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(R)流れ星 [ドラマレビュー]

先週の『新・週刊フジテレビ批評』で、
視聴率の調査区分のひとつである「F1」の構成比の変化がテレビ業界に及ぼす影響を取り上げていました。
「F1」とは、20~34歳の女性のことで、もっとも購買意欲が強く、テレビを見る絶対時間がもっとも大きい世代として、
テレビ局がこれまで、ほとんどの番組においてターゲットとしてきた区分ということになります。
しかし、近年では必ずしもF1層がテレビをよく見ているということにはならないようです。

その理由のひとつとして、女性の晩婚化などの様々な社会情勢の変化の中で、
F1の構成比(既婚・未婚・就労・未就労など)が大きく変化していることがあげられていました。
わかりやすくいえば、かつてF1の中心だった専業主婦が減って、働く女性が増えており、
この両者の構成比が逆転することによって、かつてとはまったく別物の視聴者層になってきているということでした。
番組の議論は、そのような変化にテレビはどのように対応しなければならないかということになっていきましたが、
私は、この事実を近年のテレビドラマ視聴率の頭打ち、あるいは減退と結びつけて考えずにはいられませんでした。

いわゆる「トレンディドラマ」の時代から、テレビドラマというものは長らくF1層のために作られてきました。
そのような観点から言えば、近年、木村拓哉さん主演のドラマが視聴率を取れなくなったのは
道理であり、
F1が毎年イノベーションを繰り返していることを考えれば、同じ俳優さんへの需要が継続するのにも限界があります。
それでも10年以上も彼がその地位(数字が取れる俳優)を堅持してきたという事実は、驚愕に価すると思いますが。

一方で、そのようなイノベーションは、同時に構成比をも変化させてきたということになります。
働く女性が増えるということは、すなわち在宅してテレビを見ている視聴者の絶対数が減るということを意味し、
必ずしもドラマの視聴率の伸び悩みが、ドラマの質の低下を直接的に意味するものではないということになります。

特に「月9」というものは、常に話題の中心となる伝統的かつ代表的なドラマ枠ですから、
その平均視聴率の最低記録の更新が、大きな話題となってしまうのは仕方ないにしても、
視聴者のライフスタイルの変化など、ドラマどころかテレビ全体を取り巻く情勢が変化していることを考えれば、
視聴率の低下が「月9」の質の低下のように捉えられてしまうのは不当な評価ということになります。

インターネットが普及して、かつては業界向けだった視聴率が、一般にも広く周知されるようになりましたが、
我々は一方の当事者でありながら、本来その数字そのものは、我々にはまったく無関係の情報でした。
それでもなまじ情報があるだけに、自分が贔屓にしているテレビ番組の視聴率に目が行ってしまうのは当然だとしても、
それに一喜一憂してしまうのは、誤解を恐れずにいえば、ちょっと滑稽ですらあると思います。
そもそも視聴率を「情報」として分析し、活用しなければならないのは、テレビ局や広告代理店であり、
一喜一憂するのなら、我々も視聴率の本質を正確に把握した上で、その情報に接するべきでしょう。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1150498786

ここでは視聴率というものに対する素朴な疑問に回答していますのでこちらもあわせてご覧ください

さて、以上のような視聴率という情報の本質を前提に、『流れ星』の視聴率について私なりに分析を試みてみました。

 流れ星(フジテレビ 毎週月曜日 21:00-21:54 初回は21:00-22:09) 
   平均視聴率(放送時間)累計加重平均視聴率(分)(分×率)(累計)
 10/18第1回13.6%(69)13.60%69938.4938.4
 10/25第2回14.2%(54)13.86%123766.81705.2
 11/01第3回13.7%(54)13.81%177739.82445.0
 11/08第4回15.0%(54)14.09%231810.03255.0
 11/15第5回12.6%(54)13.80%285680.43935.4
 11/22第6回13.9%(54)13.82%339750.64686.0
 11/29第7回13.6%(54)13.79%393734.45420.4
 12/06第8回14.8%(54)13.91%447799.26219.6
 12/13第9回13.4%(54)13.86%※12/14追記
 12/20最終回15.8%(54)14.05%※12/21追記 
 ※ 平均視聴率は、ビデオリサーチ社調べ、関東地区のもの。加重平均視聴率は、私が算出したものです。

