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ETERNAL WIND - 森口博子 [音楽]


森口 博子
『 ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~
作詞:西脇唯 作曲:西脇唯・緒野原洋子 編曲:門脇聡
( 1991年2月5日 / キングレコード )

          Official Wikipedia / Words          

アニメ『機動戦士ガンダム』の世界観がそれまでのロボットアニメと一線を画するのが、
その舞台設定は遠い未来でありながら、きわめて「現実的な戦争」を題材とし、
実写ではかえって描写しがたい「戦争の醜さ」からも目を背けずに積極的に盛り込んでいる点だと思います。
具体的に言うと、『ガンダム』ではシリーズを通じて、ほぼ例外なく民間人が戦争に巻き込まれ、殺されるのです。

象徴的な描写が最初のシリーズ『機動戦士ガンダム』(1979年 名古屋テレビ)の第1話に盛り込まれています。
主人公が暮らすスペースコロニーが突如として戦場となり、宇宙船が停泊する港に民間人が殺到しますが、
必死に逃げる民間人の列にミサイルが飛び込み、いきなり多くの民間人が露骨に死にます。
このミサイルというものが必ずしも「敵」によるものではなくて、
民間人を守るべき軍隊によって放たれた流れ弾かもしれないと思わせるところも戦争の理不尽さを強調しています。
この民間人の死者の中には主人公の幼馴染の母親も含まれていて、主人公の少年(=アムロ・レイ)は、
母親の死を受け入れられない幼馴染を勇気づけ、この理不尽な状況に立ち向かうべく、
自らモビルスーツと呼ばれるロボット兵器(=ガンダム)に乗り込み、戦うことを決意するのです。

この『ETERNAL WIND~ほほえみは光る風の中~』という曲は、
1991年に公開されたガンダムシリーズの劇場版『機動戦士ガンダムF91』(松竹)の主題歌ということになります。
この『機動戦士ガンダムF91』においてもファーストシリーズの冒頭とまったく同じことが繰り広げられます。
平和なコロニーに侵攻してきた敵に立ち向かうべく武器を手に取った友人の死を目の当たりにしてしまった
主人公の少年シーブック・アノーは、モビルスーツの操縦席に乗り込み、生きるために為すべきことを探し始めます。
この映画でも、戦闘に巻き込まれた民間人が死傷する描写がこれでもかというぐらい多数盛り込まれています。
中でもモビルスーツが発砲したあとに排出される薬きょうが直撃して即死する、幼子を抱えた母親の絵は衝撃的で、
遠い未来を舞台としたSFアニメでありながら、理不尽で現実的な戦争を実感させられてしまいます。

そして、極めつけは終盤に登場する「バグ」と呼ばれる大量殺戮兵器の存在です。
これはスペースコロニーを掌握するためにそこに住む人間を一人残らず抹殺する(=コロニー掃除)ための兵器で、
「バグ」という自己完結した無人ロボットが、人間が発する熱や二酸化炭素などの生体反応を感知して、
自動的に人間を殺傷していきます。本編では「数日で掃除は完了する」などという恐ろしい台詞がありますが、
ロボットにやらせて人が直接手を下さない殺戮だからこそ感覚が麻痺してしまうのです。
私は、アメリカ人が「原爆」によって広島と長崎で行った非戦闘員に対する無差別大量虐殺も、
命令を下した人間(=アメリカ合衆国大統領)の感覚は、これと大差はないと思っています。

というわけで『機動戦士ガンダム』とはロボットアニメというよりもリアリティを追求した戦争ドラマに近いもので、
この『機動戦士ガンダムF91』を「戦争映画」に類型しても、なんらの違和感も感じません。そういう認識で
『ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~』の歌詞や曲を解釈してみると、そのメッセージ性は強烈です。
過去も現在も、そして未来においても人類共通の願いというものは変わらないし、
この「願い」を永遠の課題としていかなければならないのが人類の宿命なのかもしれないという、
ある種の達観した価値観がテーマとして組み込まれているのが「ガンダム」という作品なのかもしれません。

Pray don’t  break a peace forever... (どうかいつまでも平和の風が吹き止みませんように...)

たとえそれが「人類の宿命」だとしても、平和への祈りを止めてはならない・・・
この曲には「ガンダム」というドラマのメッセージ性が集約されています。

(参考リンク)Logo_YouTube.pngアニメ『機動戦士ガンダム』第1話
Logo_YouTube.png映画『機動戦士ガンダムF91』AMV
 Logo_YouTube.png大量殺戮兵器「バグ」
 Logo_YouTube.png森口博子「君をみつめて-The time I'm seeing you-」


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めい

ジャニスカさん、こんにちは。
20年前、映画館で初めて聴いた時、なんて切ない美しい歌なのだろうと思いました。エンディングで感じていた切なさ、その気持ちにこの歌声は何かあたたかく、ずっと耳に残っていました。
英語の部分にはこういう意味があったのですね。
太平洋の奇跡、夕凪の街・桜の国、にガンダムがつながりました。
新しい発見です。いつも有難うございます。
by めい (2011-03-27 16:50) 

ジャニスカ

めいさんは、映画館でご覧になられたんですね(^^)。
なかなか「ガンダム」の話題は女の子には興味を持ってもらえないので、
そのあたりにかなり留意してこの文章を書いたのですが、「ガンダム」を知らなかった人にも、
この曲を通じてロボットアニメの裏に隠されたそのテーマ性を知っていただきたいと思いました。
めいさんが書かれているように、
私も『太平洋の奇跡』や『夕凪の街 桜の国』との繋がりを意識してこの文章を書きました。
つくづく「真理はひとつ」なんだと思います。
サビの英語の部分については、私がガンダムのテーマを盛り込んで解釈した「意訳」なんですけど、
「ETERNAL WIND」を「平和の風」と訳すのは間違いではないはずです。

宇宙に漂うシーブックとセシリーの絵にスーッと入り込んでくる静かなイントロに始まって、
エンドロールで盛り上がりをみせる最後のサビの部分に到達すると、
何かから解き放たれたような爽やかな清涼感、そしてある確信が心に湧き上がっきます。
この曲はすべての人間がたどり着くべき「真理」を示してくれているような気がします。

by ジャニスカ (2011-03-29 17:45) 

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