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2012年第4四半期のドラマ [ドラマレビュー]

2012年の第4クール、私が最後まで視聴したドラマの一覧と評価です。
『結婚しない』(フジテレビ)と『TOKYOコントロール』(フジテレビ)は途中で観るのをやめました。
作り手の底の浅さが見えたのと、どこかで見たようなエピソードの羅列でしかなかったからです。
『ゴーイングマイホーム』(関西テレビ)がすごすぎて、そんなものに3ヶ月も付き合うのがバカらしくなったということもあります。

TermTitleKey StationCastScriptC.D.RatingOwn Rating
4遅咲きのヒマワリフジテレビ生田斗真、真木よう子橋部敦子石川淳一9.25%★★★☆☆
ゴーイング マイ ホーム関西テレビ阿部寛、山口智子是枝裕和是枝裕和7.89%★★★★★
恋するハエ女NHKミムラ、筧利夫大島里美福井充広4.13%★★★☆☆
猿飛三世NHK(BS)伊藤淳史、水川あさみ金子成人石塚嘉-★★★☆☆
償いNHK(BS)谷原章介旺季志ずか源孝志-★★★☆☆
高校入試フジテレビ長澤まさみ湊かなえ星護6.89%★★★★★
そこをなんとかNHK(BS)本仮屋ユイカ今井雅子片岡敬司-★★★★
ヒトリシズカWOWOW夏帆青島武平山秀幸-★★★★★
 ※ タイトルを一部省略して表記している作品がある。 ※ 脚本担当者が複数いる作品については、トップクレジットを表記した。
※ 視聴率は全話の加重平均値(ビデオリサーチ社、関東地区)。

ジャニスカ的最優秀作品賞
 『ゴーイング マイ ホーム』
(関西テレビ=テレビマンユニオン)
 
 <優秀作品賞>
『ヒトリシズカ』
(WOWOW=日活)
 

【 作品 】 視聴した人の絶対数が少ないらしいので、広く共感は得られないのかもしれませんが、『ゴーイング マイ ホーム』(関西テレビ=テレビマンユニオン)は万人の心に響くテーマ設定と他作品を圧倒するテーマ表現で本年を代表するドラマとなりました。昨年の『鈴木先生』(テレビ東京=アスミック・エース)とまったく同じ現象ですね。来年は主要なテレビ賞受賞のニュースが次々と飛び込んでくることでしょう。『ヒトリシズカ』(WOWOW=日活)は、こちらも観た方は多くないかもしれませんが、ほとんど映画と同等のクオリティでした。映画のスタッフが手がけているので当然なんですけど、なんとも贅沢なドラマでした。単純にストーリーの面白さということで言えば、『ゴーイングマイホーム』を凌駕していたかもしれません。次点は『高校入試』(フジテレビ=共同テレビ)です。実は湊かなえさんの作品を立て続けに見すぎて、物語の結末にあまり驚かなくなっている自分がいます。仮にこれが湊かなえさんの処女作で、先入観がなかったとしたら大絶賛だったかもしれません。

ジャニスカ的最優秀脚本賞
 是枝裕和
(『ゴーイング マイ ホーム』)
 
 <優秀脚本賞>
湊かなえ
(『高校入試』)
 

【 脚本 】 『ゴーイング マイ ホーム』の脚本については、改めて当該レビューをお読みいただきたいのですが、何度も申しますように、まずテーマ設定が本当に素晴らしいですよね。クーナというモチーフの存在が抽象的なテーマに「実体」を与えていた点も並みの発想ではありません。主人公の夢の中にクーナを登場させてしまうというのもすごい作劇法だと思います。それと何気ない日常会話によって巧みに進行するストーリーと、その日常会話の中に、内容はもちろん、語尾や語感、言い回しなどを通じてあらゆる人間関係を織り込んでいる点もレベルの高い脚本でした。主人公と姉の口げんかには毎回笑わせてもらいました。第1話のモンブランのくだりが大好きなんだよなぁ。『高校入試』の脚本もハイレベルでした。ミステリーの要素が視聴者を最後まで引きつけたし、犯人探しの中で次第に高校入試という仕組みに対する問題提起が明らかになっていく点もとてもよくできていました。それとこちらも台詞回しが秀逸でした。本作は最初から最後まで「説明」で成立しているといってもよい純台詞劇なんだけれども、ほとんど混乱することがなかったのは特筆すべきことだと思います。私は一つ一つの台詞が登場人物の実感としての説明になっているからだと分析しているのですが、実のところまだよくわかっていません。脚本家としての湊かなえさんはテレビドラマの常識にかからない表現力を発揮してくれました。

ジャニスカ的最優秀監督賞
 是枝裕和
(『ゴーイング マイ ホーム』)
 
 <優秀監督賞>
平山秀幸
(『ヒトリシズカ』)
 

