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2013年第3四半期のドラマ [ドラマレビュー]

TermTitleKey StationCastScriptC.D.RatingMy Rating
3救命病棟24時フジテレビ松嶋菜々子、時任三郎飯野陽子田島大輔14.62%★★★★
激流~私を憶えていますか?~NHK田中麗奈吉田紀子佐々木章光8.35%★★★★
Woman日本テレビ満島ひかり坂元裕二水田伸生13.58%★★★★★
DOCTORS 最強の名医テレビ朝日沢村一樹、高嶋政伸福田靖本橋圭太18.32%★★★★★
Oh,My Dad!!フジテレビ織田裕二安達奈緒子河野圭太9.30%★★★★
町医者ジャンボ!!読売テレビ真木大輔、忽那汐里深沢正樹大塚徹%★★★☆☆
リミットテレビ東京桜庭ななみ清水友佳子塚原あゆ子%★★★★
七つの会議NHK東山紀之宮村優子堀切園健太郎5.92%★★★★
夫婦善哉NHK森山未來、尾野真千子藤本有紀安達もじり7.35%★★★★
ダブルトーン~二人のユミ~NHK(BS)中越典子、黒谷友香山本あかり三木康一郎-★★★☆☆
かすていらNHK(BS)遠藤憲一羽原大介吉村芳之-★★★★
 ※ 脚本担当者が複数いる作品については、トップクレジットを表記している。※ 視聴率は全話の加重平均(ビデオリサーチ社、関東地区)。

【 総評 】 つまらないドラマは早々に放棄したということもあって、私が視聴したドラマは全体的にいい作品が多く、今クールはけっこう充実した時間をすごせました。上位2作品については後ほど触れるとして、ここではそれ以外の作品について言及しておきます。

『救命病棟24時』(フジテレビ)は、本格医療ドラマの老舗だけあってストーリーも演出もさすがの安定感だったように思います。医療現場に奉仕する人間を描くという主眼を最後まではずさなかったし、常にそのためのエピソード作りがなされており、大掛かりな事故や事件に頼らなかった本を高く評価しています。最終回の院内感染は医療ドラマとしては目新しい題材ではありませんが、エピソードのスケールとしては適当なものだったと思います。『激流~私を憶えていますか?~』(NHK)は、ミステリー要素を含んだ群像劇といったタッチで、私と同世代を描いているということもあってけっこう感情移入して観ていました。主要なキャラクターそれぞれが満遍なく生かされたストーリーだったし、この世代の芝居巧者が顔を揃えた作品ですから自ずと安定したクオリティとなりました。あまり話題にならなかった『Oh,My Dad!!』(フジテレビ)は、トータルの完成度は高くてとてもいいドラマでしたよ。前倒しで撮影されてたということもあるんでしょうけど、数字が悪いからといって小細工を弄したような形跡はなく、俳優を含めて作り手が表現したいものを最後まで貫いた印象です。私はこの作品を通じて安達奈緒子さんの作風が好きだということを確信しました。『七つの会議』(NHK)は、演出的クオリティが極めて高く、間接的かつ婉曲的な表現を積み重ねることによって視聴者を主人公が選んだ結論に導いており、TBSの『半沢直樹』がお子ちゃまのドラマだとすれば、こちらは正真正銘の大人のドラマだったと言えるでしょう。最終回はこれからとなる『リミット』(テレビ東京)は、実は見た目よりもずっと硬派なドラマで、人間社会が慢性的に抱える歪や欠陥のようなものを縮図化して、これをサバイバル空間という必要最小限の人数で構成されるコミュニティの中で浮き彫りにしようとする意欲作でした。毎回登場人物の一人を取り上げて彼女たちの心情を掘り下げるアバンの映像がストーリーを効果的に補完していて、演出的見所も多かったです。

ジャニスカ的最優秀作品賞
 『DOCTORS 最強の名医
(テレビ朝日)
 
 <優秀作品賞>
『Woman』
(日本テレビ)
 

【 作品 】 全体的に良作が多かった中でもこの2作品のクオリティは抜けていました。正反対のテイストと言ってもいい二つの作品ということもあるし、評価に差をつけることにそれほど意味があるとは思っていないのですが、決めるとすれば当然私が好きなドラマの方を上位に取るということになります。『DOCTORS 最強の名医』(テレビ朝日)のストーリーは、リーダー論とか組織論のような実社会でもそのまま生きてくるようなモチーフがベースになっていて、医療ドラマと言うよりもサラリーマン向けのビジネス書のようなドラマでもありました。本作は基本的にコメディですが、現実の会社や組織を丹念に取材しており、リーダーが組織を改革したり牽引していくために具体的に何を為すべきなのかを提示した社会派ドラマの側面もあったということも指摘しておきたいと思います。

