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believe - 山口由子 [音楽]


山口由子
『 believe 』
作詞:山口由子、Jim Steele 作曲:山口由子 編曲:武部聡志
( 1999年2
月26日 / マーキュリー・ミュージックエンタテインメント )
          Official / Wikipedia  Words          

北川悦吏子さんは、1990年代から十数年間にわたって次々と高視聴率ドラマを生み出して一世を風靡したヒットメーカーで、
日本を代表する脚本家のひとりです(した)。私が氏の作品の中で大好きな作品をあげるとすれば、次の3作品になります。

 『ズンドコベロンチョ』(1991年 フジテレビ)
『Over Time-オーバー・タイム』(1999年 フジテレビ)
『Love Story』(2001年 TBS)

『Love Story』は、主人公二人の丁々発止の掛け合いが見事で、大変印象に残っている作品ですが、
主演のお二人の魅力的なお芝居が果たす役割もとても大きかったような気がします。
中山美穂さんは正直で天真爛漫で、駆け引きができない恋愛下手の編集者がはまっていたし、
豊川悦司さんは変わり者の小説家の役で、『愛していると言ってくれ』(1995年)以来のイメージを刷新しました。

純粋にストーリーのみを振り返ると、『Over Time-オーバー・タイム』というドラマは、
いまだに胸を締め付けるものがあって、北川作品の中で一番好きな作品はこれかもしれません。
今作
は「男女の友情」というテーマに真っ向から取り組んだ作品で、月9の歴史の中でも異彩を放っています。
その印象には演出の素晴らしさが大きく貢献しているのは間違いないところで、
寒々しくて静かな冬のトーンを切り取った映像表現によって、季節感とストーリーを見事にシンクロさせ、
主人公二人の思い通りにならない心情の切なさを巧みに描いており、フジテレビのドラマの中でも屈指の名演出だと思います。
このドラマのタイトルバックの美しさは、それを象徴するかのようなクオリティであり、
これまで観てきたドラマの中で、私の一番好きなタイトルバックがこれです。

(ブッキー出てたっけ!?)

このドラマのチーフディレクターだった武内英樹監督は、
フジテレビドラマ班の2大巨匠・河毛俊作監督と永山耕三監督の下でADを務めていた方で、
なんと言っても初チーフ作品、『神様、もう少しだけ』(1998年)の映像センスは衝撃的でした。
(私はこのドラマのロケを見学したことがあります。ただ、その回の演出は田島大輔監督でした。)
その後は今作を経て、『のだめカンタービレ』(2005年)で新境地を開拓、『全開ガール』(2011年)へとつながっていきます。
武内英樹監督は、名実ともに現在のフジテレビを背負って立つドラマ監督の一人と言っていいでしょう。

また、『オーバー・タイム』の演出を語るときは、音楽の存在も見逃せません。
本作の音楽を手がけた武部聡志さんは、もともとユーミンや今井美樹さんらとお仕事をしてきた音楽プロデューサーです。
劇伴作曲家としては『ビーチボーイズ』(1997年)がデビュー作で、このサントラがすごく売れたんですね。
実際、印象的な曲が多かったし、挿入歌『Sing a love song for me』を覚えておられる方は多いと思います。

この曲を歌っていたのが山口由子さんで、クセのない歌い方と澄んだ歌声は、挿入歌にぴったりでした。
そして『オーバー・タイム』にあっても武部聡志さんの音楽と山口由子さんの歌声は欠くべからざる要素となりました。
夏にぴったりの艶やかで伸びやかな歌声が、一転して情感を含んだ乾いた歌声に聞こえてしまうのは、
もちろん山口由子さんの表現力によるところでもありますが、武部聡志さんのアレンジの奥深さでもあると思います。
『オーバー・タイム』というドラマが表現しようとした「季節感」は、音楽の存在なくして表現できなかったはずです。
最終回のラストシーンでもこの「believe」という曲が効果的に使用されています。ご確認ください。

やっぱり武内演出最高ですね。そして「後ろ姿」というキーワードとまとめ方は北川脚本らしいものでした。

武部聡志さんはこのドラマのあと、
音楽プロデューサーとしては一青窈さんをプロデュースして名曲「ハナミズキ」などを生み出し、
劇伴作曲家としては『コクリコ坂から』(2011年)に至るわけですから、その才能と実力は誰もが認めるところとなりました。
歌声を引き立てるアレンジと、ストーリー・映像を引き立てる劇伴・・・どちらも決して自己主張してはならない。
名作の陰に名作曲家ありですね。


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