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(10)鈴木先生 [ドラマレビュー]

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『 鈴木先生 』
最終回
( 2011年 テレビ東京=アスミック・エース 公式サイト
監督:河合勇人 脚本:古沢良太 出演:長谷川博己、臼田あさ美、土屋太鳳、田畑智子、富田靖子、でんでん

ここにまたひとつ傑作ドラマが誕生した、といったところでしょうか。

私はこれまでのレビューを通じて、本作が学園ドラマの既成概念を打ち破ったドラマであるということを一貫して強調し続けてきたのですが、前回のレビューに書いたことをちょっと恥ずかしく思っていて、それ自体がテレビドラマの既成概念に陥ってしまっていたものだったと反省しています。それは鈴木先生と対峙する足子先生(富田靖子)の「心の変革」が成し遂げられるはずだという先入観に立ってこのドラマの最終回を予測しようとしてしまった点で、彼女が山崎先生(山口智充)の二の舞になってしまったら、このドラマは何も描けていないことになるとまで書いてしまったことです。

ご覧いただいたように足子先生は山崎先生と同様に鈴木先生への対抗意識と嫉妬心が増幅され、最終的には精神が崩壊するというまったく同じ道を辿ってしまいました。このことは、実は第5話で描かれた小川蘇美(土屋太鳳)が抱えていた苦悩とその根源を同じくしていて、すなわち我々が社会生活を営む上で避けては通れない、人間社会が抱えている不条理からくるものなんだと思います。鈴木先生は新しい価値観に到達した生徒たちの姿を見て、そんな大人社会の不条理についての感慨に至ります。

  「他者を批判することで、自らを正当化する者のなんと多いことか・・・
 自分の意見を押し付けようと躍起になり、相容れない意見は相手の人格までも否定する者のなんと多いことか・・・」

鈴木先生が喫煙室で流した涙は、人間社会が作った不条理に抗うことができない徒労感とそんな愚かしい人間社会に対する失望感が入り混じったものだったと思います。鈴木先生と足子先生の考え方は永遠に相容れないものなのかもしれませんが、価値観が多様化している現代にあっては、そのこと自体は大した問題ではないのです。重要なのは、世の中には多くの価値観が存在するということを認めることであり、それが面倒で苦悩を伴うとしても、目を背けずに互いの価値観を共有することを真摯に模索することができれば、自ずと新しい道は開けてくるということです。樺山あきら(三浦透子)が言うように、このことは嫌いな人が多いというたったひとつの価値観で廃止されてしまった給食メニューを尊重しようとすることとまったく同じことなのです。

テレビドラマの最終回とは、ちりばめられた伏線をすべて回収し、すべてのエピソードにはっきりと決着をつけなければならない、というのはテレビドラマの制作手法としては当たり前の価値観であり、私は本作を既成概念を打ち破っていると表現しながら、最終回が既成の手法で作られるものだという思い込みをしてしまいました。私はこのドラマが描こうとしているテーマに近づくことを目指してきたにもかかわらず、一面的な価値観でしかこのドラマの結末を予想できなかったことを恥ずかしく思います。やはり頭では理解できていても、一般的に広く認知され出来上がっている価値観を疑い、まったく別の側面から物事を捉えようとする姿勢を保持するということは、とても困難な作業なのかもしれません。生徒たちが新しい価値観に到達し、新しい人間に生まれ変わる瞬間を目の当たりにしたあの感動を常に忘れたくないものです。我々大人はこのときの彼らの姿を心に焼き付けておかなければなりません。

  「麻美さん、つくづく思うよ。大人は子供を見くびっているって。
 新しい知識を得て、新しい考え方を身につける・・・それは新しい人間に生まれ変わるようなものだね。
 きっと彼らには世界が昨日までとはまったく違ったものに見えていることだろう。
 その瞬間を目の当たりにすることほど教師にとっての幸せはない」

私は生徒の「心の変革」が今まさに成し遂げられる瞬間を見つめる鈴木先生の目の潤いと輝きも同じぐらい忘れられません。このドラマはあの表情を切り取るために作り上げられてきたものだと言ってしまってもいいと思うし、長谷川博己さんはあの表情を生み出すためにここまで鈴木先生を演じてきたと言っても過言ではありません。我々は生徒が「心の変革」を迎えるその瞬間に本作の集大成と言ってもいいぐらいの素晴らしい鈴木先生の表情を目の当たりにしました。