加重平均視聴率とは、 初回や最終回で放送時間が拡大された番組の平均視聴率をより正確に把握するためのもので、
わかりやすくいえば、拡大された回の視聴率が、拡大された分だけ重視して算出された視聴率ということになります。
『流れ星』の場合、15分拡大された第1回の視聴率は、通常回よりもおよそ28%ほど重視されているということになります。

一般的に知られるようになるドラマの最終的な平均視聴率とはこれを指しており、
連続ドラマを評価するときの「ひとつの」指標となるものです。
そして、これを累計放送時間と各回の視聴率の累計を使って算出したものが、
その時点でのそのドラマの視聴率をより正確に合算したものということになります。

これをひとつの指標として、ドラマはドラマ同士でということで、
『流れ星』の視聴率を今クール放送されているドラマの中で相対的に比較してみたいと思います。
比較サンプルは、初回視聴率が特に高かったものをピックアップしてみました。

2010121301.png

『流れ星』の初回視聴率(13.6%)は、民放のメジャー枠のテレビドラマとしては、11番組中8番目の数字でした。
それが第8回時点での加重平均視聴率を比較すると、『流れ星』の数字は上から3番目となり、
すでに放送されている『医龍3』の第9回分を加算すれば、『フリーター、家を買う』に次ぐ、2番目ということになります。

初回の視聴率というものは、ほぼそのままその作品への期待値とすることが可能で、
比較サンプルとして挙げたドラマは、初回視聴率と加重平均視聴率の乖離幅が大きいので、
数字のみで客観的に評価すれば、「期待はずれだった」と言ってしまうこともできるでしょう。
そんな中、現時点での加重平均視聴率が初回視聴率を上回っているのは、
微増とはいえ、『流れ星』のみであり、これは逆に「期待以上だった」と言ってしまっていいでしょう。

言うまでもなく、そのドラマが「期待はずれだった」か「期待以上だった」かは、
そのドラマを評価する上で、ある部分では数字以上に重要な要素であり、
これは、最終的な平均視聴率を見ただけでは汲み取れない情報ということになります。

この場合、一番高く評価されなければならないのは、初回視聴率が高く(17.6%)、
現時点における加重平均視聴率も高水準(16.62%)を維持している『フリーター、家を買う』ということになりますが、
『流れ星』の序盤の視聴率が「期待値のみ」で顕在したものだとすれば、
視聴率というものは、やはりドラマのクオリティを正確に反映したものとは到底言えなくなるでしょう。

すでに触れたとおり、注目度が高い「月9」の視聴率は、常にあらゆる面での「最低記録」が話題となりますが、
視聴率の伸び悩みは「月9
」に限ったことではなく、ドラマ全体の問題であり、「月9」を視聴率で評価しようとするならば、
ドラマ全体の視聴率か、ここで試みたように他のドラマの視聴率との相対的な比較
をもって論じられるべきだと思います。
視聴率という情報を簡単に得られる時代だからこそ、我々にもその情報を正しく理解し、分析する姿勢が求められています。

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タグ:流れ星
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コメント 4

テンコ

F1層ねらいという話はよく昔言っていましたね。
私はトレンディドラマと言われるドラマが流行りだした頃、どうも違和感があって、ほとんど観ていませんでした。(その前もあまり観てませんでしたが…)
最近は全体にドラマの視聴率も良くないし、あまり昔のように超話題になるほどのドラマもありませんから、ドラマの停滞期と言われていますね。
数年前から韓国ドラマにハマってから、何故日本のドラマが面白くなくなったかを色々考えていました。

なるほど~、加重平均視聴率で示されたほうが正確につかめますね~。
「流れ星」以外の他のドラマはほとんど落ちているんですね。初回がいいのは、ただ期待が高かったということだけで、だんだん下がるのはそのドラマの内容が期待はずれだったということですね。
平均視聴率だけでなくこういう分析をして、製作側も考えてもらって、ただ視聴率が悪いからと言って早々に打ち切ったり、出来が悪いという評価はしてほしくないですね。
by テンコ (2010-12-15 15:06) 

ジャニスカ

テンコさん、こんばんはー。
なぜ日本のドラマがつまらなくなったのかは一口じゃ言えませんが、一因としてドラマの作り手(特にプロデューサー)の世代交代がうまくいかなかった印象を持っています。とにかくオリジナルストーリーのドラマが激減してますから、かつては当たり前だったプロデューサーが脚本家を育てて、マンツーマンでドラマを作っていくという体制が機能していないような気がしています。その点で言えば、新人の脚本家を抜擢して、オリジナルストーリーを構築した「流れ星」は画期的なドラマだと思います。来期の「月9」もヤンシナ出身の脚本家を抜擢したオリジナルで、フジテレビがかなり思い切ったことをしているのは、それなりに危機感があるんだと思います。このようなフジテレビの取り組みと動向は、賞賛に価すると思っています。

