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(5)大切なことはすべて君が教えてくれた [ドラマレビュー]

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『 大切なことはすべて君が教えてくれた 』
第5回
( 2011年 フジテレビ 公式サイト
演出:葉山裕記 脚本:安達奈緒子 出演:戸田恵梨香、三浦春馬、武井咲

やっぱり先週のあれは「茶番」だったわけです。そして、やっぱりこれは稚拙な脚本なんだと思います。
事の真相をあきらかにするのに登場人物に10数分間も語らせるのはナシでしょう。
初回の冒頭に始まった「謎」は、回を追うごとに次第に明らかになり、視聴者もそれなりに想像力を働かせていたと思います。
しかし、このドラマは結局、たった10数分間で多くの新事実を提示して、すべての謎に決着をつけてしまったわけです。
じゃあ、今までのは何だったの?やはりこのドラマの前半部分は佐伯ひかり(武井咲)が主人公だったのではないのか?

とにかくこの脚本は台詞(またはナレーション)に頼りすぎていると思います。
特に柏木修二(三浦春馬)の台詞はきわめて不自然。直感的に感じたことをすぐに口に出している印象で、
彼の言動は客観的に見れば、迂闊、思慮の欠如、言行不一致・・・およそ一般常識のある社会人のものではありません。
ましてや彼は教師なのです。前回取り上げたひかりに対する「君に会いたくなった」がその最たるもので、
ここには教師と生徒という関係性が微塵も介在していません。

主人公の不自然な言動が目立つのは、この脚本が台詞で物語を展開させようとしている証拠だと思います。
そして、そのことを確認したのが今回のラスト、事が落着して修二が夏実(戸田恵梨香)と会話をするシーンです。

 「佐伯にはいるのかな・・・今の佐伯にはこんな風に待っていてくれる人がいるのかな・・・」
この男、何ぬかしてやがんだ・・・・

おいおいおい、それは散々心配をかけた婚約者の前で言う言葉ではないだろう。
百歩譲ってそう思ったとしても、他の女を気にかけるような言葉を婚約者の前で口に出すか普通。
この台詞が意味するところは、要は物語に新展開を付与するためのものであって、
登場人物の意思というよりも、作り手の意図の方が色濃く反映されたものだと思います。
つまり作り手の意図を登場人物の意思として台詞で表出させてしまうから我々には「不自然」に映るんだと思います。

実際、この言葉を聞いた夏実は結婚式をキャンセルしており、
次回以降は予想通り、修二がひかりに惹かれていくという新展開に移行していくものと思われます。
上記は純粋に「そのために」考え出された台詞であって、修二というキャラクターは端から無視したものであり、
結果としてこの脚本は物語を展開させるために主人公を支離滅裂な人間にしているのです。

第1回から指摘しているとおり、このドラマが根本的欠陥を抱えている以上、
褒めるとすればピンポイントにならざるをえませんが、今回ばかりはどこを褒めていいのかわかりませんでした。
そんな中、本筋とは外れた部分ですが、ぜひ取り上げておきたいのが修一の兄・孝一を演じた新井浩文さんのお芝居です。

孝一についての私の想像がほぼドンピシャだったのには笑ってしまいましたが、
結果的に物語の本筋とはほとんど関係ないというか、さして重要ではなかったのも、
ひかりが自身で事の真相をすべて語ってしまったからで、なんだか随分思わせぶりな役でした。
孝一は弟への嫉妬心を語り、その代わりとして夏実から弟が何をしたのか聞き出します。

 「・・・・えっ?・・・・あいつが?・・・・フフフッ・・・・」
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この「間」のお芝居が本当に素晴らしい。驚きから弟への嘲笑への移り変わりをほんの数秒で表現しています。
この「間」には役柄の生きた気持ちが見事に吹き込まれており、これはとても映画的なお芝居ということになると思います。
新井浩文さんはその役柄とは裏腹に役者としての存在感はしっかりと示しており、
出番も少ないし、地味でしたけど、一人だけかなりハイレベルな仕事をしていたと思います。
孝一は役柄的にも俳優さん的にもこのままで終わらせるのはもったいないと思いますが、
この逸材を今後どのように活用していくのか、作り手の技量が試されるところだと思います。

佐伯ひかりについての全貌が明らかになったことで、
私としては今後このドラマの中身に関してはどこに興味を見出せばいいのかわかりません。
ひかりが好きな人はああいう人間ですし、そもそも絶対に報われない恋ですから、
ひかりを中心にこのドラマを観ている私にとっては、なんとも複雑な気持ちで見守らなければなりません。
ひかりの気持ちと事情を理解している同級生が男子だったら、まだそこに救いを求められそうですが、
そういう伏線を張っているとは思えません。強いて言えば、ひかりの前の席にいる児玉賢太郎(中島健人)でしょうか。
もしこの方面が膨らんだとしたら、それはそれとして作り手を褒めなければなりません。

関連記事 : (9)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-03-24)
(8)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-03-09)
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(1)大切なことはすべて君が教えてれた(2011-01-18)


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テンコ

こんにちは~。又お邪魔します。

>しかし、このドラマは結局、たった10数分間で多くの新事実を提示して、すべての謎に決着をつけてしまったわけです。

ほんとう、そうですね。
この謎だけが続けて見ようかなと思わせる部分だったのですが、この回で謎は解決、今後見たくなる要素がゼロに近くなりました。
ひかりのキャラが変わってしまったのも、おかしいですし。

ドラマ制作者は斬新さを狙いすぎ、今までのドラマ脚本の型を破ろうとしてるのかもしれませんが、失敗ですね。強いて誉められるところといえば、PINKの曲が妙にかっこいい、なんだかぴったり合ってる、曲のMVとしてかっこいいなーと思えます。全米TOP40見ていたら出てきました。今ヒット中なのでしょう。ちょっと切なくていい曲で気に入りました。
by テンコ (2011-02-22 13:18) 

ジャニスカ

テンコさん、こんにちは~。

ひかりについては確かに表面的にはキャラクターが変わったようにも見えますが、
私は彼女の内面は第2回以降しっかりと表現されてきていると感じていて、そんなに違和感はありません。
初期の修二と夏実に対する言動は、感情が先行した虚勢であり、
自らの感情をコントロールできずにもてあましてしまった「子供っぽさ」が現れたものだと認識しています。

P!NKの曲は本当に映像に合っていると思います。
でも、物語に合っているのかというと甚だ疑問です。
曲があまりにもかっこよすぎて、
主人公の支離滅裂な言動にも無理やり納得させられている感があることも否めません。
そのシーンが終わってから、
「いやいや、あいつサイテーなこと言ってるから!」
と冷静になります、、、(^^;。

by ジャニスカ (2011-02-23 19:11) 

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