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(2)最後から二番目の恋 [ドラマレビュー]

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『 最後から二番目の恋 』
第2回
( 2012年 フジテレビ 公式サイト

演出:宮本理江子 脚本:岡田惠和 出演:小泉今日子、中井貴一、坂口憲二、内田有紀、飯島直子

ベテラン脚本家をつかまえて失礼な物言いかもしれませんが、
テレビドラマの中に「ドラマ」を創る術を熟知している人が書いている脚本です。
典子(飯島直子)の夫・水谷広行(浅野和之)は、第1話では顔見せ程度の扱いでしたが、
千明(小泉今日子)の前にバナナを手にノコノコと現れれば、彼も一躍ストーリーの中心に仲間入りします。
また、一条さん(織本順吉)が和平(中井貴一)に持ち込んだお見合い話は、
その相手が部下の女の子・大橋知美(佐津川愛美)の母親であることが明らかになると、
彼女も一躍物語を掻き回す重要な存在になってしまいます。

何もないところに時にユーモアを交えながら自然に「ドラマ」を生み出していく手腕はさすがだと思います。

当然気になるのが主人公二人の関係ですが、こちらも第2話にして大きな進展があったと言っておきたいと思います。
長倉家で丁々発止のやりあいを繰り広げた昨日の今日で、二人が同じ歌を口ずさんでいたり、
長倉家の朝食で再び顔を合わせるや前夜の続きをどちらからともなく始めてしまうところに、
我々はやはりこの二人は「馬が合う」ということを確認することになります。
そういう流れがあって、万里子(内田有紀)が部屋にこもったシーンでは、
千明は行きがかり上、意図せず身を削った説得を試みてしまい、バツの悪い思いをします。
そして、この直後のシーンが二人の関係を劇的に変化させます。

妹のために必死に説得を試みてくれた千明に対して、和平は心の底から感謝したに違いありません。
彼は千明がさらけ出した過去の恥部や年増女の恋愛観を決して笑うことはしないのです。
和平は亡き妻への思いという彼自身の過去と恋愛
を千明に語ることによって、
この瞬間を恥じる千明の気持ちに報いようとするわけです。
このとき、アプローチは異なるものの「最後の恋」というキーワードで
二人の気持ちがつながるところが私は「大きな進展」だったと考えています。
また、千明の意図せざる告白によって対等だった二人の関係が均衡を崩しますが、
すかさず元のバランスに戻すところは恋愛ドラマにおける基本的なテクニックだと思います。

コメディという視点で言えば、広之が件のバナナを土産に長倉家を訪れ、それを和平が頬張っている絵とか、
千明のファッションの絶妙のダサさとか、和平と彼の娘・えりな(白本彩奈)の噛み合わない会話とか、
細かいけれど、レベルの高い仕事の積み重ねが感じられるドラマです。

関連記事 : (11)最後から二番目の恋 (2012-03-24)
(9)最後から二番目の恋 (2012-03-15)
(8)最後から二番目の恋 (2012-03-08)
(6)最後から二番目の恋 (2012-02-23)
(5)最後から二番目の恋 (2012-02-16)
(4)最後から二番目の恋 (2012-02-09)
(3)最後から二番目の恋 (2012-02-02)
(1)最後から二番目の恋 (2012-01-15)


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コメント 5

視聴者の一人(40代主婦)

あまりにも、豪華なキャストに楽しみにしていたのに、ドラマの内容にガッカリです。
特に、第3話では、もう、次を観る気が失せました。
中井貴一、小泉今日子が、ちょっと勿体ない感じがします。現実離れしてきて、もう楽しめません。小泉今日子のボランティア恋愛、気持ち悪すぎます。あんな役やらされて、彼女が可哀想。
by 視聴者の一人(40代主婦) (2012-01-27 15:37) 

ジャニスカ

そうですか。テレビドラマは映画とは違ってお金を払っているわけじゃありませんから、
気に入らないのなら観なければいいだけのことです。
それとドラマに対する不満を一個人のブログのコメント欄で発散するのはお止めください。
こういう時代ですから、あなたの意見を表明する方法はいくらでもあるはずです。
制作者に直接意見を伝える方法だってあります。どうぞこちらをご利用ください。
http://www.fujitv.co.jp/nibanmeno_koi/message/index.html
ただ小泉今日子さんに対して「可哀想」などというあなたの勝手な同情を押し付けるのは
失礼だと思うので、この場限りにしておいた方がいいと思います。

by ジャニスカ (2012-01-27 16:13) 

