SSブログ

(3)空飛ぶ広報室 [ドラマレビュー]

2013041601.jpg

『 空飛ぶ広報室 』
第3回
( 2013年 TBS 公式サイト

演出:山室大輔 脚本:野木亜紀子 出演:新垣結衣、綾野剛、柴田恭兵

本作はどちらかと言えば主人公の成長物語であって、純粋なラブストーリーとは言えませんが、
稲葉リカ(新垣結衣)と空井大祐(綾野剛)の関係を軸に物語が展開していくドラマであることは間違いなく、
二人の関係性がどのような性質のものに発展していくのかが、ストーリー上、とても重要な焦点となってくるでしょう。
というわけで今回は本作のラブストーリーとしての側面にスポットライトを当てておきたいと思います。

ラブストーリーにはいくつかセオリーがあって、ある程度類型化することが可能かと思いますが、
これを本気でやりだすと大変な作業なので、別の機会に譲るとして、ラブストーリーとしての本作について言及しますと、
リカと空井の関係は、ほぼ最初から相思相愛で始まっているパターンと言ってよいと思います。
そのことが確認できるのが前回のラストシーンであり、今回の冒頭シーンだったわけです。

前回レビューでも少し触れたとおり、前回のラストシーンでは二人が将来に対する価値観を共有する中で
それぞれが垣間見せた表情に二人それぞれが魅せられてしまう瞬間を捉えたショットが挿入されていました。
最後に空井が「さっきは少しかわいかったのになぁ」と独りごちているように、二人ともが相手の表情に異性としての魅力を
感じていたのは言うまでもなく、はっきりと「二人の関係が始まった」のが前回のラストだったと考えられます。

そしてそれを裏付けるかのように、今回冒頭の懇親会のシーンでは、二人のプライベートに迫る質問に対して
「固唾を呑んで、安堵する」というまったく同じリアクションをする二人の表情がしっかりと挿入されています。
このあたりは完全にギブアンドテイク。どちらの気持ちが先行することも遅れをとることもないし、おそらくこの先も、
どちらかが与えればもう一方がそれをしっかり受け止めて同じように返す、という関係が継続するものと思われます。

ただし、あくまでも個人的見解であり、希望的観測だということを断った上で申し上げると、
二人の関係は当分は一線を越えないですよ。もしかしたら最終回のラストまで。
たぶんそういうドラマです。どうして一線を超えない(恋人同士にはならない)のかと言えば、
今のところ、というよりもおそらく終盤まで、二人の間には「壁」が存在し続けるからです。
「壁」と言っても本作の場合は克服しなければならない「障害」という意味ではなくて、一言で言えば「立場」ですな。
これは障害とは違って乗り越えられない。つまり取材する側と取材される側というリカと空井の公の関係が終わらない限り、
プライベートの関係も新しいステージには進めないわけです。実はこれが一番切ないですよ。まぁ私の感慨ですが(^^;。

たとえば、前回の空井の台詞にこんなものがありました。

 「もっと、お近づきになれたらと・・・」
「まずは、知ってください。僕らのことを」

これらの台詞は、普通の男女関係であれば、ほとんど好意を表現した言葉になります。
でも本作の場合、二人の「立場」がこれらの言葉に別の響きを与えていると言えるでしょう。
実際、ひとつ目の台詞を聞いたリカは、一瞬でも「立場」を超えた気持ちを抱いてしまっており、
リカが勘違いに気がついた瞬間とはつまり、二人の間にはっきりと「立場上の線引き」ができた瞬間でもあります。
二人の間に「壁」を作る巧妙なシーンですね。そういう意味ではこの空井の言葉は天然とは言え、罪作りですねぇ。
これについては今回のラストシーンで空井の名前を挙げてくだを巻くリカの姿にも同じような意味合いがあるかもしれません。

というわけで二人の関係が真に深いものになるためには、「立場の変化」が不可欠であり、
少なくとも終盤までは二人の関係は一進一退、視聴者としてはもどかしい思いをするかもしれません。
でも、ジャニスカ的にはこういう状態の男女二人の関係性が何よりの大好物なのです(^^)。
これまでもいくもの映画やドラマのレビューで触れてきている「二人の距離感の表現」ですね。
今後も二人の「立場」と「気持ち」を逆説的に介在させるような巧妙なシーンがいくつも登場するものと考えられます。
本作のラブストーリーとしての側面は、以上のようなことを頭の片隅においてご覧になってみてください。

関連記事 : 2013年第2四半期のドラマ (2013-06-30)
(4)空飛ぶ広報室 (2013-05-10)
(2)空飛ぶ広報室 (2013-04-24)
(1)空飛ぶ広報室 (2013-04-16)


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:テレビ

Twitter 20130501 [Twitter]