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(4)大切なことはすべて君が教えてくれた [ドラマレビュー]

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『 大切なことはすべて君が教えてくれた 』
第4回
( 2011年 フジテレビ 公式サイト
演出:葉山裕記 脚本:安達奈緒子 出演:戸田恵梨香、三浦春馬、武井咲

私は「あの茶番」には一切触れるつもりはありません。
前回はストーリー的にもそれなりにみどころが多かったのですが、
正直言って今回は「・・・」としか表現できません。

今回もとりあえずは、来期ドラマで初主演が決定した武井咲ちゃんを褒めたいと思います。
なんと言っても冒頭のシーンにおける表情のお芝居は素晴らしかったです。
佐伯ひかりという役柄は、もともと口数が少ない女の子であり、
彼女が抱える特殊な事情もあいまって、決して簡単な役ではないと思います。
それだけにこのドラマでは表情で語るお芝居が要求されていて、
このシーンでは
次々と移り変わる感情をほぼ表情のみで上手に表現していたと思います。

以前にも書いたことがありますが、私は、女優さんのお芝居の力量というものは、
どれだけ魅力的な表情のパターンを持っているかによって決まってくる部分があると思っていて、
表情だけでも観る者を惹きつけられるかどうかは、主演女優に求められる重要な要素だと思います。

今週は葉山浩樹監督でしたが、この冒頭シーンは演出的にもよく練られていて、私は何度も繰り返し観てしまいました。
このシーンは、けっこうカット数が多いのですが、それでいてしっかりと二人の表情の要所を押さえていて、
さまざまな角度からのショットと複雑なカット割を用いることによって、二人の表情の変遷を巧みに印象付けています。
特にひかりは修二の一つ一つの言葉に対して言葉を返すのではなくて、その表情をもって敏感なリアクションを返します。

 「うれしかった」
「だから、本当の君に会いたくなった」
「帰ろう」
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「君に会いたくなった」は、どう考えても余計だろう。この状況で教師が生徒に言う言葉ではない。
これらの台詞をみても、つくづく修二はサイテーの男であることが確認できると思いますが、それは置いといて。

演出的にはこれらの修二の言葉を受けたひかりの表情に対してジワーっとしたズームインを使用しており、
このひかりの表情(=感情)の移り変わりを見て欲しいという作り手のシグナルを読み取れます。
そして、立ち上がったひかりが修二に言った言葉は、
上記の修二の台詞を素直に受け止めたものであり、十代の女の子の純粋すぎる感情が切ないほどに表れています。

 「そうすれば、先生は幸せになれる?・・・なれるよね・・・」
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ひかりの立場に立てばこのやり取りには胸を締めつけられる想いです。
この台詞に「切なさ」を見出せる方は、ひかりに感情移入しているということになると思います。

今回は喫茶店(カフェ)のシーンが、この冒頭も含めて2つありました。非常に細かい視点ですが、
どちらのシーンで使用されているお店も実にセンスがよくて、このあたりのロケハンのセンスというものは、
そのままディレクターの美的感性が顕れる部分であり、それだけでも葉山監督がどういう方かわかった気がします。
ひかりが水谷亜弥(内田有紀)と訪れた雑貨屋さんも、ちょっとしたシーンですけどロケ地へのこだわりを感じますし、
この方はドラマディレクターとして、普段からアンテナを張って街歩きをしているんだと思います。
また、葉山監督は助監督時代が長かったせいでしょうか、エキストラの動きひとつとっても配慮が行き届いているし、
このような細部へのこだわりは、いいディレクターの必須条件だと思います。

ストーリーについても、「本筋以外のところ」に言及しておきたいと思います。
やはり修二の兄・孝一(新井浩文)は、重要なキーパーソンになってきそうです。
今回、初めてこの兄弟が面と向かって会話するシーンが盛り込まれましたが、
二言三言の短いシーンにもかかわらず、兄弟の微妙な関係性が伝わってきます。

