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ラブファイト [映画レビュー]

ラブファイト プレミアム・エディション [DVD]

[ DVD ]
ラブファイト プレミアム・エディション
( ジェネオン エンタテインメント / ASIN:B001V8675W )

『ラブファイト』
(2008年 東映 126分)
監督:成島出 脚本:安倍照雄 出演:林遣都、北乃きい、桜井幸子、大沢たかお
          Official Wikipedia / Kinejun           

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(C) 2008 「ラブファイト」フィルムパートナーズ

本作を類型すれば、「ラブコメディ」ということになりますが、ボクシングをめぐって繰り広げられる「大人の恋」と「高校生の初恋」という2本立てであり、両者がうまく相関しながら見事なバランスで見せていきます。

本作は、大沢たかおさんの初プロデュース作品ということで、正直なところ、期待半分、怪しむ気持ち半分でした。私は、どういうわけかデビュー年から大沢さんに注目しているんですが、テレビ、映画を問わず、大沢さんが出演している作品には大好きなものがたくさんあります。初期の実験的テレビ番組『劇的紀行 深夜特急』(1996年 名古屋テレビ)は特に印象に残っています。

大好きな俳優さんのひとりであることは間違いありませんが、その実、大沢さんを意識して映画を見に行くことは少なく、それでも大沢さんが出演している作品を見てしまうと、作品そのものに不思議な魅力を感じることが多い気がします。本作も見終わってみると、実にさわやかな気持ちのいい作品に仕上がっており、作品的にはひとまず成功だったと言えるでしょう。

本作のみどころのひとつは、ボクシングのスパーリングシーンだったと思いますが、俳優さんの本気度が伝わってくる迫力のあるものでした。ボクシングに限らず、激しい動きがあるアクションシーンというのは、編集がうまければいくらでも「ごまかし」が効くものです。私は、かつて『殴る女』(1998年 フジテレビ)というボクシングを題材としたテレビドラマの撮影を見学したことがあります。

後楽園ホールでの試合のシーンの撮影でしたが、役者さんたちのスピード感のない「試合の動き」を撮った後は、ひたすら細かい「顔寄り」や「部分寄り」のショットを時間をかけて撮っていきます。もう一度、本格的な動きを引きで撮るのかと思っていたら、それで終わりで拍子抜けしたものです。でも、オンエアーを見たら、ちゃんと「試合が成立」していて、テレビが良くも悪くも「ごまかし」で作られていることを実感したのでした。

しかし、そのシーンが迫力のあるものだったかと言えば、それは否です。「殴った」「殴られた」「よけた」「倒れた」というひとつひとつの動きが繋がっているだけなので、わかりやすいけど、全然面白味がないシーンでした。また、そのようなシーンでモーションスピードを頻繁にいじっていたら、もうそのドラマは「眉唾」と言っていいでしょう。とは言え、仮に役者さんの動きが物足りないものだったとしたら、編集でごまかしたくなる監督の気持ちもわかります。

本作の場合、役者さんの動きを見れば「ごまかし」など必要がなかったことがすぐにわかります。もちろんドラマのそれと同様にわかりやすさも考慮しなければならないので最低限の編集はなされているわけですが、基本的にインサートであり、流れを殺しません。引き絵で一連の激しい動きを撮られている役者さんは本当に大変だと思います。

2009101002.jpg特に北乃きいちゃんの女の子離れした動きには最初から最後まで驚かされっぱなしでした。冒頭から何度も登場する回し蹴りの完成度の高さと美しさには驚いたし、中盤からのボクシングの動きは、役柄の性格を的確に表現する荒削りなもので、彼女の運動神経の良さが窺えるとともに、相当な練習時間を費やしたことが想像できます。彼女の演技をちゃんと見たのはこれが初めてだったんですが、あのかわいらしい顔の下には相当なプロ根性を備えていると見ました。

演出面で言えば、なんといっても終盤の長回しの連発は圧巻でした。大木(大沢たかお)が順子(桜井幸子)の病室を訪れるシーンは、いつ切れるのか、そればっかり気にしながら観てたんですけど、二人の結末は自然なものだったし、実に気持ちのいいものになっています。計算され尽くされたに違いない7分近くもある長回しでしたが、終わってみればその価値があるシーンだったと思います。

そして、「拳で会話」した稔(林遣都)と亜紀(北乃きい)が、自分たちが互いを想う気持ちが未だかつて経験したことがない特別な感情であることに気がつくというラストカットは、ロングショットから二人の表情に寄っていくカットで表現されたもので、とても印象的なラストになりました。二人が初めてのキスをした後の感想が、「(互いのことが)よくわからなくなった」というまったく同じものであるところにも二人の初恋の感情がうまく表現されています。観客はしたり顔で「それが恋だよ」とうそぶくのです。

また、タイトルをラストにもう一度持ってくる演出は、個人的に大好きなんですけど、本作でも実にセンスよくタイトルCGが登場し、エンドロールに繋がっていきます。

成島出監督ということで、スケール感が拍子抜けしてしまった『ミッドナイトイーグル』(2007年 松竹)を念頭において本作に臨みましたが、本作を観てしまうと、大作映画を撮ることの難しさの方に思いが至りました。

総合評価 ★★★★
 物語 ★★★☆☆
 配役 ★★★★
 演出 ★★★☆☆
 映像 ★★★☆☆
 音楽 ★★★☆☆


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