『Woman』(日本テレビ)は、母子家庭が置かれている現状を丁寧に取材して一般的なシングルマザーの心情をリアルに描き、そこにさらに個別の具体的な母子の心情が絡んでくるというストーリーで、多様な母娘関係を多様な描き方で見せたドラマだったと言えます。それぞれが抱える事情は特殊ではありますが、行き着くところは互いに対する普遍的な母娘の感情であり、最終回のまとめ方は本当に素晴らしかったと思います。必ずしも私の好きなタイプのドラマではなかったのですが、本作のような本当の意味での人間の生き様(よう)を投影した硬派なドラマが淘汰されて、某高視聴率ドラマみたいな硬派な体を装ったドラマばかりになったら、日本のテレビはもう終わりです。

ジャニスカ的最優秀脚本賞
 坂元裕二
(『Woman』)
 
 <優秀脚本賞>
福田靖
(『DOCTORS 最強の名医』)
 

【 脚本 】 作品賞同様、こちらも好きな方を上位に取るつもりだったのですが、『Woman』最終回の台詞遣いは圧倒的な情感とリアリティを持って表現されており、最終的には坂元裕二さんを上位にするしかないと結論付けました。今年は『最高の離婚』(フジテレビ)に続く受賞となります。ほとんど会話劇と言ってもいいドラマでしたが、とにかく印象的な生きた台詞が多かったですね。男を寄せ付けない連綿とした女の血の繋がりという壮大なテーマを一つの家族に凝縮した重厚なドラマでした。このテーマは先日フジテレビで放送されたスペシャルドラマ『花の鎖』(湊かなえ原作)と似ているかなという気はしました。いづれにせよ普遍的なテーマをストーリー構成、キャラクター作り、台詞などあらゆる面で他を寄せ付けない圧倒的なクオリティで表現することに成功したのが『Woman』ということになるでしょう。

『DOCTORS 最強の名医』の脚本は本当に魅力的でした。主人公から脇役まで登場人物の個性を立たせた福田靖さんお得意のいわゆるキャラクタードラマだったわけですが、福田靖さんのもう一つの代表作『HERO』(フジテレビ)に匹敵する傑作ドラマだと言っていいと思います。今シリーズで特に強調されていた相良先生の崇高な理想をベースにした「腹黒さ」というものは格別な個性であり、裏の裏の顔があるとわかっているだけに今度は何をやってくれるんだろうというワクワク感が常にありました。そしてなんと言っても森山先生の小学生並の発想と言行は前シリーズよりも一層パワーアップしており、こちらはバカバカしさの極みといったキャラクターでした。この対照的な二つの個性を見事に競演させ、融合させたストーリーは、福田靖さんでしか為しえないハイレベルな仕事だったと思います。

ジャニスカ的最優秀監督賞
 水田伸生・相沢淳
(日本テレビ/『Woman』)
 
 <優秀監督賞>
堀切園健太郎(NHK)
(『七つの会議』)
本橋圭太(アズバーズ)・猪原達三(フリー)
(『DOCTORS 最強の名医』)
 

【 演出 】 この四半期ごとのレビューをずっと読んでくださっている方ならお気づきかと思いますが、私は日本テレビのディレクターを高く評価したことはなくて、映画作品を観る限り水田伸生監督の作風についても必ずしも好きとは言えません。しかし、『Woman』の演出手法は、テレビドラマを20年近く観ている私のような人間でもちょっとお目にかかったことがないタイプのもので、びっくりしたというのが本音です。正直に申し上げると、これまで執筆してきたドラマレビューで言及してきたようにこのドラマの演出は具体的にどうだということを言えないのがもどかしく、とりあえずスゴイのが分かったと言ったところです。繰り返し観れば何らかの手がかりを掴めるのかもしれませんが、もう一度観る気力はありません。それとセカンドディレクターの相沢淳監督は昨年放送された『トッカン-特別国税徴収官-』(日本テレビ)を観て日本テレビにも実力のあるディレクターがいるということを認識したのですが、やっぱりこういうシリアスな作品もいけますね。

ジャニスカ的最優秀主演男優賞 ジャニスカ的最優秀助演男優賞
沢村一樹
(『DOCTORS 最強の名医』)
 高嶋政伸
(『DOCTORS 最強の名医』)
<優秀主演男優賞>
東山紀之
(『七つの会議』)
織田裕二
(『Oh,My Dad!!』)
 <優秀助演男優賞>
吉田鋼太郎
(『七つの会議』)
小林薫
(『Woman』)