 「おまえと夏実ちゃんがギクシャクするのにオレが関係あるのか?」
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この孝一の台詞には、逆説的な意味合いが込められていて、
今度の問題の発端に孝一が絡んでいるのは間違いないでしょう。
自分は実家の酒屋を継いでいる一方で、弟は教師という社会的地位を確立して、キレイな嫁さんをもらう・・・
母親への暴力は、自らが置かれた現状への不満、弟へのコンプレックスが表れたものでしょうか。
新井浩文さんのテレビドラマ出演は珍しいなと思っていましたが、
数えるほどしかない出演シーンの中で独特の存在感を放っているところはさすがだと思います。

相変わらず主人公二人の動向にはまったく興味が沸かない中、
孝一は佐伯ひかりと並ぶ興味深い存在だし、俳優さんのお芝居とともに注目していきたい登場人物です。

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コメント 2

テンコ

ジャニスカさん、こんばんは~。

このドラマ、つまらないと思いつつ、チェックしています。見たら即削除ですが…。
おっしゃるように、ひかり(武井咲)の表情はすごく良いですね。
彼女の病気のことや片思いの気持ちなど微妙な気持ちを表現されてるなと思います。
主演が決まったのですか。若いのに、すごいですね。
この演技を見たら、やはり将来有望だなと感じます。

>「君に会いたくなった」は、どう考えても余計だろう。この状況で教師が生徒に言う言葉ではない。

そうなんですよね。修二のキャラクター設定が本当にひどい。セリフがひどいです。
演じる彼もかわいそうですが。

>相変わらず主人公二人の動向にはまったく興味が沸かない中、

(笑)はい、最初から固い絆のある恋人同士ということで、修二と夏実のナレーションを交代で入れて、いっぱい心情を説明してくれてるのですが、夏実がいくら泣いても、全然かわいそうでも、悲しくもなれないなんて、なんてドラマでしょうか。
2人がこの先、このことで別れても、くっつこうとも、全然興味なし、関係なしだわと思えますね。ただひかりの謎の部分で引っ張っていくドラマなのでしょうか。
HPでは、恋愛中に起こる試練を乗り越えていくことが大事、ということを言いたいドラマだそうですが、小中高学生向きに作ればまだ良いのですが、子供向きの内容ではないような気もするし、ターゲットが20代前半だけなのかな?と…。

比べて、「流れ星」はセリフも少なく、状況説明するナレーションもほとんどなく、にもかかわらず、主人公たちに完璧に感情移入できて、美しい風景や彼らの動きのひとつひとつが心に響き、その感情を表してたようなドラマでした。全く対照的ですね。

by テンコ (2011-02-11 00:28) 

ジャニスカ

テンコさん、こんばんは~。
ナレーションのお話はまったくそのとおりです。
主人公二人の心情をナレーションで補完している時点でこのドラマの体(てい)は知れていると思います。
できる脚本家が採用する手法じゃありませんから。このことについてはプロデューサーも同罪です。

このドラマは、夏実に「やっぱり修二が好きだ」とナレーションで言わせちゃっているんですよね。
ナレーションや台詞で言わせれば、そうなると思っているとしたら、作り手のレベルを疑います。
『流れ星』は台詞で言わせなくても「そうなっている」、
このドラマは台詞で言わせているのに「そうなっていない」、これが両者の作り手のレベル差です。

その結果心情表現にナレーションを用いていない主人公以外の登場人物の方が生き生きしているんですよね。
佐伯ひかりはもちろんですが、同級生の園田望未、修二の兄・孝一、
彼らの心情の方が説得力があるし、感情移入ができる。
このあたりが私が感じているこのドラマの「根本的欠陥」ということになります。

武井咲ちゃんや葉山監督の演出など、褒めるところがなければ、
それらを書くしかないと思っていたのですが、
本文で取り上げる価値のないレベルの低い話なので、こちらに書かせていただきました。
テンコさんもそのあたりに対して、よくぞ突っ込みを入れてくれました(^^)。

武井咲ちゃんのお芝居については今後も積極的に取り上げていくつもりです。
彼女は年内のドラマ出演のスケジュールがすでに埋まっているそうです。
その存在感を目の当たりにすれば、各局のプロデューサーが放っておかないのは当然です。

私としては、佐伯ひかりはとても魅力的な女の子だと思うし、
この役を演じる武井咲ちゃんが見られればそれだけで満足です(^^)。

by ジャニスカ (2011-02-11 21:30) 

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