2013年第4四半期のドラマ [ドラマレビュー]
2013年の第4クール、私が最後まで視聴したドラマの一覧と評価です。
Term | Title | Key Station | Cast | Script | C.D. | Rating | Own Rating |
4 | 刑事のまなざし | TBS | 椎名桔平 | 岩下悠子 | 鈴木浩介 | 7.96% | ★★★★☆ |
海の上の診療所 | フジテレビ | 松田翔太、武井咲 | 徳永友一 | 中江功 | 11.34% | ★★★☆☆ | |
ガラスの家 | NHK | 井川遥、斎藤工 | 大石静 | 渡邊良雄 | 8.71% | ★★★★☆ | |
リーガルハイ | フジテレビ | 堺雅人、新垣結衣 | 古沢良太 | 石川淳一 | 18.38% | ★★★★★ | |
ハクバノ王子サマ 純愛適齢期 | 読売テレビ | 優香、三浦貴大 | 藤井清美 | 熊坂出 | 3.60% | ★★★★☆ | |
都市伝説の女 | テレビ朝日 | 長澤まさみ | 後藤法子 | 塚本連平 | 7.51% | ★★☆☆☆ | |
ハードナッツ!~数学girlの恋する事件簿~ | NHK(BS) | 橋本愛、高良健吾 | 蒔田光治 | 河合勇人 | - | ★★★★☆ | |
※ 脚本担当者が複数いる作品については、トップクレジットを表記した。 ※ 視聴率は全話の加重平均値(ビデオリサーチ社、関東地区)。 |
ジャニスカ的最優秀作品賞 | ||
『 リーガルハイ 』 (フジテレビ) | ||
<優秀作品賞> 『ハードナッツ!~数学girlの恋する事件簿~』 (NHK=東宝) |
【 作品 】 事前の期待通り、やはり今クールは『リーガルハイ』(フジテレビ)が中心的存在となりました。「感動」という尺度で言えば、ジャニスカ的には前シリーズの方が心揺さぶられましたけど、レビューに書いたとおりあれは「誤算」であって、作り手が目指したものを確実に表現することに成功した意味では、前作を遥かに上回るクオリティだったと言えると思います。「真実はコメディである!」とはよく言ったもので、我々が生きているこの世界を構成しているのは人間たちの愚かで滑稽な営みであり、それこそが我々が目を逸らしてはならない真実なのであるというテーマを前作にも増して洗練された表現手法で描き切りました。
次点はBSで放送された『ハードナッツ!~数学girlの恋する事件簿~』(NHK)です。世の中に存在するあらゆるものが数式で表せるというコンセプトのもと、数学を専攻する女子大学生が事件を解決していくという、時流に乗りつつも目新しさも感じさせる佳作でした。また、主人公が事件解決に協力している刑事に片思いをするラブコメの側面も同時進行で描かれ、ミステリーでありながらも全体的にポップな印象の作品でした。来年には地上波でも放送されそうなので、今回ご覧になれなかった方はご期待ください。
『ハクバノ王子サマ 純愛適齢期』(読売テレビ)は、半沢のような「痛快系」ドラマが隆盛する中、ゴールデンタイムでは商品になりづらくなってしまった「共感系」のドラマだったと言えるでしょう。今となっては信じられないかもしれませんが、10年ぐらい前まではこういう系統のドラマばかりだったんですよ。どこにでもいそうな真面目で不器用な女の子の内的葛藤と成長が丁寧に描かれ、大いに感情移入してしまいました。どこまでいっても私はこういうドラマが好きなようです。
それ以外の作品についても短評を。『刑事のまなざし』(TBS)は、「人間は嘘をつく」という東野圭吾の小説を連想させるモチーフとそれを鋭い観察眼で見抜く刑事の活躍が一貫して描かれ、期待通りの硬派な仕上がりとなっていました。『海の上の診療所』(フジテレビ)は、離島を巡る診療船という舞台設定は悪くありませんでしたが、各回のエピソードは尽く「よくある話」で目の肥えた視聴者を感動させるには脚本の力が足りませんでした。ただし、月9らしいラブ要素は及第点。『ガラスの家』(NHK)は、『セカンドバージン』を思い出させるような大石静さんらしい作風で、美男美女の禁断の恋愛というわかりやすいストーリーが瑞々しく描かれました。また財務省の官僚組織の描写に代表されるような登場人物の背景が具体的かつリアリティをもって描かれることによって、ドラマチックな二人を巡る展開に説得力が生まれていた点も高く評価しています。『都市伝説の女』(テレビ朝日)は、脚本が分担制になって各話のクオリティにばらつきが出て、トータルでは前シリーズよりも評価を落とす結果になりました。
ジャニスカ的最優秀脚本賞 | ||
古沢良太 (『リーガルハイ』) | ||
<優秀脚本賞> 蒔田光治・山浦雅大・徳尾浩司 (『ハードナッツ!~数学girlの恋する事件簿~』) |
【 脚本 】 今、ドラマ脚本家のトップを走っているのが古沢良太さんと言っていいでしょう。今年は映画の脚本でも活躍が目立ちましたが、『リーガルハイ』を観てしまうと、やはり連続ドラマでこその脚本家という感じがしています。キャッチーで生きた台詞をテンポよく繰り出す言葉に対するセンスと、各回およびトータルでの構成力、そのどちらにおいても突出した才能をお持ちの方です。人間社会が抱える矛盾や不条理を風刺していく手法は前作よりもさらに一歩踏み込んだ印象で、曖昧だった真実の一端をあえて見せることによって、我々の心により深い思考を要求する作りになっていました。特に古美門と対峙する弁護士・羽生の言動に彼自身も気づいていない人間社会を構成する嘘や欺瞞、あるいはキレイ事を託しており、最終的に本当の意味での「真実」をわかりやすく浮き彫りにすることに成功しました。羽生という存在を好ましいものと思い続けていた視聴者にとっては、これ以上の「どんでん返し」は見たことがなかったのでしょう。そういう意味では古沢さんの思うツボだったわけです。
