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(1)空飛ぶ広報室 [ドラマレビュー]

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『 空飛ぶ広報室 』
第1回
( 2013年 TBS 日曜21時

演出・プロデュース:土井裕泰 脚本:野木亜紀子 出演:新垣結衣、綾野剛、柴田恭兵

私は航空自衛隊のパイロットになりたいと思っていた時期も、
テレビのディレクターになりたいと思っていた時期もあったという特異な人間でして、
このドラマは自分のために創ってくれたのかと錯覚してしまうような第1話でした。
諦めた、と言えるほどカッコイイものではありませんが、とりあえずそれらのどちらにもならずに今を生きている人間なので、
それぞれに大きな挫折を経験しながらも、何者かになろうともがいている二人のことを羨望の眼差しで見てしまいました。

最初に目頭が熱くなったのは、このドラマを見始めて30分ほどが過ぎた頃でした。
何と言うこともないシーンです。理由はよくわかりません。やっぱり「羨望」なのかなという気もします。
「いいドラマ」という評価は結果であって、「好きなドラマ」という感慨は理屈ではなくパーソナルな直感なんだと思います。
いいドラマはたくさんあるけれど、好きなドラマというのはそうそう巡り会えるものではありません。
第1話を観てこういう感慨に浸ったのは2010年にフジテレビで放送された『流れ星』以来でしょうか。

わすか30秒のテレビスポットを観ただけでも、私の大好きなタイプのドラマであろうということは想像していたんですけどねぇ。

以上は私の個人的な感情を多分に含んだ感想なので、以下は通常通り、レビューっぽい文章にしていきたいと思います。
私は本作の宣伝用ポスターのデザイン、色彩、コピーが大好きで、TBSのロビーで立ち止まってじっくり見てしまいました。
私は第1話を観て改めて本当にいいポスターだったんだと実感してしまいました。
ポスターはトップの画像とほぼ同じものです。そこからコピーのみをピックアップしてみます。

 「人生って、出会いだと思うんだよね。」(鷺坂正司)
「なにもわかってなかった。わかろうともしてなかった。」(稲葉リカ)
「夢をなくしてから、僕は泣くことさえ忘れてたんだ・・・」(空井大祐)
なりたいものになれなくても、別のなにかになれる―」(番組コピー)

どうでしょう。第1話においてこれらの文言すべての意味は確実に明らかになりましたよね。
鷺坂広報室長(柴田恭兵)は、持ち前の人蕩術で若い二人を引き合わせ、そこから何かが生まれようとしています。
稲葉リカ(新垣結衣)は、その出会いを通じて、人間には踏み込んではならない領域があるということを理解しました。
空井大祐(綾野剛)は、この出会いを通じて、初めて正直な感情を露にし、かつての夢が潰えたことを受け入れました。
さらに彼が「別のなにか」になるべく気持ちを一新するところまでを描いたのが、この第1話ということになると思います。

つまりこのドラマはこれらのコピーで理解できてしまうぐらいシンプルな構造なんです。
この「わかりやすさ」はいいドラマの第一条件と言ってもよいほどのものであり、
何より私でなくても万人が共感できる普遍的なテーマであるところがこの「わかりやすさ」の正体だと考えられます。
映像技術や表現手法が時代とともに洗練されていくとしても、テーマを複雑化することは困難なんだと思います。
人間が人間を描き、人間に訴えるのがドラマである以上、テーマそのものは古典的であるべきというのが私の持論です。

さて、本作を語る上で最初に取り上げておきたいことがあります。
私がけっこうな新垣結衣ウォッチャーだということは、このブログをずっと読んでくださっている方はご存知かと思います。
私ではなくとも数年単位で彼女のお芝居を見てきている人間ならば、
本作における彼女のお芝居が一変していることにすぐに気が付いたのではないでしょうか。
たとえば初主演ドラマとなった『全開ガール』(2011/フジテレビ)あたりと比べると一目瞭然だと思います。
当時は自分で表現を生み出しているというよりも、まだ周囲に生かされている感が強くて、
必死に先輩俳優のお芝居に食らいついている「フレッシュな若手女優」といった雰囲気でした。
それが本作では紛れもなく作品の中心に存在している「主演女優」の顔になっていて、
彼女自身が主体的に作品が表現しようとしているものに関わっている印象です。
実はこの印象の片鱗は、『リーガル・ハイ』(2012/フジテレビ)以来感じていたことで、
自分が演じている役が作品の中でどういう役割を果たすべきなのかを的確に理解したお芝居とでも言えばいいでしょうか。
これに関しては堺雅人さんからいい刺激をもらったのではないかと勝手に推察していて、
主演俳優がやるべきことを間近で目の当たりにできたことが本作に繋がっているような気がしています。