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足子先生の一件で人間社会の不条理という現実に打ちのめされた鈴木先生が、たった今「心の変革」を成し遂げたばかりの生徒たちというもうひとつの現実に勇気付けられるというラストシーンは、本当に清々しいものでした。私は、観終わった余韻の中で生徒ひとりひとりの顔を思い浮かべてしまいました。今回描かれた生徒たちの議論を見ればわかるように、生徒ひとりひとりの顔がはっきりと思い出せるぐらいの繊細なキャラクター作りがなされていたのが本作なのです。私はこのラストシーンを観て、本作が先生と生徒が主役の正真正銘の学園ドラマであり、個々のキャラクターを手を抜くことなく適確に描き出すことに成功した正真正銘の人間ドラマだったことを確信しました。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

このドラマを総括してみたいのですが、ひとつはっきりしていることは、本作はテレビ東京だから製作することができたドラマだということです。本作のテーマおよび内容は、地上波で放送するテレビドラマとしては明らかにリスキーなものだし、実際、視聴率だけで評価すれば、広告料で成立するテレビ番組としては、その商品価値は最低ランクと言われても仕方がないところでしょう。大手民放ならば、絶対にこのリスクは取らないし、あえてリスクを取る理由もありません。

テレビ東京の山鹿達也プロデューサーによると、テレビ東京がプライムタイムにドラマ枠を新設するにあたっては、他局が作り上げている伝統のドラマ枠と同じ手法でドラマを作っても埋没してしまうだけだから、既成概念にとらわれない挑戦的なドラマを作っていこうという大前提があったそうです。言われてみれば『モリのアサガオ』にしても、『最上の命医』にしてもテーマそのものは挑戦的ではあったと思います。しかし、その表現手法だけを振り返れば、他局との差別化が図られていたとはとても言いがたいものでした。特に『最上の命医』は他局で濫造されている医療ドラマの焼き増しでしかなく、それこそ埋没してしまった印象です。とはいえ、この2作品はコンスタントに4%前後の数字を出しており、商品価値としては及第点だったとも言えるでしょう。ただし、テレビ東京が敢えて激戦枠である月曜22時にドラマ枠を新設した本来の目的は実現できなかったわけです。

私は挑戦的という意味では当初からこの『鈴木先生』こそが本命だったのではないかと思っていて、実際、本作はテレビドラマでは珍しい製作委員会方式を採用し、本放送後に有料でネット配信したり、早々にDVDの発売を告知したりと、低視聴率というリスクに対する備えは万全だったとも言えます。つまり、テレビ東京は本作をもって視聴率だけで評価される視聴率至上主義的な番組制作のあり方に一石を投じ、視聴率を元に計算されるスポンサー収入のみで成立する番組ではなく、そこにネット配信や派生商品に由来する収入を加味して評価される新しいテレビ番組のあり方を提示しようとしているのかもしれません。

それを現実的なものにするためには、視聴率は振るわないとしても、クオリティの高い作品を作るという前提が不可欠で、本作が少なくともその条件をクリアしているのは間違いありません。そして、その結果としてネット配信や書籍・DVDといった派生商品が売れるという状況を生み出さなければなりません。その意味では、私はこのドラマが映画化される可能性は高いと考えています。なぜなら、可能な限り派生商品を生み出すことでしか、本作の低視聴率は挽回できないからです。また、本作が挑戦的な作品だとすればそこまでやらなければ、挑戦は終わらないとも思います。映画界では挑戦的なアスミック・エースが製作に関与している以上、大前提として映画化という意向があってもおかしくないし、テレビ東京にはそのバックアップをする用意があると信じたいところです。

本作が示したように視聴率というものが必ずしも作品のクオリティを反映したものではないとしたら、クオリティを反映する新しい指標や価値基準が必要です。視聴率にこだわってクオリティがないがしろになってしまったらテレビの未来は明るくないからです。その基準とはつまり、派生商品の売り上げではないでしょうか。私としては本作については映画化までこぎつけていただいて、テレビ局が固く信じ続けてきた視聴率という価値観にとらわれない新しいテレビ番組のあり方を完成させていただきたいと思っています。視聴率というテレビ界では絶対的とも言える価値観を疑い、まったく別の側面からテレビ番組の存在価値を考えてみる・・・ここにも『鈴木先生』というドラマが表現しようとしてきたテーマが通じてくるような気がするのは、果たして偶然だろうか。テレビドラマは今まさに既成概念を打ち破る時期を迎えているような気がしています。本作の「成功」がその大きな契機となることを願っています。

(了)

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(2)鈴木先生 (2011-05-06)
(1)鈴木先生 (2011-04-29)

< 付記 >
テレビ東京の山鹿達也プロデューサーのインタビューです。
http://dogatch.jp/interview/tsukuruhito/index.html?bclid=p-int_no.59

