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日輪の遺産 [映画レビュー]

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(C)2011 「日輪の遺産」製作委員会

『 日輪の遺産 』
(2011年 角川映画 134分)
監督:佐々部清 脚本:青島武 出演:堺雅人、中村獅童、福士誠治、ユースケ・サンタマリア、八千草薫
          Official Wikipedia / kinejun.jp           
 

今回はレビューと言うよりも「感想」とお考えください。
佐々部清監督のお人柄を少しでも知ることができた私としては、あまり細かいことは申したくないという思いがあります。
私は、佐々部監督の作品の中では『出口のない海』(2006年)だけはあまり評価していません。
その点から本作の演出についての私の感慨はお察しください。

本作はおそらく原作を読んだ上で観た人とまっさらな状態で観た人とではまったく感じ方が異なるような気がしています。
私は、原作を読み込んでから映画館に足を運んだ口なのですが、本編が始まって少女たちが登場した瞬間から
早くも感極まってしまいました。それは少女たちが辿ることになる驚愕の結末を知っているからで、
こればかりは原作を読んでいない人にはわからない感覚だと思います。
逆に原作を読んでいない人がどう感じたのかは私にはわからないので、
あの結末をしっかりと理解できたか、また釈然としないものはないか、お聞きしてみたいところです。

著名な小説を映像化することの難しさはこれまでも言及したことがありますが、
映像作品で原作を超える表現を実現することは至難の業であり、本作にあってもどこまで原作の表現に近づき、
特に「終章」のインパクトをどうやって実現するかが重要な課題だったと思います。
私の感覚としては、少女たちの遺骸をごまかさずにしっかりと映像で見せてくれたところは賞賛すべきだと思っています。
さらに、守るように財宝を取り囲む少女たちが手をつないで横たわっている絵が訴えるメッセージは、
活字では想像できなかった性質を有しており、この点は大成功だったと言っていいでしょう。

このシーンで惜しむらくは、少女たちの遺骸を目の当たりにしたマッカーサーの怒りや動揺、
そして「諦念」に至るまでの過程をもう少し丁寧に表現して欲しかったようにも思います。
これはマッカーサーにとって戦後の日本において感じた唯一の敗北感だったはずだし、
また彼のリアクションは少女たちが成し遂げたことの意義の大きさを間接的に際立たせたことでしょう。
もっともマッカーサーの人物描写については、全体的に突っ込んでいない印象で、
ストーリーが散漫にならないように意図的に深く掘り下げなかったのかもしれません。
そう考えると映像化にあってはこの点もむしろファインプレーと言えます。

ただし、本作を評価するに当たっては、原作との比較ではなくて、
原作を読んでいない人たちがどう感じたかの方がより重要のような気がします。

 「みんなで鬼になって、この宝物を守ろう」

国の将来を思って「鬼になる」ことを主導したスーちゃん(土屋太鳳)とそれを素直に受け入れた少女たち、
さらには彼女たちを「引率」した野口先生(ユースケ・サンタマリア)の想いが何に由来するものなのか、
我々は深く思考しなければなりません。そしてその「魂」は必ずしもフィクションとは言い切れないことを忘れてはなりません。

総合評価 ★★★☆☆
 物語 ★★★★
 配役 ★★★★

 演出 ★★★☆☆
 映像 ★★★☆☆
 音楽 ★★★☆☆

関連記事 : Twitter 20110729 (2011-07-29)


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