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変身 [映画レビュー]

変身 [DVD]

[ DVD ]
変身
( アミューズソフトエンタテインメント / ASIN:B001MC02SU )

 

『変身』
(2005年 日本出版販売 108分)
監督:佐野智樹 脚本:よしだあつこ 出演:玉木宏、蒼井優
          Official / Wikipedia / allcinema          

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(C) 2005 東野圭吾・講談社 / 「変身」製作委員会

東野圭吾の小説を原作とした映画といえば、そのほとんどは良作でしたが、どうしたことでしょう、本作の出来はちょっとひどすぎました。私は原作を未読ですが、これまでの東野作品の映像化の秀逸さを鑑みると、本作が失敗した原因を原作に求めるのは無理があることだけは明らかです。

まずは、タイトルの出し方に驚いてしまいました。アバンのあとに、黒バックに赤字の異様なフォントで「変身」と出ますが、ホラー映画かと見紛うそのタイトルの出し方が、本作の全体的なトーンを的確に表現していたとは到底思えません。見終わってみると、監督が原作を誤った方向から捉えてしまったことを象徴しているようです。

本作のテーマのひとつが、「献身的な愛」だったとすれば、その根拠となるべき二人の出逢いと想いの深さを丁寧に描かなければなりません。しかし、二人の出逢いは、平たく言えば客が店員をナンパしたという世間一般にもありがちで、なんのドラマ性も感じないものだったし、二人の気持ちが近づく瞬間も「落としたサンドウィッチを拾う時に互いの手が触れる」という極めてベタなシーンに代表されるように、序盤に描かれる二人の関係には、終盤の「献身的な愛」を連想させるものはまったくありませんでした。

二人がデートする場所として小奇麗に「作った」湖畔のシーンが登場しますが、「こんなにキレイな場所なら愛は育って当然」と言われてもちょっと強引すぎます。そして、主人公が事件に巻き込まれて脳移植をするわけですが、そこまでの時間経過ははっきりとはわかりませんが、見ている側の感覚としては1~2ヶ月ぐらいにしか感じられません。これでは、蒼井優ちゃんが終盤、必死に「献身的に愛を捧げる女性」を演じても、それが滑稽にすら思えてきて、まったく虚(むな)しいものになってしまいました。

また、女優さんをキレイに撮ることも映画監督の重要な仕事のひとつだと思います。女優さんについて厳しい批評をするのは本レビューの趣旨とは反しますが、蒼井優ちゃんのヘアースタイルは何とかならなかったものでしょうか。女優さんの表現力の大部分はその表情にあると思いますが、時に長い髪の毛が顔の正面にかかってくるような状態でよくカメラを回せるものです。

後ろにまとめるヘアースタイルの方が絵的にずっとキレイだし、似合っていたと思いますが、キャラクター設定上の何らかの意図があったんでしょうか。今では「TSUBAKI」のCMをやっている女優さんとは思えないぐらい貧乏くさい雰囲気がフィルムに残ってしまいました。その点については監督の責任は大きいと思います。

こうなってくると、本作のもうひとつの重要な要素である医療シーンにもケチをつけたくなってきます。冒頭から登場する病室の無駄な面積の広さは、いかにも作り物であることを強調してしまっているし、特殊な患者とは言え、患者に対する医師たちの横柄な態度にも違和感を覚えてしまいました。

また、「バイタルは安定しています」などという台詞は、20年前なら病院の特殊かつ専門的な雰囲気を表現するのに十分だったかもしれませんが、『救命病棟24時』に代表される本格的医療ドラマが氾濫している現在では子供だましの台詞にしか思えません。そんなことでは本作の医療シーンに説得力を持たせるのには無理があり、作り手の浅薄さを冒頭から印象付ける結果となってしまいました。

良かったところを見出すのが難しい映画です。

総合評価 ☆☆☆☆
 物語 ☆☆☆☆
 配役 ☆☆☆☆
 演出 ☆☆☆☆
 映像 ☆☆☆☆
 音楽 
☆☆☆☆


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