(11)天気予報の恋人 [ドラマレビュー]
2000年にフジテレビで放送された『天気予報の恋人』を毎週お届けしています。
今週は第11話です。動画は原則1週間の掲載となります。
(7/1まで。本編動画の掲載は終了しました。) |
『 天気予報の恋人 』
Vol.11
( 2000年 フジテレビ=共同テレビ 全12回 )
今回は、矢野、早知、祥子の3人がそれぞれの「答え」を見出すまでを描いています。
矢野は当然、誰とジュネーブへ行きたいのか、すなわちこれからの人生を誰と一緒に生きていくかを決めることになります。
早知はというと、前回まででも矢野と自分は釣り合わないという結論に達しており、達也を独りで育てていくことを決心します。
そんな中、今回もっとも重要なのは祥子の「答え」がはっきりしたことで、
この「答え」が物語の後味を清々しいものに仕立てますので、心に留めておいていただきたいと思います。
祥子という女の子は、最初から矢野との恋をどうにかしたいという気持ちは希薄で、
その気持ちは彼女の人生において向き合ってきたすべての恋とまったく同じだったと考えられます。
祥子は今回、そんな自分を初めて変えてみたいと思いました。果たしてどうしてそう思えるようになったのでしょうか。
これは早知と共通の心情でもありますが、祥子は矢野との恋を通じて嘘によって「自分」を隠さなければならない苦しさを
痛感しました。だからこそ次の恋では胸を張って、「これが自分です!」と言いたいと思えるようになったのです。
彼女はそのために叶わぬ恋だと知りながら、矢野に堂々と自分の気持ちを伝えます。生まれて初めての告白です。
さらに祥子は、唯川幸は自分だということをリスナーに言いたいと川村に提案するのです。
このドラマはラブストーリーであると同時にひとりの女性の成長物語の側面も存在していて、
この方面を担っていたのが祥子だということを確認しておきたいと思います。
もうひとつ、今回のストーリー上ぜひ注目していただきたいのが、
前回矢野の手に渡った早知が書いた手紙の取り扱い方で、すなわち意味深なラストカットがもたらす余韻です。
実は、今回こうやって改めて観直すまでは、矢野が早知の手紙を燃やすという行為の意味も、
燃え残った手紙を見せるラストカットの意味もいまひとつ理解していなかったところがあります。
矢野が早知の手紙を燃やしたのはおそらく、嘘で成立していた早知と祥子との関係をまさに水に流して、
目の前にいるありのままの二人とまっすぐに向き合おうという決意の表れだと思います。
実際このあと矢野は二人を呼び出して、自分の正直な気持ちを伝えることになります。
しかし、矢野のまっすぐな告白をもってしても、早知の気持ちを翻すまでには至りませんでした。
このシーンの直後に映し出されるのが矢野の暗い部屋で、カメラは流しで燃え残った手紙にゆっくりと寄っていくのです。
ここでフェードアウトしていくのですが、このラストカットが意味するものとは果たして何なのでしょうか?
この手紙の内容は早知による「嘘」の告白なので、これを燃やすということは前述のとおり、
矢野にとっては嘘を水に流すという意味合いがあったと考えられます。
ここからは私の解釈だということを断っておかなければならないなのですが、
このカットは、燃やしたはずの「嘘の中にも真実はあった」ということを示唆しているのではないでしょうか。
つまり、矢野が唯川幸だと思っていた人は虚構でもなんでもなく、原田早知であることに変わりはないということです。
矢野が本当の意味での幸せを掴み取るためには、このことに気が付かなければなりません。
過去を清算するのではなく、もう一度、原田早知と過ごした日々に向き合う・・・そうすれば自ずと答えは見えてくるのです。
これは最終回から逆算して導き出した解釈なので、
初見でこのカットの意味を正確に理解するのはちょっと至難の業かなとも思っているのですが、
ひとつ言えることは、「まだ終わりではない」ということを視聴者に意識させるには十分だということです。
手紙の一部が燃え残ったことによって矢野が為すべきことはまだ残っているということを表現しようとしているのだと思います。
このあたりの表現はどちらかといえば「映画的」なものを感じさせます。
さて、今回の演出はもうお馴染み、フジテレビの澤田鎌作監督なので、演出にも触れないわけにはいきません。
今回もタイトルイン直前のスローモーションの使い方とか、田口が郁子の素顔を知る複数のシーンのコミカルな演出など、