<参考 : 緋桜山中2年A組 人物関係図>
http://www.tv-tokyo.co.jp/suzukisensei/special/book/book_img03.html 

<参考 : ネット局>
 ・ テレビ東京(関東広域圏)
 ・ テレビ北海道(北海道)
 ・ テレビ愛知(愛知県)
 ・ テレビ大阪(大阪府)
 ・ テレビせとうち(岡山県、香川県)
 ・ TVQ九州放送(福岡県)
 ・ 岐阜放送(岐阜県)
以上が同時ネット。以下は放送日時が異なる。
 ・ テレビ和歌山(和歌山県)※13日遅れ
 ・ テレビ熊本(熊本県)※15日遅れ
 ・ 新潟テレビ21(新潟県)※40日遅れ
 ・ BSジャパン(全国)※7月2日(土)22:00より放送開始。
http://www.tv-tokyo.co.jp/suzukisensei/onair/index.html


タグ:鈴木先生
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コメント 8

エダモコ

いつも楽しく拝見しております。
鈴木先生は近年稀にみる秀逸なドラマだったと思います。
TBSのJINに一番期待していたのですが、一度見始めると
鈴木先生の虜になってしまいました。
テーマは人間の本質を扱い、忙しさにかまけて疑問にさえ
感じなくなってしまっていることに対し再考する機会を
与えてくれたし、思考しなくなれば感性が鈍くなるというか
そういった思考する筋力の衰えに刺激を与え活性化させて
いただき、とても感謝しています。
何より、一人一人の人物に血が流れていることが感じられ、
生徒の成長を一緒に喜んだり、鈴木先生の苦悩を共有したり
擬似体験ができました。
再放送が始まりましたので、またディテールを楽しみたいと
思います。
by エダモコ (2011-07-11 00:21) 

ジャニスカ

エダモコさん、いつもご来訪ありがとうございます!
『鈴木先生』は本当に素晴らしいドラマでした。
本放送終了後は日に日にその思いを倍化させていて、
大げさかもしれませんが、私の中では「鈴木先生以前」と「鈴木先生以後」では
テレビドラマの見方が大いに変わってきているのを実感しつつあります。

ご存知のとおり、近年、テレビドラマの企画は頭打ちで、
『絶対零度』のように大して面白くもないのに続編が企画されてしまうのがテレビ業界の現実です。
私はそういう現状に失望感を通り越して、あきらめの境地に達しようとしていたところがあったのですが、
『鈴木先生』は私のそういう思いをすっきりと打破してくれました。
その気になれば、こんなに面白いドラマが作れるということが証明されてしまった以上、
テレビ東京以外の民放のドラマプロデューサーは、
性根を入れ替えてドラマ制作に臨んでもらわなければならないと思います。
私は『鈴木先生』のおかげでそのことを声高に言えるようになったような気がしています。

私も『JIN-仁-』は楽しみにしていたのですが、実は途中から観るのをやめました。
『鈴木先生』がすごすぎて、あまりにもチープなドラマに見えてしまったからです。
坂本龍馬が生きるも死ぬも、作り手のさじ加減一つじゃないですか。作り手がどちらを選択しようとも、
作り手にそれなりの技術があれば感動を生み出すことは難しくないのです。
『鈴木先生』を観てしまった人間には、そんな感動は安っぽいものに見えて仕方がありません。
本当の意味での感動というものは、『鈴木先生』が実現したように、
もっと人間の根源を揺さぶるものでなければならないと思います。
そういう感動こそが永遠に心に刻まれるんだと思います。
その場限りの感動になんかもう付き合いきれません。

正直言って、今クールの新ドラマはどれもひどいです。
「鈴木先生以前」ならそこまで気にならなかったかもしれないと思うと、
それこそ「新しい人間に生まれ変わったようなもの」です。
今クールで一番面白いドラマは『鈴木先生の再放送』になりそうです。皮肉をこめて。

『鈴木先生』映画化の機運をみんなで盛り上げていきましょう!
スタッフも奔走してくれているようですし、私の印象では現実味を帯びてきているような気がしています。
『鈴木先生』は視聴率は悪くても「大成功」のドラマだったという事実を作ってしまいましょう!

by ジャニスカ (2011-07-12 05:59) 

めい

ジャニスカさん、こんばんは。
「鈴木先生」とジャニスカさんのレビューでとても充実した3ヶ月間でした。

正直、私はすごい影響を受けました。
そもそも、私は混乱や失敗や争いが大の苦手。
ドラマ「鈴木先生」で次々起こるいろんな出来事にも、最初は「困る」という感じがまず優先し、ハラハラしていました。
でも最終回あの鈴木裁判で、安心してみている自分がいました。混乱も失敗も争いもあってこそ、心は成長し、関係は深まるんだって、思える自分がいました。
今、実生活でも、なんかそんな感じで行動している自分がいます。

私も『JIN-仁-』は、大好きなドラマでしたが、途中から色あせてしまいました。
by めい (2011-07-15 22:06) 

エダモコ

今日は鈴木先生、再放送ですね!!
という具合に熱は冷めるどころかウナギ上りです!!

