストーリー上果たす役割が後退してしまうとしたら、これは非常に残念です。
相変わらず、主人公二人の関係がどうなるのかについては一切興味が沸きませんから、
佐伯ひかりの存在感の低下はそのままこのドラマの死活問題となるでしょう。

今回の終わり方を見る限り、今後は修二がひかりに惹かれていくという展開が考えられますが、
なんとなく、今回明らかになった姉に対するひかりの劣等感というものが重要な意味を持ってくる可能性があります。
漠然とですが、そのあたりには修一の兄・孝一(新井浩文)の存在が相関してくるかもしれません。
孝一もまた弟に対するコンプレックスを持ち続けているのは間違いありませんから。

関連記事 : (10)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-03-30)
(9)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-03-24)
(8)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-03-09)
(7)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-03-03)
(6)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-02-23)
(5)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-02-16)
(4)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-02-09)
(2)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-01-25)
(1)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-01-18)


nice!(2)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:テレビ

nice! 2

コメント 2

あおによし

ジャニスカさんこんにちは

残念なドラマだと思いつつも、ながら見しています。
柏木のダメっぷりが「コレってアリですか」レベルで笑えます。
ラブストーリーの中でひとりだけコントをやってるようで
三浦君にはキツイ役になってしまいましたね。
人をムカつかせるには成功してますけど(笑)

ひかりに対して夏実との愛はレベルが違うんだとか言い放つシーンには
呆れてしまいました、脚本家は婚約者夏実への愛情表現にこのセリフを
入れたのでしょうが、遊びの女と結婚する女は違うと
面と向かって言っているようなものですから、
夏実にとっても本質的に侮蔑的なセリフだと思います。
そもそも修二と夏実の恋愛過程が不明な訳で
どうして夏実がこんな仮面性全開の偽善教師を愛し続けられるのやら?

いずれにしろカギを握っているのは、ひかりです。
修二の部屋のカギを持たせたのも、そういう意味が含まれているのでしょうね
実質このドラマは「武井咲」が主役と言って良いと思いました。
まあ題名からして「・・・君が教えてくれた」ですから当然か(笑)
ジャニスカさんの言うとおり今後の見どころは「ひかり」しだいだと思います。

後味の良いドラマとは言えませんが
それでも今期ドラマの中では見れる方だと思います。
by あおによし (2011-02-02 10:27) 

ジャニスカ

あおによしさん、こんにちは~。
確かに修二の部屋での出来事は「コレアリ」のネタでもおかしくありませんね。
ただ、夏実はあの修二の言葉に彼の誠実さを見出し、「だから好き」なんだそうですよ(^^;。
あの戸田恵梨香ちゃんの涙のお芝居は本当にかわいそうでした。女優さんが、ですよ。
こんなことを言っては何ですが、
私には三浦春馬くんは役柄に相応しい(レベルの)お芝居をしているように思えます。
それに対して恵梨香ちゃんの涙の不毛さと言ったらもうこれは彼女に同情するしかありません。
あの涙で表現できた役柄の心情って一体何だったんでしょうか。
今回、武井咲ちゃんが流した涙の質と比べると、ちょっと不公平すぎるでしょう。
このドラマにおける戸田恵梨香ちゃんは本当にもったいない。
彼女の良さがまったく役柄に生かされていませんから。

正直言って私は主人公二人がどうなろうと知ったことではないので、別に不愉快にも思いません。
というのもそのあたりは二人の間で完結している話ですし。
この二人は俗に言うバカップルってやつなんですよ。
「へぇー」と言いながら受け流せばいいと思います。

私は、武井咲ちゃん演じる佐伯ひかりしか見ていません。
そしてそれだけでも十分にこのドラマを楽しめると思っています。

by ジャニスカ (2011-02-02 21:57) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0