ちょっと地味なシーンですが、ジャニスカ的にとても印象深かったシーンがあるので取り上げておきたいと思います。
中盤あたり、鷺坂室長がリカを呼び止めて、広報室に密着することを提案するシーンは、
ストーリー上もキャラクター表現上も奥が深いものがあって、とてもよくできていると感心したシーンのひとつです。
鷺坂室長が人を食ったようにリカのことを「稲ピョン」呼ばわりして、自分のペースに引き込もうとするわけですが、
リカも負けてはいません。ウサギのように飛び跳ねてこう言い放ちます。

「いちいちビビってたら報道記者なんてできませんから」

さらにリカに広報誌を手渡して去ろうとする鷺坂を引き止めて、

「あの、もしかして私が通るの待ってました?」

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それを自信過剰と茶化す鷺坂室長の強かさもさることながら、
彼の言動に怯むどころか彼の意図に思いを巡らせることができるリカも大したものですよ。
「空軍」発言や「人殺しの機械」発言によってすっかり空気が読めない女として印象付けられていたリカが
この一連のやりとりで挽回するわけです。実際、このシーンはキャラクター表現上、大きな転換点となっています。

そして、リカの手に渡った広報誌が1年前のものだというところまでがこのシーンで明示されるわけですが、
そのことが物語の上でも、鷺坂室長という人物を語る上でも、とても重要な意味を持ってたのは言うまでもありません。
つまり、鷺坂室長がリカと空井の「出会い」をまさに演出したのがこのシーンだったということです。
ここからラストシーンまで、二人の関係はすべて鷺坂室長の思惑通りに進展しているんですね。

実は私が女優・新垣結衣の成長を実感したのもこのシーンです。
彼女と柴田恭兵さんとの掛け合いが対等な俳優同士のものとしてしっかりと成立していて、大変見応えがありました。
たとえば『全開ガール』や『ハナミズキ』における薬師丸ひろ子さんとの共演シーンを思い出してみてください。
『全開ガール』のレビューでも少し触れたことがあるのですが、共演者に役を生かしてもらっている感が強かったですよね。
それが今や自分で役を作り上げ、さらに相手役をも引き立てている。これこそが本当の意味での「共演」だと思います。

えーとまぁ、それはそうとして、こちらも多くの方が感じておられるかもしれませんが、
単純にガッキーってこんなにキレイでしたっけ?実はそこに一番びっくりしています(^^;。
私にはあらゆる意味で旬なタイミングで創られているのがこのドラマのように思えてならないのです。

演出にも少し触れておきます。全体的に土井演出の安定感はハンパないのですが、
航空自衛隊という特殊な舞台設定を借りている以上、当然演出的にもこれを生かさない手はなく、
印象的かつ効果的なショットが多かったですね。やっぱりF-15Jは画面に映えました。
特にこの2つのショットが素晴らしかった。

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右のショットなんて本番に合わせて牽引してもらっているわけですからね。
「適切な要請」によってこのドラマを象徴する美しいシーンが実現しました。

関連記事 : 2013年第2四半期のドラマ (2013-06-30)
(5)空飛ぶ広報室 (2013-05-17)

(4)空飛ぶ広報室 (2013-05-10)
(3)空飛ぶ広報室 (2013-05-05)
(2)空飛ぶ広報室 (2013-04-24)


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(2013-2)ドラマ期待度ランキング [ドラマプレビュー]