おもしろくないのに「続編」しちゃうドラマは需給関係を無視した構図ですよね・・・
ドラマや歌謡曲、あらゆるものが浪費される時代にあって、伝えたいことを
伝えるために制作するという直球勝負のドラマがあるでしょうか?
と、ドラマ評論家でもないけれど、そんなことを思ってしまうほど鈴木先生の
与えた影響は大きいんです(笑)ジャニスカさんもそのようですね。

ドラマティックな日常とは、中学生のように心と体が嵐のごとく変化する時代の
日常と言い換えてもいいとさえ思ってしまいました。大人は中学生からすれば
均衡状態を保っており、日常を「何気ない」と形容してもいいかもしれないけど、
中学生には事情が異なることがわかります。
だから、あえて坂本龍馬のような政治的ヒーローを投入したり、難しい医療技術を
投入したりする必要がなく、「日常」だけでドラマ性があったのかもしれません。
当たり前の日常の中にこそ真理があり、ジャスニカさんが言及されていたように
日々哲学的思考の繰り返しなのかもしれません。これは大いなる発見でした。

鈴木先生を見て、ジャスニカさんのレビューを見て、の反芻が心地よく、再放送中の
今も引き続きレビューさせてください(笑)それと、長谷川博己さんはとてもタイプです。
銭湯で一日の疲れを流すあたりも、キュンキュンします☆
by エダモコ (2011-07-16 13:03) 

ジャニスカ

めいさん、こんばんは~。
私も日常の思考方法にかなりの影響を受けているようで、当たり前の事をまずは疑ってみるようになりました。
特に社会生活においては、「自分を信じ、他者を疑う」から
「自分を疑い、他者を信じてみる」に自然と変化していることに気が付く今日この頃です。

Twitter上で「鈴木先生」の台詞をツイートするアカウントを作成したんですけど、
台詞を活字に起こしてみて初めて気が付くことも多くて、まだまだドラマから学ぶことが多くあります。

「ひとつの価値観が、何者かによって有無を言わせぬ方法でつぶされること。また、ひとつの価値観が世の中のすべてを支配してしまうこと。オレはこれらを何よりも怖れているんだ」

これは第7話の鈴木先生の台詞なんですけど、改めて振り返るとすごいことを言ってますよね。
最後までドラマを見た今だからこそ深く理解できる台詞のひとつだと思います。
http://twitter.com/#!/BOTe97h0017
よかったらフォローしてみてください。

めいさんの「苦手」という感覚は私もよくわかります。というよりもめいさんに限らず、
混乱や争いを意識的にしろ無意識にしろ極力避けようとするのが人間社会だと思います。
実際ドラマでも鈴木裁判直前の職員会議では、
生徒と同じ目線で議論することを避けようとする意見が大勢を占めましたよね。
それでも鈴木先生はあえて生徒たちとの対等の議論を望み、
意見を戦わせることで生徒たちを新しい価値観に導きました。

ドラマ「鈴木先生」とは、自分が知らなかった価値観に到達する瞬間を魅力的に描いたドラマだと思います。
「人間の成長」ってこういうことだったんだということを教えてくれたドラマだと思います。
もう混乱も失敗も争いにも怖れずに立ち向かっていけそうですね。
そんなことを感じさせてくれるドラマに出会えたことを心から感謝したいです。

by ジャニスカ (2011-07-16 20:08) 

ジャニスカ

エダモコさん、こんばんは~。
私はここ最近『鈴木先生』の台詞を起こす作業をしていたんですけど、
改めてすごいドラマですね。ひとつとしてムダな台詞がありません。
私もこのドラマの本当の意味でのすごさを実感しつつあるといったところです。

おもしろくないドラマの続編は、実は「需給関係」という意味では成立しているんですよね。
結局テレビ局が取引しているのは広告代理店(スポンサー)であって視聴者ではないんです。
大失敗しないという意味では無難な続編の方がむしろスポンサーには売り込みやすいというわけです。
そういう考え方で作られているドラマが我々の心に響く作品になるわけがありませんよね。
『鈴木先生』が実現したようにテレビ局は視聴率という呪縛から一刻も早く抜け出さなければなりません。