【 演出 】 『ゴーイングマイホーム』の演出は、一言では表せないぐらい複雑な意図が介在していて、真正面から論じようとすると大変な労力と時間を要することになるので、今回は楽をさせていただいて一点だけ触れておきたいと思います。是枝演出でもっとも特徴的だったのは、テレビドラマではタブーとも言える「間」の表現を重視した点ではないでしょうか。これは映画では当たり前のように用いられている演出手法なのですが、「わかりやすいテレビドラマ」が大好物の人たちにはこの「間」がなんとも馴染めなかったみたいです。本作の第1話は2時間の拡大版だったのですが、詰め込こもうと思えば1時間にできる内容だったと思います。しかしそれでは何の意味もなくなってしまうということは、最後までご覧になられた方にはよくお分かりいただけたと思います。放送時にもつぶやいたのですが、このドラマはそこにある空気感によってあらゆる人間関係を定義しようとしていたんだと思います。あの「間」が目に見えないものを映しているということに気がついた人だけが、このドラマを最後まで観たということになるのでしょう。今クールは映画監督二人にやられてしまったということにテレビのディレクターは奮起しなければなりません。『高校入試』の星護監督が一矢報いてくれたのが救いでした。

ジャニスカ的最優秀主演男優賞 ジャニスカ的最優秀助演男優賞
阿部寛
(『ゴーイング マイ ホーム』)
 夏八木勲
(『ゴーイング マイ ホーム』)
<優秀主演男優賞>
伊藤淳史
(『猿飛三世』)
 <優秀助演男優賞>
西田敏行
(『ゴーイング マイ ホーム』)

【 男優 】 俳優賞も当然のことながら、『ゴーイングマイホーム』の一人勝ちということになります。今年は映画でもたくさん拝見しましたけど、阿部寛さんの安定感というのは本当にすごいですね。作品によっていろいろな顔を見せくれる俳優さんですが、特に「結婚できない男」に代表される世間ずれしている役で本領を発揮します。時代と価値観のズレをコミカルに描いた「テルマエ・ロマエ」という映画はまさに阿部さんのそういう部分をうまく引き出した作品なのではないでしょうか。というわけで『ゴーイングマイホーム』のCMクリエイターという役柄も絶妙な職業設定だったなと感じています。お菓子のCMに高田純次を起用してあのCFを生み出してしまう発想は、凡人には辿り着けませんからね。夏八木勲さんと西田敏行さんの名優お二人は、やっぱり素敵でした。夏八木さんは最後の台詞「くだらないな」が本当に心に染みました。西田敏行さんはクーナの足跡をつけた後におまわりさんに対して屁理屈をこねているシーンが西田さんらしくてとても印象に残っています。『猿飛三世』(NHK)の伊藤淳史くんはアクションもできるとなれば、ますます珍しいタイプの俳優さんということになります。

ジャニスカ的最優秀主演女優賞 ジャニスカ的最優秀助演女優賞
夏帆
(『ヒトリシズカ』)
 宮﨑あおい
(『ゴーイング マイ ホーム』)
<優秀主演女優賞>
長澤まさみ
(『高校入試』)
本仮屋ユイカ
(『そこをなんとか』)
  <優秀助演女優賞>
山口智子
(『ゴーイング マイ ホーム』)
蒔田彩珠
(『ゴーイング マイ ホーム』)

【 女優 】 『ヒトリシズカ』の夏帆ちゃんは飛び抜けて素晴らしかった。本作の彼女は徹底的に無表情を貫いていて、何を考えているのか皆目見当がつかない不気味さを見事に表現していました。実の父親を射殺するときですらその表情を変えることはないわけです。でも最終回だけは一転してその無表情の中に表情が垣間見えるんですね。その瞬間の感動は、表情と感情の乖離が大きいだけに未だかつて味わったことがないような性質のものとして襲ってきました。映画的な表現力を兼ね備えた女優さんだと思うので、今度はスクリーンで拝見したいです。長澤まさみちゃん(『高校入試』)と本仮屋ユイカちゃん(『そこをなんとか』)は似たタイプの女優さんだと思います。それぞれに新境地だったと思うのですが、いつのまにかコメディからシリアスまで何でもできる女優さんになっていたようです。二人とも台詞に役柄の気持ちを乗せるのがとても上手でした。宮﨑あおいちゃん(『ゴーイングマイホーム』)がテレビドラマに出てくるともはやほぼこういうことになると思います。あおいちゃんの場合、あの若さですでに「上手い」を通り越していて、存在そのものが何かを語るレベルに到達しているんですよね。特に第8話における女心を垣間見せる一連の感情表現が素晴らしかったです。山口智子さん(『ゴーイングマイホーム』)は最初から是枝作品の世界観に違和感なく溶け込んでいました。私は「もう誰も愛せない」で吉田栄作さんに足を舐めさせていた山口智子さんの姿に衝撃を受けた世代なので^^;、久しぶりにお芝居を拝見できてうれしかったです。娘役を演じた蒔田彩珠ちゃんのお芝居は、ほとんど是枝演出の賜物ではあるのですが、それにしても近年の子役の中では、単に「かわいい」などという表面的な評価とは別次元で際立った存在感を示していたし、テーマ表現にも大きく貢献していました。

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