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(上)素直になれなくて [ドラマレビュー]

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『素直になれなくて』
(2010年 フジテレビ 全11回)
演出:光野道夫 ほか 脚本:北川悦吏子 主演:瑛太、上野樹里
          Official / Wikipedia / TV Drama DB            

北川悦吏子さん、久々の連ドラ脚本ということでとても楽しみにしておりました。
期待値が大きいという前提で、第1話の感想を述べると、「北川的」ストーリー展開のセオリーは健在でしたが、
セオリーに嵌(は)めていきたいがためなのか、ちょっと強引な展開がしばしば見られました。

たとえば、主人公二人が出会う喫茶店のシーンですが、コーヒーをこぼしてしまったハル(上野樹里)に対して
ナカジ(瑛太)が痴漢呼ばわりするというのは、ちょっとおかしいですよね。
これは、「出会いは最悪・・・でも実はいい奴だった」という北川脚本の最も基本的なセオリーを狙ったものと思われます。

また、二人の家が近いというのはドラマ制作上の許容しなければならない設定ではありますが、
オフ会の後にいきなりハルがナカジの部屋を訪れるというのはちょっと性急な印象を持ちました。
しかも、そうなってしまう過程が「汚してしまったズボンをクリーニングするしないで口論しているときに
ハルが転んでひざを擦りむいてナカジがおんぶして自分の部屋に連れて行く」というものであり、
とてもじゃないですが、ベテランの脚本家が書くような話の進め方とは思えません。

私は、中盤までの性急で強引なストーリー展開については、北川脚本らしからぬ稚拙さすら感じてしまいました。
二人の出会いにはもう少しオリジナリティのある劇的なアイデアを盛り込んで欲しかったところです。
考えるのが面倒になっちゃったんでしょうか?

その一方で、「北川節」は健在でした。第1話で私が「しびれた」台詞を二つ紹介します。
ナカジがハルの携帯待ち受けの写真を見て、
その写真がツイッターでハルに励ましてもらった直後に撮ったものであることを明らかにします。
そして、ナカジの台詞:

「だからその写真は、ハルのガンバレ、でできてんの」

並の脚本家では書けない台詞だと思います。
これは、それまでの多少強引な展開を相殺してしまうような力強さを秘めた台詞であり、
二人の距離が一気に縮まったことを印象付けるには、大変な説得力を持った台詞であると言えます。

もうひとつは、新しいズボンを手渡すために再びハルとナカジが喫茶店で会うシーンです。
まず、ナカジがハルに痴漢呼ばわりをしたことを謝罪した後に、コーヒーに砂糖とミルクを入れるか、
という何気ない会話を盛り込むことによって、二人の間の壁が取り払われたことを表現するあたりは流石だと思いました。
そして、
その直後に二人は再び険悪なムードになり、ハルが席を立ちますが、ナカジがハルを引き止めて:

ナカジ
ハル

「そのサヨナラは永久なの?」
「半・・・永久的に・・・」

「永久」という単語は日常会話としてはちょっと硬くて大げさな印象がありますが、
二人にとってはこの単語を使うに値する状況だったし、「二人のこれから」を我々に強く意識させるような表現だと思います。
そして、その「永久」という単語に「半」を接いだところに、ハルの複雑で微妙な心理を見事に含ませています。

終盤には、駅のホームで線路を挟んで会話するといういわゆる「北川シチュエーション」が登場して、
「キターッ!コレッ!」と思ってしまいました(^^;。
ナカジがハルに缶コーヒーを投げて、その缶に「ガンバレ!」というキーワードが書かれているあたりにも
北川脚本らしさを感じました。

さて、すでに様々なメディアで取り上げられていますが、
私もこのドラマの製作者は「ツイッター(twitter)」というものを誤認しているような気がしました。
どうみても、チャットや掲示板との差別化がなされておらず、
登場人物が出会うツールが「ツイッター」でなければならない必然性が感じられません。

終盤にドクター(ジェジュン)が飲みに誘うのにツイッターを使用しますが、
すでに出会っている者同士ならば携帯メールでもいいわけで、
第1話にして、ドラマツールとしてのツイッターはその役割を終えているとも言えます。

そういう根本的な欠陥を抱えてこのドラマはどこに進んでいくのでしょうか?
時代を象徴する新しいものに着目して、すかさずドラマに盛り込んでいく姿勢はフジテレビらしいものですが、
今後「ツイッター」というツールをどのように生かしていくのでしょうか。見届けさせていただきます。

関連記事 :(下)素直になれなくて(2010-06-25)
ハルフウェイ(2009-11-21)


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コメント 2

テンコ

こんばんは!
「素直になれなくて」の記事も書かれていたんですね。
またまた、しつこくお邪魔いたします。

私はあまり日本のドラマに詳しくないのですが、北川悦吏子さんの脚本作品はいくつか観ているので、おっしゃるように、セオリーがありますね。
>これは、「出会いは最悪・・・でも実はいい奴だった」という北川脚本の最も基本的なセオリーを狙ったものと思われます。

こう考えると、「ロングバケーション」にしろ、「ラブ・ストーリー」にせよ、みんなこれですね。ある意味、ワンパターンですが、韓国ドラマでもよくあります。少女マンガのツンデレ系の恋愛物のパターンでしょうか。

>「だからその写真は、ハルのガンバレ、でできてんの」
確かにこのセリフ、北川さんらしいし、しゃれた言葉で、ステキでした。
その後の「そのさよならは永久なの?」もなかなか良いと思いました。

この後の回で、またガンバレが出てきて、「私のガンバレを返して」と言いましたが、こうなるとちょっとわざとらしくなりましたね。
それから、「その思わせぶりがいけない」を何度も使うようになったりしていくうちに、私はちょっと、寒くなってきました。すみません、ついつい熱く、突っ込みをいれすぎました(笑)。

1話でツイッターの役割を終えてしまいましたね。これについては批判が多いようで、なんだか深く考えないで作った感じのする脚本です。
by テンコ (2010-06-03 18:58) 

ジャニスカ

テンコさん、こんばんは。コメントありがとうございます!
ブログを通じていろんなドラマのお話ができるのは、とってもウレシイことです(^^)。

私は、この記事を書いた時点では、
気合を入れて毎週印象に残ったセリフを取り上げて紹介していくつもりだったんですが、
第2回を見て断念することにしました。

それは、まったく仰るとおり、
「ガンバレ」というキーワードと「その思わせぶりがいけない」の濫用が鼻に衝いてしまったからです。
どちらもほぼ毎回、いまだに登場してますもんね。
そもそも「ガンバレ」なんて普通の言葉ですから、、、ここまで引っ張るとは思っても見ませんでした。

同じセリフのリピートは、もちろん効果的な場合もありますが、
この場合は手抜きと捉えられても仕方がないかもしれません。
北川さんはこういうことをする方じゃなかったんですけどねぇ、、、
昔のように印象的なセリフの量産ができないのかもしれません。

私は北川脚本では「Love Story」(TBS)が大好きなんですが、
「役柄の特徴」と「俳優さんの個性」を活かしきったセリフのやり取りはとても生き生きしていました。
特に今回は上野樹里ちゃんの個性が全然活かされていないのが残念です(ノ_-;)ハア…。

それでも最終的には総括として再びこのドラマのレビューを書くつもりでおりますので、
またお立ち寄りください!
by ジャニスカ (2010-06-03 21:12) 

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