『鈴木先生』とはちょっとタイプは違いますけど『マルモのおきて』なんかも
『JIN-仁-』の裏だし、フジテレビとしては半分視聴率をあきらめていたところがあると思うんですよ。
だからこそドラマの原点に立ち返ったちょっと古臭い人情ドラマで高品質を実現できたのではないかと。
この枠は花王の一社提供で、前半のみ2社提供という『鈴木先生』と似たスポンサー体系で、
どちらも視聴率というしがらみが緩かった(と思われる)のは偶然ではないような気がします。
もっとも『マルモのおきて』は『鈴木先生』とは違って視聴率とクオリティを両立させましたけど。

私ももっと「日常」に寄り添ったドラマをたくさん観たいと思っています。
人間ではなくて事件や事故が主役のドラマには正直辟易しています。
『踊る大捜査線』にしろ『救命病棟24時』にしろかつての名作ドラマには
事件や事故の裏に必ず良質の人間ドラマが存在していました。
私は『絶対零度』のスペシャルと第1話を観て、テレビドラマは末期症状だと思いました。
このドラマは表面的な事象にこだわって、物事の真理を描くことを完全に放棄してしまったようです。
エダモコさんがおっしゃるように「日常にこそドラマがある」ということを
民放のドラマプロデューサーには思い出してもらわなければなりません。


引き続き反芻して私のレビューを読んでいただけたら本当に嬉しいです。
『鈴木先生』のレビューを改めて振り返ってみると、
ちょっと的外れなこともたくさん書いていて恥ずかしいんですけど、
そのとき素直に感じたことを残しておくことも大事かなと思っています。

長谷川博己さんは、本当に素晴らしい俳優さんだと思います。
私は同世代に素晴らしい俳優さんがたくさんいて、勝手に誇りに思っているんですけど、
長谷川さんと同い年なのも本当に嬉しいんです。
まだメディアの露出が少ないですけど、本当に好青年ですよね。
お父上が有名な大学教授で、育ちの良さが滲み出ているといった感じです。
ぜひこちらをご覧ください。
http://odoroku.tv/vod/000004031/512.html
http://odoroku.tv/vod/00000403A/512.html
『鈴木先生』の映画化の前に、とりあえず映画『セカンドバージン』が観られるのは嬉しいですね。

by ジャニスカ (2011-07-16 20:12) 

古沢良太最高

緻密な分析と豊富な語彙に圧倒感心させられながら全部読ませていただきました
深読みしすぎだったり無関係なところをつなげていたりと驚きながら読んでいました
感想をあえて一言で言えば買いかぶり過ぎなのでは?というところでしょうか
作品に大して一切否定がないあたりが崇拝にも似て清清しいほどです

最終回の「どうして私は・・・・・・」というあのセリフに言及されていないのが残念でした

jinは私も2で途中下車しましたが先日最終回だけを見る機会に恵まれ締めくくり方に感心しました
最終回だけは見ても損はしないと思いますのでお薦めさせていただきます
by 古沢良太最高 (2012-12-16 10:36) 

ジャニスカ

コメントありがとうございます。
私のレビューを「買いかぶり過ぎ」と感じる方がいるとすれば、
その方はこのドラマの本質にまだお気づきではないということになるでしょう。
私はこの程度のレビューではこのドラマを賞賛したことにはならないとすら感じています。
当レビューは本放送時に初見で執筆したものでして、
今読み直すと、勘違いや的外れが多数あってお恥ずかしいのですが、
時間をかけて何度も本編を見直して、ひとつひとつ台詞を丁寧に咀嚼していく中で、
今では当時の自分の未熟さが浮き彫りになっていくような思いをしております。
作品に対して一切否定がないのは否定するところがないからです。
このドラマが表現しようとしていることに近づけば近づくほど、
私はむしろかつての自分を否定されているような気持ちにさえなります。
完璧なドラマを崇拝するのは当然のことでしょう。

挙げておられるのは神田マリの最後の台詞のことでよろしいでしょうか?
これに改めて言及するとすれば、鈴木先生は自分が目指す理想の教育実験のために
一人の生徒を切り捨てていたということになるんだと思います。
丸山康子のような普通の生徒の心の声を掬い取るのが鈴木先生の目指す教育だったはずなのに、
鈴木先生は一番最初の段階でそれに失敗していたということになります。
鈴木先生が喫煙室で流した涙は足子先生の一件によるものだけでなく、
その事実を突きつけられた悔しさが表出したものではないかと今は考えています。

by ジャニスカ (2012-12-16 12:28) 

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