【 男優 】 DOCTORS 最強の名医のお二人は見事でした。そもそもキャスティング自体が大成功なのでプロデューサーの功績も大きいのですが、お二人とも作り手に要求されているものにさらに独自のエッセンスを加味していて、前作にも増してそれぞれに役を自分のものにしておられました。沢村一樹さんは元来清廉潔白な人柄が漂う風貌の中にフッと垣間見せる裏の顔がいつも我々をワクワクさせてくれました。沢村さんは連続ドラマの主演というイメージはなかった方ですけど、ここにきて代名詞とも言える役に出会ったと言ったところでしょうか。高嶋政伸さんは前作でもそのお芝居を高く評価したのですが、あらゆる意味でスケール感を増していましたね。最低の人格だけどだからこそ憎みきれないという絶妙なバランスを演じておられたように思います。

ジャニスカ的最優秀主演女優賞 ジャニスカ的最優秀助演女優賞
満島ひかり
(『Woman』)
 田中裕子
(『Woman』)
<優秀主演女優賞>
田中麗奈
(『激流~私を憶えていますか?~』)
 <優秀主演女優賞>
田中美佐子
(『激流~私を憶えていますか?~』)

【 女優 】 女優賞は『Woman』のお二人以外には考えられないですね。最初から何の違和感もなく二人の子供を持つお母さんになっていた満島ひかりちゃんは、あまりテクニックを感じさせない珍しいタイプの女優さんで、台詞回しにも表情を使った表現にも独特の情感がこもる人です。そのお芝居に独特のニュアンスが宿るのは彼女の豊かな感受性の為せる業かなという気はしています。田中裕子さんはこのブログの女優賞では常連で、映画賞の方では何度か名前を挙げています。今年も今のところ『はじまりのみち』(松竹/原恵一監督)で助演女優賞を受賞する予定です。大女優と言ってもいい方なのであまり言うことはありません。このドラマを観れば誰でもわかることです。

ジャニスカ的最優秀音楽賞 ジャニスカ的最優秀主題歌賞
林ゆうき
(『DOCTORS 最強の名医』)
”メインテーマ”(『DOCTORS 最強の名医』オリジナルサウンドトラック)”rry”(『DOCTORS 最強の名医』オリジナルサウンドトラック)”mmr”(『DOCTORS 最強の名医』オリジナルサウンドトラック)
 GReeeeN / 愛し君へ
(『Oh,My Dad!!』)
GReeeeN / 愛し君へ

【 音楽 】 物語の世界観を演出するにあたって音楽が最も貢献していたのはDOCTORS 最強の名医です。毎回終盤に多用されたテーマ曲はコミカルを基調としたストーリーを引き締めてくれる効用があって、シリアスな医療ドラマの側面を盛り上げてくれました。主に相良先生の腹黒さや策略を強調するシーンで使用されたギターサウンドをベースとした「mmr」という曲もとても印象的でした。基本的に私は林ゆうきさんの音楽が好きでして、名前があれば常に音楽賞をあげたいなという気持ちでおります。代表作は『ストロベリーナイト』『リッチマン,プアウーマン』『絶対零度』(いずれもフジテレビ)などです。次クールは前シリーズに引き続いて『リーガルハイ』(フジテレビ)の音楽を担当するので注目です。

主題歌賞の選考は演出的な意図を持って本編で使われていることを条件にしています。『Woman』や『DOCTORS 最強の名医』、『激流~私を憶えていますか?~』などでも本編で主題歌が使用されていましたが、エンドロールへの橋渡し的な意味合いが強かったので、ストーリーを盛り上げるのに大きく貢献していたという意味では、『Oh,My Dad!!の主題歌、GReeeeN「愛し君へ」の存在感は主題歌と呼ぶのに相応しいものだったと思います。おそらく本作のために書き下ろされた楽曲で、フルで聴くと物語にマッチした詩に目頭が熱くなります。ドラマ主題歌の顔とも言うべきイントロも素晴らしかったです。

関連記事 : (2013-3)ドラマ期待度ランキング
2013年第2四半期のドラマ
2013年第1四半期のドラマ


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BBQ

ドラマレビューを楽しみにしてました。

私もDocters 2 が楽しかったです。森山先生がお馬鹿な行動をすればするほど、相良先生の病院改革の姿勢に重みが出てくる。そういう関係だったので安心して高嶋さん演じる森山先生の怪演を楽しめました。

中盤以降、相良先生が僕が院長になると言い出し、松田教授が加わってからは、脇役キャラの動揺っぷりがいいです。特に宮部看護士が相良先生を無条件に信頼したいのに揺らいじゃうだけでなく、時にそういう自分に戸惑っている表情を垣間見せるあたりがツボでした。
by BBQ (2013-09-24 23:06) 

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