随所で非凡な才能を見せてくれています。また前々回用いられていた黒味へのフェードアウトは例外的と申し上げたのですが、
今回もラストカットを始めとして要所で用いられていました。細かいところですが、常にどの技術を選択するのがベストなのかを
突き詰めて考えようとしているのが伝わってきて、こういう細部へのこだわりの存在はいいディレクターの条件だと思います。
特に取り上げておきたいのがやっぱりラストシーンでして、
私は『天気予報の恋人』といえば、まず思い出すのがこのシーンです。
ドラマのロケ地としてはお馴染みの駒沢オリンピック公園ですが、
このドラマではやはり雨の演出が素晴らしくて見たことがない風景に仕上がっています。
澤田監督はこれまでどちらかといえばテクニック重視の演出が目立っていた印象ですが、
このシーンでは一転して映画演出のような印象的で美しい絵を切り取ることに成功しています。
1枚目は早知と祥子が待ち合わせをするシーンで、早知が上手からフレームインしてから
二人が会話をして下手にフレームアウトするまでを1カットで捉えています。
このシーンは広い絵で「雨と傘」を印象付けていると同時に、早知のパンツスーツと祥子のスカートの対比を見せることによって、
二人がそれまでの自分と決別して、「真の自分らしさ」を求めて新しい道に踏み出したことを表現しています。
また、この雨がどこか好ましいものに見えるところに、このドラマが積み重ねてきたものを感じてしまいます。
2枚目は早知が矢野のプロポーズをはっきりと断った直後のカットで、
このタイミングで晴れ間を覗かせるところがこのドラマならではの逆説的な表現だと思います。
雨が好きだと語った早知の気持ちを矢野が翻すことができなかったことをこの晴れ間で表現しようとしているんだと思います。
この絵を撮るために相当に粘ったことを想像させる澤田監督渾身のベストショットと言っていいと思います。
このシーンは最終回の冒頭に繋がっていきますので、引き続きご注目ください。
来週はいよいよ最終回です。矢野が「答え」に辿り着けるのかが焦点です。
今回のラストシーンと対となる最終回のラストをお楽しみに!
矢野克彦(40) - 佐藤浩市
引用元:Wikipedia(というか私が書いた) |
関連記事 : (12)天気予報の恋人 (2012-07-04)
(10)天気予報の恋人 (2012-06-16)
(9)天気予報の恋人 (2012-06-10)
(8)天気予報の恋人 (2012-06-03)
(7)天気予報の恋人 (2012-05-26)
(6)天気予報の恋人 (2012-05-19)
(5)天気予報の恋人 (2012-05-12)
(4)天気予報の恋人 (2012-05-05)
(3)天気予報の恋人 (2012-04-28)
(2)天気予報の恋人 (2012-04-21)
(1)天気予報の恋人 (2012-04-14)
ジャニスカさん、お邪魔します^^。
実はこちらにお邪魔する前に、ビデオVol.4をすべて見てしまいました!
気になって気になって仕方なくて・・・笑
最終話においての映像上の注意点もご丁寧に教えてくださったので、
ここはもう終わりまで突っ走ろう!と。
そんなに意気込むことではないんですけど。。。ね^^;
あ~こうなったの♪(拍手!)
ラスト。まずはスッキリ。
ただ、やはりこのドラマを思い切り堪能するには、ジャニスカさんの解説が必要不可欠!!!
手紙が燃えきらずに残っていたことを映し出すあたりは、もうやられましたね。。。
ジャニスカさんの読みは、ボキャブラリーの足りない私の感想をそのまま代弁してくださっているようでもう言うことありません!(上から目線でごめんなさい。。)
本当に楽しかったです!
「天気予報の恋人」最高♪
ジャニスカさん!ありがとうございました!!!
※駒沢オリンピック公園♪幼いころ、よく遊んでいた場所。なつかしいー!
by blue bird (2012-06-30 11:09)
blue birdさん、こんにちは。
3ヶ月間お付き合い頂きありがとうございました!
いやー、そこは意気込むところで間違ってないですよ。突っ走って正解です(^^)。
遅くなりましたが、最終回のレビューをアップしましたので、ぜひご覧くださいませ!
私は当時、駒沢オリンピック公園には行ったことがなくて、
このドラマを観た後、すぐにロケハンに行きました。
学生時代はロケ地をめぐって都内を歩き回っていたのを思い出します(^^)。
ドラマの楽しみ方っていろいろありますよね。。。
by ジャニスカ (2012-07-05 22:23)