視聴率については、テレビ局や製作者サイドが数字に左右されてしまうのはある部分では仕方がないことだと思います。民放はスポンサーありきですからね。視聴率が悪いから早めに打ち切って、特番を放送しろとスポンサーに言われてしまえばそれまでですから。でも、そういうテレビ局とスポンサーの関係も変わっていかなければならない時代に来ているかなとも思います。

かつて、視聴率は悪かったけど、そのクオリティは内外で高い評価を得た「白線流し」というドラマがありました。このドラマはプロデューサーの熱意で、本放送は低視聴率だったにもかかわらず、その後数年にわたって、スペシャルドラマが制作されました。私も大好きなドラマでシリーズの完結は本当に寂しかったのを覚えています。このドラマのプロデューサーだったのが、現在フジテレビのドラマ部門を仕切っている本間欧彦さんですから、「月9」の新しい挑戦には、作り手の熱意をリアルに感じてしまうところです。
by ジャニスカ (2010-12-17 20:34) 

ロデイーのママ

 ジャニスカさん、今晩は
初めて書かせて頂きます。実は今まで、何回も読ませて頂いてきました、「流れ星」の大ファンでしたから、「流れ星」で初めて竹野内豊を知ったというくらい、日本映画やテレビには関心が低かったのですが、過去にただ一つ、本当に大好きなテレビドラマがありまして、それも再放送で気が付き、大ファンになったのですが、それが「白線流し」でした。高校3年の友情ドラマといった感じのものに見えましたが、出演者たちが同世代、多分本当に18歳くらいの皆これからという俳優さんたちでした。長瀬智也、酒井美紀、他5名がリアルタイムで成長していくといったもので、演技よりも若さが輝いて魅力になっていたと思います。更に、周りで彼らを支える大人たちも大変丁寧に描かれていて、セリフだけに頼るのでは無く、それぞれの気持ちを大切にしたドラマでした。アメリカのTVドラマ、ビバリーヒルズ青春白書の日本版?と思って見始めて、私も高校時代に戻ったように、涙した記憶があります。確か彼らが27歳くらいで最後になってしまった時に、私も大人の自分を受け入れたような気持ちになり、淋しく思いました。今回、図らずも「流れ星」の視聴率についての素晴らしいジャニスカさんの考察の最後に、あの「白線流し」が出てきて本当に驚いた次第です。だって、私は「流れ星」を見ながら、これはきっと「白線流し」と同じ作り手たちによる作品ではないかと演出家の名前を気にしていたほどだったのですから。どちらのドラマも過激なセリフ回しに頼るのではなく、普通の会話の“間”を大切にしていると私は思いました。
 長文になってしまいましたが、ジャニスカさんと同じものを同じように受け止めていたことが大変嬉しく、書かせて頂いた次第です。

by ロデイーのママ (2012-06-01 00:30) 

ジャニスカ

ロデイーのママさん、はじめましてこんばんは。
何度もお読みいただけているなんて本当にうれしいです。
どれもそれなりに時間をかけて書いた文章なので、読者の方が、
私が伝えたいと思ったことを丁寧に汲み取ろうとしてくださることは何より嬉しいのです。

実は「白線流し」というドラマは、好きなテレビドラマを訊かれれば真っ先に挙げる作品なんです。
主人公たちが自分と同年代ということもあるのですが、それ以上に「表現」が好きなんですよね。
おっしゃるとおり「流れ星」と同様、ストーリーの起伏というよりも、
人間の感情の機微にスポットライトを当てて、それを繊細なタッチで浮き彫りにしようとしている。
ロデイーのママさんの感じ方は間違っていないと思うし、
少なくとも私も「白線流し」と「流れ星」に共通点を見出していました。
このドラマについては一口では語れないぐらい思い入れが強いので、
いつか機会があれば改めて言及したいと思います。

こちらこそ同じように感じている方がいて嬉しかったです。コメントありがとうございました。
これからも映画やテレビドラマの魅力を伝えられるような文章を書いていきたいと思っています。
またのご来訪お待ちしています。。。

by ジャニスカ (2012-06-01 20:15) 

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