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2013年第2四半期のドラマ [ドラマレビュー]

TermTitleKey StationCastScriptC.D.RatingMy Rating
2確証~警視庁捜査3課TBS高橋克実、榮倉奈々森下直吉田健9.90%★★★☆☆
ガリレオフジテレビ福山雅治、吉高由里子福田靖西坂瑞城19.92%☆☆☆☆
雲の階段日本テレビ長谷川博己、稲森いずみ寺田敏雄猪股隆一9.25%★★★☆☆
家族ゲームフジテレビ櫻井翔、神木隆之介武藤将吾佐藤祐市13.00%★★☆☆☆
妻は、くノ一NHK(BS)市川染五郎、瀧本美織金子成人山下智彦-★★★☆☆
みんな!エスパーだよ!テレビ東京染谷将太、真野恵里菜園子温園子温2.76%☆☆☆☆
島の先生NHK仲間由紀恵荒井修子 野田雄介6.10%★★★★
天使はモップを持ってNHK(BS)北乃きい末安正子坂梨公紀-★★☆☆☆
お父さんは二度死ぬNHK(BS)南沢奈央、遠藤憲一秦建日子藤井裕也-★★☆☆☆
空飛ぶ広報室TBS新垣結衣、綾野剛野木亜紀子土井裕泰12.65%★★★★★
小暮写眞館NHK(BS)神木隆之介、成海璃子国井桂熊坂出-★★★★
真夜中のパン屋さんNHK(BS)滝沢秀明、土屋太鳳寺田敏雄大原拓-★★★★
 ※ 脚本担当者が複数いる作品については、トップクレジットを表記している。※ 視聴率は全話の加重平均(ビデオリサーチ社、関東地区)。

【 総評 】 今クールは『空飛ぶ広報室』の一人勝ち。ストーリーも演出も出色のクオリティで、愛すべき、愛されるべきドラマがここに誕生しました。それに比べてフジテレビの2本の出来はちょっとマズイですなぁ。フジテレビはついにドラマまでもが凋落か。

ジャニスカ的最優秀作品賞
  空飛ぶ広報室
(TBS)
 
 <優秀作品賞>
『真夜中のパン屋さん』
(NHK=NHKエンタープライズ)
『小暮写眞館』
(NHK=テレビマンユニオン)
 

【 作品 】 『空飛ぶ広報室』の完成度は飛びぬけていました。クオリティと私の嗜好がここまで完璧に一致したドラマは『流れ星』(2010年 フジテレビ)以来でしょうか。あえてあまり難しい言葉を使わずに表現すると、リカと空井の関係に毎回ドキドキさせられました。ここ数年では一番好きなテレビドラマです。最近のフジテレビのドラマには感じられなくなった「プロデュース力」のようなものを久々に強く感じたドラマでもあります。作り手のものづくりに対する高いレベルの意識とでも言えばいいでしょうか。生身の人を描くというテーマに対しても時事ネタに対しても真摯な表現を模索したことが伝わってきたし、それでいて広報室の飲み会のシーンの雰囲気や単回出演の脇役のキャスティングなどには遊び心も感じられました。

ジャニスカ的最優秀監督賞
 土井裕泰・山室大輔・福田亮介
(TBS/『空飛ぶ広報室』)
 
 <優秀監督賞>
大原拓・榎戸崇泰
(NHK/『真夜中のパン屋さん』)
 

【 演出 】 ベテラン監督が他の追随を許さず、貫禄の受賞です。第1・5・8・最終回の演出が特に素晴らしく、やはりいずれも土井監督の担当回でした。その中でも第8話のラスト、「2秒」の演出が大好きです。スローモーションとリフレインの使い方がとても上手で、前触れを見せつつもあの唐突感を演出するテクニックは本当に素晴らしいです。

ジャニスカ的最優秀脚本賞
 野木亜紀子
(『空飛ぶ広報室』)
 
 <優秀脚本賞>
荒井修子
(『島の先生』)
 

【 脚本 】 脚本賞では原作のある作品は一枚評価を落とすというのが通例なのですが、それを加味しても『空飛ぶ広報室』の脚本の出来はケチのつけようがなかったように思います。主人公はもちろん小さな脇役に至るまで、的確で魅力的な人物造形はキャラクターへの愛情を感じさせるものがありました。エレメントに代表される自衛隊用語の生かし方も光りました。