4月から放送開始となるテレビドラマの期待度ランキングです。

 ★★★ : 絶対観る / ★★ : 観る / ☆☆ : 観ない / ☆☆☆ : なかったことにしたい

Pre-ratingSlotTitleStationMain CastScriptChief-Dir.Co-Pro.
★★★日21空飛ぶ広報室TBS新垣結衣、綾野剛野木亜紀子土井裕泰
★★★月21ガリレオフジテレビ福山雅治、吉高由里子福田靖西坂瑞城
★★★日22小暮写眞館NHK(BS)神木隆之介、成海璃子国井桂熊坂出テレビマンU
★★水22雲の階段日本テレビ長谷川博己、稲森いずみ寺田敏雄猪俣隆一5年D組
★★日22真夜中のパン屋さんNHK(BS)滝沢秀明、土屋太鳳寺田敏雄大原拓NHK-E
★★金20妻は、くノ一NHK(BS)市川染五郎、瀧本美織金子成人山下智彦(松竹)
★★金23お天気お姉さんテレビ朝日武井咲、大倉忠義大石静片山修MMJ
★★木21ダブルス~二人の刑事テレビ朝日伊藤英明、坂口憲二尾崎将也塚本連平MMJ
★★水22家族ゲームフジテレビ桜井翔、神木隆之介武藤将吾佐藤祐市共同テレビ
☆☆月20確証 警視庁捜査3課TBS高橋克実、榮倉奈々森下直吉田健(ドリマックス)
☆☆土21島の先生NHK仲間由紀恵、井浦新荒井修子野田雄介 
☆☆金22TAKE FIVETBS唐沢寿明、松雪泰子藤井清美岡本伸吾
☆☆木21潜入探偵トカゲTBS松田翔太、松岡昌宏橋本裕志石井康晴 
☆☆土23間違われちゃった男フジテレビ古田新太、中丸雄一宅間孝行宅間孝行FILM
☆☆火22第二楽章NHK羽田美智子、板谷由夏金子ありさ岡田健
☆☆木22ラスト・シンデレラフジテレビ篠原涼子、藤木直人中谷まゆみ田中亮
☆☆火22幽かな彼女関西テレビ香取慎吾、杏古家和尚白木啓一郎
☆☆火21鴨、京都へ行くフジテレビ松下奈緒、椎名桔平森ハヤシ永山耕三東映
☆☆土21ご縁ハンターNHK観月ありさ後藤法子笠浦友愛
☆☆土2135歳の高校生日本テレビ米倉涼子山浦雅大佐久間紀佳(オフィスC)
※ タイトルは各ドラマの公式サイトにリンクしています。※ 作品名を一部省略して表記しているものがある。※ テレビ朝日の東映枠は割愛した。
※ 脚本担当者が複数いる作品については トップクレジットを表記している。※ 制作会社の空欄は局制作。カッコ内は制作協力。

『空飛ぶ広報室』(TBS)は、ジャニスカ的にはダントツで期待度1位なんですけど、私だけですかね。
キャストが魅力的なのはもちろん、TBSドラマ班の良心、土井裕泰プロデュース・演出ということで間違いはないでしょう。
それとなにより航空自衛隊を舞台にしたドラマだというところがツボ。
個人的な話になりますけど、私は中学生の頃、戦闘機のパイロットに憧れて、
自衛隊生徒(いわゆる高校生自衛官)を受験した過去がありまして、自衛隊に対する関心が人一倍強いです。
あの制服が毎週見られるだけでテンションあがります。それに加えて航空機や基地風景が見られればなお嬉しいですね。

『ガリレオ』(フジテレビ)は、前シリーズに続いて東野圭吾×福田靖ということで今さら期待外れということはなさそう。
演出スタッフはフジテレビのエース級お二人で、下手なクオリティになるとは考えにくいし、
シリーズに新風を吹き込むのが明朗快活な吉高由里子ちゃんなら、あまり深く考えずに見られる楽しいドラマになりそうです。
より頭や感性が要求されるのは6月29日公開の映画『真夏の方程式』(西谷弘監督)の方でしょう。

『小暮写眞館』(NHK)は、すでに第1回が放送されています。
軽いタッチの明るいヒューマンドラマなので、家族そろってご覧いただきたい作品です。
注目の若手俳優お二人の競演ですし、熊坂出監督の演出も見どころが多そうです。
日曜日の16:00~再放送の予定がありますので、今からでも遅くありません(全4回)。

『雲の階段』(日本テレビ)は、ストーリー的なものにはあまり関心がないのですが、
『鈴木先生』以来の長谷川博己さん主演ドラマということになれば、外すわけにはいかないでしょう。
以下はほぼ脚本家の名前で選びました。『確証』(TBS)、『島の先生』(NHK)まで観る可能性があります。
それと深夜ドラマでは、園子温監督、染谷将太主演の『みんな!エスパーだよ!』(テレビ東京)に注目しています。

引き続き視聴したドラマの感想はツイッターで表明していく予定です。
できるだけ満遍なく、さらにリアルタイムを目指したいところですが、作品数が多いとどうしても押せ押せになってしまいます。
今クールもドラマの感想を皆様と共有できたらうれしく思います。よろしくお願いします。


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