伊万里

横レスごめんなさい。
ただ、「40代の女が恋愛とか気持ち悪い」という意見があまりにもあちこちで見られたので逆に不思議に思いまして…。
「気持ち悪い」は個人の感覚なので正しいとか間違ってるとか言っても意味ないですけど、40代が恋愛したいと思ったり、性欲を持ったりすることはそんなに反社会的な人類を脅かすようなタブーなんですかね。
あまりにもそういう勢いなので、私はむしろそっちのほうが気持ち悪いです。

「恋愛」とか「セックス」とか、基本は「生殖本能」かもしれませんが、それだけではないし、もっと複雑な条件下で発動することがあるのは大人なら誰でもわかっていること。
ましてや、千明がアプローチしたのは独身男性ですし、不倫というわけでもありません。

一人で生きられるくらい頑張って稼いで税金払って、買い物や高い食事で消費活動にも貢献して(笑)、若い後輩の面倒もみて、傷つけられてもやりすごせるくらいの強さを持ち、でもそれだけだと「女捨てた」とか「バブル女」とか「こわい」とか陰口叩かれるし、じゃあ恋愛っぽいことをして気持ちに潤いを与えたいと望めば今度は「気持ち悪い」とか言われて。
じゃあ40代の独身女性はどうすりゃいいっていうんですか?

私はバブル世代でもないですし、千明と立場が同じってわけでもないですが、ヒステリックな叩かれ方が多くて少々辟易しています。
せっかく味わい深い良いドラマなのにそんなとこでひっかかるのか?とびっくり。

ごめんなさい。
せっかく管理人さんがかわしたのにマジレスしてしまいました。
これでこの話はやめますね。
3話以降のレビューも楽しみにしています。
by 伊万里 (2012-01-29 11:52) 

ジャニスカ

伊万里さん、コメントありがとうございます。
私も他人の感覚をどうこう言うつもりはないのですが、
他人の感情を無視して踏み込んでくる人は大嫌いです。
「私はこう思いますが、あなたはどう思いますか?」というコメントならまだわかるのですが、
私のブログのコメント欄がただ単に誰かの感情の捌け口に使われるのは愉快ではありません。

伊万里さんが書かれている「タブー」というのは世代によって、
あるいはその人の育った環境によって、線引きが全然違うんだと思います。
わかりやすいところで言うと『鈴木先生』における河辺彩香の台詞だって、
本編でも描かれているように人前で口にすることはタブーですけど、
そこから目を背けたら成立しないドラマだし、この『鈴木先生』というドラマが
ひとつのテーマとしていたと思われる「人間社会の本質」にも近づけなかったはずです。

私は千明に対する嫌悪感とは、
『鈴木先生』の視聴率が振るわなかった理由と通底しているような気がしています。
このドラマは『鈴木先生』がそうだったように、人間の本音や醜い部分に正面から向き合うことによって、
必ずや何かを表現しようとしているはずです。岡田惠和さんをみくびってはいけません。
画面に映し出された表面的な事件や喜怒哀楽でしか作品を楽しむ術を知らない人には、
本作や『鈴木先生』のようなドラマはレベルが高すぎるんだと思います。
映画やドラマを観るときは、常に感性を鋭くしておきたいものです。

私自身、この問題には決着を付けておきたかったので、
むしろ掘り下げていただいてありがとうございました。
次回以降、心置きなくドラマを楽しんでいきましょう!(^^)

by ジャニスカ (2012-01-30 19:05) 

伊万里

そうか!
カーベーか!!

…と思わず膝をたたいてまた出てきてしまいました。
すみません。

すごい納得です。
『鈴木先生』と本作は、タッチもテイストもジャンルも全然違うけれど、なるほどたしかに斬り込んでいくアプローチは似ていますね。
あのドラマも初回からはっきり「見る人」を選んでいたし。

正直、『鈴木先生』の初回を見終えた時点では自分があんなに熱狂するとは思わなかったんですが、最後まで見たら人に勧めたくて勧めたくて「この人はわかってくれそう」という人を選んでBSの再放送視聴をプッシュしまくりました。
その結果、初回では「これは大胆な話だな〜」「今の子ってこんな大人なの?」と引き気味な反応だった人も、最終話まで見終えたあとには大絶賛状態になりました。

あれも「たてまえと本音」の問題に踏み込まないように本能的にブレーキをかけている人にとっては触れられたくない種類のドラマだったんでしょうね。

ますます岡田さんにエールを送りたくなりました。
きっと「40代の恋愛キモい」と反発されることも想定内なんでしょうね。
そう思って、私も心を広く持ちつつ(笑)毎週木曜日を楽しみにすることにします。
by 伊万里 (2012-01-30 21:34) 

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