ジャニスカ的最優秀主演男優賞 ジャニスカ的最優秀助演男優賞
長谷川博己
(『雲の階段』)
 綾野剛
(『空飛ぶ広報室』)
<優秀主演男優賞>
高橋克実
(『確証~警視庁捜査3課』)
 <優秀助演男優賞>
柴田恭兵
(『空飛ぶ広報室』)
大友康平
(『雲の階段』)

【 男優 】 『雲の階段』の長谷川博己さんは純粋に芝居が上手いということもあるし、常に緻密な役作りの成果が垣間見られて拝見していて飽きることがありません。確かな外科医の所作もさることながら、目の動きや表情だけで気持ちの揺れを表現するオペシーンのお芝居はいつも圧巻でした。長谷川さんは2011年には『鈴木先生』で年間の主演男優賞を受賞しています。『確証~警視庁捜査3課』の高橋克実さんもあまり誰も言っていないので大きな声で言いますけど、お芝居が上手ですよ。昨季の『メイドインジャパン』でも少し触れたように役の中にある「情」を醸し出すお芝居が特に巧い。放送枠の特性から言っても本作がシリーズ化される可能性は小さくないと思います。

『空飛ぶ広報室』で綾野剛くんが作り上げた空井大祐は本当に魅力的でしたねぇ。序盤の夢破れた痛々しい姿も新しい何かになるべく奮闘する姿もとても愛おしいものがありました。クセのある役からさわやかな役までいろいろな顔を見せてくれる素晴らしい俳優さんです。昨年の『クレオパトラな女たち』以来となる2度目の受賞となります。こちらも同じく『空飛ぶ広報室』柴田恭兵さんは、「助演」という意味では圧倒的な存在感で、若い二人の俳優を見事に引き立ててくれました。尊敬され、愛される上司像を提示してくれたことによって時に和み、時に引き締まり、物語の流れにうまく緩急が生まれました。『雲の階段』の大友康平さんは主人公を追い込み、無免許医師に仕立てるという大変重要な役どころでした。元来不安定な物語の大前提に説得力を持たせたのは大友康平さんの熱量のあるお芝居だったような気がしています。

ジャニスカ的最優秀主演女優賞 ジャニスカ的最優秀助演女優賞
新垣結衣
(『空飛ぶ広報室』)
 稲森いずみ
(『雲の階段』)
<優秀主演女優賞>
榮倉奈々
(『確証~警視庁捜査3課』)
 <優秀主演女優賞>
(なし)

【 女優 】 『空飛ぶ広報室』の新垣結衣ちゃんは、初主演となった『全開ガール』の時はどちらかと言えば彼女の奮闘に敬意を表したところがありましたが、今回は主演という気負いのようなものを意識させなかったし、堂々の受賞と言ってよいでしょう。『リーガル・ハイ』以前と以降では彼女の印象はかなり変わりました。いい具合に力が抜けて無理のない自然な表情のパターンが格段に増えた印象です。それとけっこう昔から彼女のことを見ていますけど、今がガッキー史上一番美しいんじゃないですかね。『確証~警視庁捜査3課』の榮倉奈々ちゃんは同時期に映画『図書館戦争』も公開されて、アクションもできる女優さんだということが印象付けられました。自分らしさを大事にして奮闘する等身大の女の子の役がよく似合う女優さんです。

『八重の桜』の照姫様でも遺憾なく発揮されている美しさや品の良さは稲森いずみさんがもともと持っている大きな武器で、それに加えて、『雲の階段』では女性らしい壊れやすさや危うさをはらんだ繊細なお芝居を見せてくれました。女性の共感を喚起するようなお芝居だったのではないでしょうか。

ジャニスカ的最優秀音楽賞 ジャニスカ的最優秀主題歌賞
本多俊之
(『家族ゲーム』)
"遊戯"(「家族ゲーム」オリジナルサウンドトラック)
 安室奈美恵/Contrail
(『空飛ぶ広報室』)
"Contrail"(Yabisiさんによるカバー)

【 音楽 】 今クールより音楽賞を新設しました。物語の世界観を演出するにあたって音楽が最も効果的に貢献していたのは『家族ゲーム』です。オープニングタイトルでも毎回使用されていたサックスの独奏で始まる「遊戯」という曲が何と言っても強烈な印象を残しました。旋律を綱渡りしているかのようなサックスの音色が崩壊していく不安定な家族の様子にうまくマッチしていたと思います。主題歌は本編で使用されているかどうかを重要なポイントとしていて、この基準にはっきりと当てはまるのは『確証~警視庁捜査3課』と『雲の階段』、『空飛ぶ広報室』しかありませんでした。この中でも『空飛ぶ広報室』の「Contrail」は希望や予感を想起させるイントロが効果的にストーリーを盛り上げたし、バリエーションも豊富でエンディングのみならず劇中曲としても何度も使用されていました。それに曲名がいいですよね。詞はサビの押韻が耳に心地よく、何度も繰り返し聴いてしまいます。

