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(8)鈴木先生 [ドラマレビュー]

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『 鈴木先生 』
第8回
( 2011年 テレビ東京=アスミック・エース 公式サイト
監督:河合勇人 脚本:岩下悠子 出演:長谷川博己、臼田あさ美、土屋太鳳、田畑智子、富田靖子、でんでん

やはりこのドラマが表現しようとしているものは我々の想像をはるかに凌駕しているようです。漠然とではありますが、これまでのストーリーは最初からこれをやりたいがために構成されていたと感じています。私はこれまでのレビューにおいて、本作がつむぎだすエピソードは我々が生きる現実社会に当てはめて考えるべきもので、大人が自らの価値観を見直すきっかけとしなければならないということを述べてきました。今週はそういう本作の大きなテーマが投影されている登場人物が実は鈴木先生(長谷川博己)で、彼自身が一般的な「大人」を代表する存在だったという事実が明らかになった回だったのではないでしょうか。可能であれば、第7話までを再度見返していただき、面倒でなければ、これまでのレビューを再度読み返していただきたいのですが、今回鈴木先生が陥ってしまった教師人生最大の危機とそこに至る過程には、これまで描かれてきたエピソードが集約されているような気がしています。

たとえば、足子先生(富田靖子)の鈴木先生への対抗心と嫉妬心は、第3話までで描かれた山崎先生(山口智充)のそれとほとんど差異はないし、さらに言えば、第5話で描かれた小川蘇美の苦悩、すなわち自分らしさを封印して仮面をかぶって生きていかなければならないという現実社会の不条理にも通じるものがあるかもしれません。つまり、鈴木先生が実践した「鈴木式教育メソッド」とは、言ってみれば自己主張に他ならず、足子先生の中に醸成された嫉妬心とは、鈴木先生が社会生活を営む上での暗黙のルールを侵してしまった(=いつの間にか仮面を脱いでしまっていた)結果とも言えるかもしれません。また、第4話の「竹地事件」で巧みに描かれていた事象のように鈴木先生は意図せざるところで足子先生を傷つけていたとも言えます。これは第2話で描かれた食事マナーに関するエピソードにも通じるところがあって、自分の行動の結果を見届けるということは、社会人の責任であり、鈴木先生はこの点を疎かにしてしまった可能性があります。

今回、鈴木先生が陥った危機のうち最大のポイントは、恋人の秦麻美(臼田あさ美)の妊娠が生徒たちに発覚してしまったことですが、第6話で描かれた鈴木先生の性に対する価値観に立てば、ある意味、「できちゃった結婚」は必然だと思います。つまり、双方に「覚悟」が伴っている以上、それによって「生まない」という選択肢はありえないし、それによって二人の関係が壊れることもありえませんから、どちらが先でどちらが後だという話はあまり意味がありません。しかし、それはあくまでも鈴木先生の価値観に立ったときに成立する話であって、竹地の母親の反応に代表されるように現実社会のおいては容易に受け入れてもらえるものではないでしょう。ましてや鈴木先生は教師なのです。第7話で鈴木先生が語った「許されているに過ぎない価値観」とは果たして何だったのでしょうか。鈴木先生独自の恋愛観および性理論は、彼がそれらをどれだけ信じていようとも、彼が教師であるが故に許されない可能性が出てきました。

今週はクライマックスに向けての助走的な意味合いが強い回で、言うまでもなく鈴木先生がこの窮地をどう切り抜けていくのかが今後の焦点となってきます。鈴木先生が置かれた状況とは、上述のとおり極めて複雑であり、私自身頭の中でうまく整理できていないのですが、少なくともこのドラマが描こうとしていることは、たとえばあのドラマのように主人公が結婚するとかしないとか、主人公が教師を辞めるとか辞めないといった表面的な問題ではないのは確かです。表面的なエピソードの裏側に存在するテーマを読み取る・・・もちろんこれまでもそうだったのですが、我々はこれまでにも増してその事を肝に銘じ、残された第9話と最終話に心して向き合わなければなりません。

関連記事 : (10)鈴木先生 (2011-06-30)
(9)鈴木先生 (2011-06-24)
(7)鈴木先生 (2011-06-10)
(6)鈴木先生 (2011-06-05)
(5)鈴木先生 (2011-05-26)
(4)鈴木先生 (2011-05-19)
(3)鈴木先生 (2011-05-13)
(2)鈴木先生 (2011-05-06)
(1)鈴木先生 (2011-04-29)

< 付記 >
第4話で竹地の吐瀉物を掃除した堀の内七海役の松岡茉優ちゃんが河合勇人監督にインタビューをしています。
http://odoroku.tv/vod/0000041E8/512.html (前編 20:41)
http://odoroku.tv/vod/0000041F7/512.html (中編 15:05)
http://odoroku.tv/vod/000004204/512.html (後編 21:31)
視聴するにはWindowsMediaPlayerが必要です。

<参考 : 緋桜山中2年A組 人物関係図>
http://www.tv-tokyo.co.jp/suzukisensei/special/book/book_img03.html 

<参考 : ネット局>
 ・ テレビ東京(関東広域圏)
 ・ テレビ北海道(北海道)
 ・ テレビ愛知(愛知県)
 ・ テレビ大阪(大阪府)
 ・ テレビせとうち(岡山県、香川県)
 ・ TVQ九州放送(福岡県)
 ・ 岐阜放送(岐阜県)
以上が同時ネット。以下は放送日時が異なる。
 ・ テレビ和歌山(和歌山県)※13日遅れ
 ・ テレビ熊本(熊本県)※15日遅れ
 ・ 新潟テレビ21(新潟県)※40日遅れ
 ・ BSジャパン(全国)※7月2日(土)22:00より放送開始。
http://www.tv-tokyo.co.jp/suzukisensei/onair/index.html


タグ:鈴木先生
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めい

ジャニスカさん、レビュー有難うございます。
今回のレビューも感心して読ませていただきました。
ドラマは次回大変なことになりそうですね。
でもそれが、深い学びにつながることか、と期待したいです。
なにより自分が学んでいます。
by めい (2011-06-19 08:56) 

ジャニスカ

めいさん、こんにちは~。
今回のレビューは、正直なところあまり確信を持って書いたものではありません・・・
たくさんテレビドラマを観ていると、ほとんどの場合、ある程度の「型」のようなものがあって、
どんなドラマでも、それらのいくつかの型に当てはめることによって結末を類推することが可能なのですが、
このドラマはちょっとどの型に当てはめて考えていいのか皆目見当が付かないというのが正直なところです。
少なくともこのドラマを型にはめて観てはいけないということだけははっきりしているといった感じです。

今まさに鈴木先生が陥っている窮地は、
我々にも形を変えて起こりうる性質のものであるという意識で残り2話を観なければならないと思っています。
ただその場合、我々の心にも強烈なメッセージが突き刺さるかもしれないことを覚悟しなければなりません。
これまででも十分にグサグサ突き刺さってきましたからねぇ・・・
クライマックスに向けては、相当な覚悟が必要かもしれません。
次回の予習映像を観ただけでも、けっこう憂鬱です(^^;。

by ジャニスカ (2011-06-19 15:05) 

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