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(下)夏の恋は虹色に輝く [ドラマレビュー]

『夏の恋は虹色に輝く』
(2010年 フジテレビ 全10回)
演出:澤田鎌作 ほか 脚本:大森美香 出演:松本潤、竹内結子
          Official Wikipedia / TV Drama DB          

当初はそれなりに期待度の高かったドラマですが、
演出的にもエピソード的にも第1話がクライマックスで、回を追うごとにトーンダウンしてしまった感があります。
私はこのドラマで脚本の大森美香さんの作風が好きではないということをはっきりと確認することになりました。

一言で言えば、軽い、軽すぎる・・・。
とにかく表面的なドラマの積み重ねによって展開するストーリーは、答えがすべてそこに存在していて、
ストーリーの裏側を想像する余地、もっと言えば想像する楽しみを視聴者から奪ってしまっています。
やっぱり「謎」が微塵もないドラマに魅力を感じることはできません。

このドラマのアウトラインは最初から最後まで主人公二人がくっつくのかくっつかないのか以上のものはないわけですが、
(ラブストーリーなんだから、それで十分とも言えるが・・・)
冷静に振り返ると二人の間に存在する「障害」は北村詩織(竹内結子)の亡夫の存在が主なものであって、
それだけでよくここまで引っ張れたものだと、ある意味感心してしまいます。
そのあたりのことは第4話で明確になり、義理の弟・北村春樹(塚本高史)の登場で若干の盛り上がりを見せましたが、
宮瀬桜(桐谷美怜)と同様、
恋のライバルとしては端(はな)から役不足の感があったのは否めないところです。

また、「障害」という意味では、最終回を前に海(小林星蘭)ちゃんが
楠太雅(松本潤)の「お父さんになる」という言葉に敏感に反応して、最終回へのブリッジとしていましたが、
これはちょっと唐突だったし、既定路線だったとしても、最終回を盛り上げるエピソードとしては弱かったような気がします。

そのような視点で言うと、
私は最終回に友情出演していた深田恭子ちゃんを見て、若干の胸の高鳴りを覚えてしまいました。
というのも、詩織にとっての恋のライバルが宮瀬桜ではなくて、詩織と同世代の大人の女性だったとしたら、
もっと違った盛り上がり方をしたのではないかと感じたからです。
深田恭子ちゃんは結果的に2シーンのみの出演という完全なるカメオ扱いだったわけですが、
ここからもうひとドラマ作れるのではないかというぐらいの存在感があったし、

「彼、おもしろい・・・」

という台詞に、私は最終回にして、いろんな想像を巡らせてしまいました。
これは脚本上は太雅の成長を第三者が客観的に表現するような台詞でしかなかったわけですが、
仮に物語の中盤でフカキョンが登場してこの台詞を言ったら、全然違った意味が付与されて、
ドラマが大いに盛り上がったのは間違いないと思いますがいかがでしょうか。

このドラマの最大の欠点は二人の間に存在する「障害」が弱いところで、
そもそも「死んだ人が強力なライバル」というのはラブストーリーでは使い古されたものだし、
主人公がそれに打ち勝てないようなドラマならば、見る価値はないと言ってしまってもいいぐらいのものでしょう。
このドラマにより現実的な「障害」として深田恭子ちゃんが登場していたら、最後までハラハラドキドキしただろうなぁ・・・

その一方で、主人公の楠太雅というキャラクターは、とてもよくできていたと思います。
真面目で努力家、でもそれが空回りしている楠太雅というキャラは、誰もが応援したくなるような性質を持っていて、
松本潤くん自身の人柄や彼を応援している人たちが持っているイメージを上手にキャラクターに反映させていたと思います。
大森美香さんは、やはり登場人物のキャラクターでドラマを牽引していくタイプの脚本家ということになると思います。

このドラマがキャラクタードラマというジャンルに当てはまるとは思いませんが、
私はその手のドラマにはあまり好感を持ったことがありません。
ちなみにNHKの大河ドラマ『龍馬伝』を書いている福田靖さんは、
『HERO』や『ガリレオ』でキャラクタードラマというジャンルを確立させた脚本家のひとりということになるでしょう。

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タグ:竹内結子
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