関連記事 : (2013-2)ドラマ期待度ランキング
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怪しい探麺隊

「空飛ぶ広報室」は私もこのクールで一番面白かったと思います。
それと比較して、ガリレオは今回はトリック、謎に無理がある感の漂うものが多く、前シリーズと比較すると、ちょっと及んでいない感じがありました。
上で触れられていませんが、「幽かな彼女」はあまり期待せず観はじめたんですが、結構面白かったです。あと、潜入探偵トカゲも。もっとも、このトカゲは設定に無理があるところに目を瞑って、かつ、終盤の「裏切り者は実は…」のところが見え見えな感じにちょっと難を感じましたが、出ている役者さんたちが面白くて観ちゃいましたね。
TAKE FIVEは初回の途中で観るのが嫌になっちゃって以降観てません。 何でだろ..... 
by 怪しい探麺隊 (2013-06-30 23:26) 

ジャニスカ

いつもnice!ありがとうございます!
『ガリレオ』は本当にどうしちゃったんでしょうねぇ。
東野圭吾がこんなに雑な仕事をするとは思えないし、
脚本を担当した福田靖さんも大河ドラマを書くほどの実績のある方ですから、
私はスタッフが表現すべきものの優先順位を過った結果ではないかと考えています。
トリックというミステリーの根幹を蔑ろにしてキャラクター描写に力点を置きすぎたのではないかと。
今シリーズは助手の栗林さんの露出が極端に多くなかったですか?
いっけいさんのお芝居は確かに楽しかったですけど、それだけのことですから。
その分だけトリックや犯人の動機付け、人間的背景が希薄になってしまったような気がします。
でも実は『真夏の方程式』に対する期待感は失っていません。
西谷弘監督ってフジテレビのディレクターの中では一人だけカラーが異なるのは間違いなく、
単純にテレビドラマの延長線ということはまずありえないと思うんです。
そのことは「容疑者Xの献身」でも証明されていますし、
東野圭吾原作のポテンシャルをを確実に炸裂させてくれそうです。
ただ、キャストやメイキングなどを観る限り「容疑者Xの献身」の出来は超えないと見ています。

by ジャニスカ (2013-07-01 00:24) 

BBQ

ジャニスカさん。はじめまして。

空飛ぶ広報室の記事を探してたどり着きました。1-5のレビューは、とても素晴らしい分析で、見直す際のヒントを頂きました。特に、「立場」というキーワードがドラマを一層深く楽しむ要素になりました。ありがとうございます。

新垣結衣さんについて、これまで十六茶のCMしかいいと感じたことは無かったんですが、本ドラマでは素敵な顔をたくさん見せてもらいました。特に10話の坂手カメラマンからブルーインパルス特番を聞かされた時の顔が何ともいえず最高です。この顔が印象深く残ったから、鷺坂室長の送別会での柚木の「稲葉がどんな気持ちで編集したかと思うと…。」というセリフがグッときました。

これからも、素晴らしいレビューを楽しみにしています。

by BBQ (2013-07-03 08:38) 

ジャニスカ

BBQさん、どうもはじめまして。ご来訪&コメントありがとうございます。。。
私のレビューが「空飛ぶ広報室」をより深く楽しむのにお役に立てたとすれば本当に嬉しいことです。
レビューが5話までになってしまって申し訳ありませんでした。
実は本編をまだ一度しか見ていない状態でして、見直すことができたら完成させたいんですけどね。

「立場」って切ないですよねぇ。私はリカと空井の立場上の線引きに「YAWARA!」という漫画・アニメの柔ちゃんと松田記者の関係を思い出して第3回のレビューを書きました。お互いに好きなのに、いや好きだからこそ超えられない一線・・・みたいな。だからけっこう古典的な手法なんですよね。

新垣結衣ちゃんのお芝居について私が言いたかったのはまさにそういうことなんです。
ひとつひとつの表情にちゃんと意味があって、それらの表情は彼女の女優としての計算の上に表現されている。もちろんディレクターの演出もあるでしょうけど、最終的に我々の心に訴えられるかが女優さんの実力ということになります。

レビューは気まぐれで申し訳ないですが、よかったらまたお立ち寄りください。。。

by ジャニスカ (2013-07-03 23:44) 

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