ジャニスカ的最優秀監督賞 | ||
河合勇人・橋本光二郎 (『ハードナッツ!~数学girlの恋する事件簿~』) | ||
<優秀監督賞> 石川淳一・城宝秀則・西坂瑞城 (『リーガルハイ』) |
【 演出 】 こちらは最後まで迷ったのですが、『ハードナッツ!~数学girlの恋する事件簿~』の演出を上位にとりました。『リーガルハイ』がテンポや見た目の面白さを重視した典型的なコメディ演出で成立してたのに対して、『ハードナッツ!~数学girlの恋する事件簿~』は、映像技術を駆使して最初からこのドラマの世界観(ある種の平行世界に近い)を提示することに成功しており、我々を主人公の思索や妄想に引き込でいく仕掛けは実に見事でした。ライティングや音の使い方はもちろん、画面の構成や「鈴木先生」以来の文字情報の使い方など、相変わらず細部へのこだわりが伝わってくるチームです。テレビ局所属のディレクターが絶対にやらないタイプの演出で、堤幸彦監督が出てきたときぐらいのインパクトだと思うのですが、あまり注目されていないのは視聴率でしか評価されないこの業界が持つ弊害のひとつでしょう。
ジャニスカ的最優秀主演男優賞 | ジャニスカ的最優秀助演男優賞 | |
堺雅人 (『リーガルハイ』) | 岡田将生 (『リーガルハイ』) | |
<優秀主演男優賞> 椎名桔平 (『刑事のまなざし』) | <優秀助演男優賞> 高良健吾 (『ハードナッツ!~数学girlの恋する事件簿~』) |
【 男優 】 堺雅人さんは前シリーズに続いての受賞となります。改めてコメントする必要もないでしょう。
『リーガルハイ』で岡田将生くんが演じた羽生という役柄は、言ってみればこの社会のジレンマを象徴するようなとても重要なキャラクターであり、ドラマの構造としては視聴者が感情移入する対象は古美門ではなく、羽生でなければなりませんでした。そういう意味では岡田くんが元来持っている清廉潔白な印象が、羽生の純粋な精神に説得力を持たせていたと思います。そして純粋すぎるが故の暴走や終盤に見せた狡猾さといった表現においてさらなる役柄の奥行きを感じさせるところは流石だと思いました。彼以外ではちょっと成立しがたいキャラクターだったかもしれません。
ジャニスカ的最優秀主演女優賞 | ジャニスカ的最優秀助演女優賞 | |
橋本愛 (『ハードナッツ!~数学girlの恋する事件簿~』) | 新垣結衣 (『リーガルハイ』) | |
<優秀主演女優賞> 井川遥 (『ガラスの家』) 優香 (『ハクバノ王子サマ 純愛適齢期』) | <優秀助演女優賞> 小雪 (『リーガルハイ』) |
【 女優 】 橋本愛ちゃんは、わかってはいたけどやっぱり素晴らしい才能を持った女優さんです。まだ十代にして様々な役をこなしてきている彼女でも、今回の役はけっこうなチャレンジだったと思うのですが、最初からキャラクターをきっちりと作り上げてきていて、それもまぁ魅力的でした。独特の台詞回しを最初からモノにしていたし、的確な計算の元、歩き方から佇まい、仕草でもキャラクターを表現しており、今作では彼女の技巧派女優としての側面が垣間見られました。また、今回は彼女自身のモノローグがかぶされるシーンも多かったのですが、表情のパターンが大変豊富な子で、観る者を飽きさせない女優さんです。私は表情のバリエーションは女優さんにとってひとつの大きな武器だと考えています。ジャニスカ的には多部未華子ちゃんとよく似たタイプの女優さんという印象を持っています。本作は「デカワンコ」のイメージですね。
新垣結衣ちゃんの登場率がやけに高くなっているこのドラマ賞。数年前までは正直なところ押し出される形というか、どちらかといえば消極的な受賞という感じでしたが、今年には入ってからは自信を持って選出しているつもりです。彼女の女優人生のおいてこの『リーガルハイ』という作品との出会いはとても大きいものだったのではないかと想像しています。この作品を通じて女優としてひと皮もふた皮も剥けて完全に表現のリミッターを外しましたよね。何でもできる、やってやるという意識を獲得した彼女は今後大きく飛躍していくはずです。来年は順番からいってTBSで主演ということになりそうですね。『ハクバノ王子サマ』のような等身大のラブストーリーで彼女を見たいですけど、そういう企画そのものに需要がなさそうなのは残念です。大物と競演というよりも彼女自身が作品を牽引するような作品を期待しています。
ジャニスカ的最優秀音楽賞 ジャニスカ的最優秀主題歌賞 和田貴史・橘麻美
(『ハードナッツ!~数学girlの恋する事件簿~』) 家入レオ / 太陽の女神
(『海の上の診療所』)
【 音楽 】 『ハードナッツ!~数学girlの恋する事件簿~』では、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」をモチーフにした楽曲が作品の世界観を表現するのに大きく貢献していました。二人ともまだお若い作曲家です。主題歌では演出上大きく貢献していたものがなかったのが残念ですが、鉄拳さんの漫画を使用した『海の上の診療所』のエンドタイトルが好きだったので、これにとてもマッチしていたこの曲にしました。ピアノで始まるイントロがきれいだし、ボーカルにも力があって、いつも主題歌向きの曲を作ってくれます。
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