SSブログ

(上)夏の恋は虹色に輝く [ドラマレビュー]

『夏の恋は虹色に輝く』
(2010年 フジテレビ 全10回)
演出:澤田鎌作 脚本:大森美香 出演:松本潤、竹内結子
          Official Wikipedia / TV Drama DB          

夏のドラマはヒットしないという定説がありますが、
実は月9史上、「夏」という題材に真っ向から取り組んだ作品というものはほとんどなく、
私が思いつく限りでは、1997年の『ビーチボーイズ』ぐらいのものではないかと思っています。
ましてやラブストーリーに「夏」という要素を真正面から盛り込んだ作品となると、ちょっと思い浮かびません。
その意味ではタイトルに「夏の恋」というキーワードが入っている本作は、実は大変画期的な作品となる可能性があります。

「夏」を象徴するものといえば、いわずもがな「海」ということになりますが、
第1話の冒頭は、「波」を捉えたハイビジョン制作ならではの大変美しい映像から始まります。
私はこのテレビドラマっぽくない映像から「夏」という要素を積極的に盛り込んでいく演出上の意図のようなものを感じ、
今までの夏ドラマにはなかった大きな期待感を抱かずにはいられませんでした。
もっともその直後には、短いカットを繋ぐいわゆる「テレビドラマっぽい」演出に「やっぱり」戻ってしまったわけですが、
中盤以降、主人公二人が再会する砂浜のシーンや墓参の雨上がりのシーンなどでも、
印象的な絵作りがしっかりとなされており、第1話を通じて「夏」を際立たせるメリハリのある演出が健在だったところに、
私のこのドラマに対する期待感が殺(そ)がれることはありませんでした。

脚本を担当している大森美香さんは、軽いタッチの作風が特徴で、
人間ドラマを描いていくというよりも、シチュエーションや登場人物のキャラクターといった雰囲気で見せるストーリーは、
悪く言えば「内容がない」ということになりますが、「夏の恋」という状況設定ありきの本作では、
そのような作風が効果的に働いてくるような気がしています。

第1話では、「二人の出会い」というラブストーリーにおいて最も重要なシチュエーションが、
確信犯的に「非日常」を盛り込みつつ、主人公二人のキャラクターを「状況」の中で的確に説明するような
オリジナリティのあるアイデアに基づいていた点を高く評価したいところです。
スカイダイビングというのはボンボンの趣味としては納得がいくところだし、
楠大雅(松本潤)のアクシデントに対するリアクションとそれを冷静に処理しようとする北村詩織(竹内結子)の態度は、
二人のキャラクターを視聴者に対して巧みに印象付けるものだったと思います。
また、「すげぇ泣いてたくせに」という台詞で二人の対等な人間関係を表現するところも見事でした。

第1話の視聴率は15.7%ということで、上々の滑り出しと言えると思いますし、
詩織の「ワケあり」ぶりを匂わせた第1話の終わり方は、今後の展開を大いに期待させるもので、
内容的にも充分満足のいく滑り出しだったと思います。
今後も「夏の恋」というスペシャルな要素を見失わないストーリー展開とそれを引き立てる演出に期待したいところです。

関連記事 : (下)夏の恋は虹色に輝く
り・ぼん - My Little Lover
テレビドラマの主題歌を考察する

 
 参考:大森美香さんが手がけた主な作品
  『カバチタレ!』
(2001年 フジテレビ 常盤貴子主演)
  『ロング・ラブレター 漂流教室』(2002年 フジテレビ 常盤貴子主演)
  『ランチの女王』(2002年 フジテレビ 竹内結子主演)
  『きみはペット』(2003年 TBS 小雪・松本潤主演)
  『不機嫌なジーン』(2005年 フジテレビ 竹内結子・内野聖陽主演)
  『風のハルカ』(2005年-2006年 NHK 村川絵梨主演)
  『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』(2006年 日本テレビ 長瀬智也主演)
  『エジソンの母』(2008年 TBS 伊東美咲主演)
  『ブザー・ビート~崖っぷちのヒーロー~』(2009年 フジテレビ 山下智久・北川景子主演)


タグ:竹内結子
nice!(2)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:テレビ

nice! 2

コメント 2

テンコ

こんばんは。
私も一話を観て、どんより暗かった前のドラマと比べて、色彩がきれいで明るくていいなと思いました。
スカイダイビングのシーンはカメラマンがどうやって撮ったのでしょう?迫力ある画面で、とても良かったですし、海の風景や緑の木々等、風景が美しくて爽快でした。
それから、俳優事務所の古いビルの感じがとても気に入りました。細かいところですが、父の長い俳優生活を感じ、レトロで良いです。

夏のドラマはヒットしない定説、なるほど、そうなんですか。「ビーチボーイズ」以来、あまりないんですね。確かに大ヒットしたものって秋冬っぽい服装のが多い気がします。
大森美香さんのドラマ、ヒット作が多いですね。原作のあるものも多いようですが、今作は違うようですね。近いところでは「ブザービート」を観ました。爽やかで割と好きでした。
by テンコ (2010-07-22 20:45) 

ジャニスカ

テンコさん、nice!&コメントありがとうございます!

夏らしいさわやかなドラマになってますよね。
スカイダイビングのシーンは本当に素晴らしい出来でした。
何度かリピートして見ましたが、単独で飛ぶにはライセンスが要ると思うので、
スタントマンと特撮を併用していると思われます。
下からあおって撮っている絵はおそらくすべて特撮で、
私はクレーンで宙ぶらりんの松潤に扇風機で風を当てて撮ってるものだと想像してますが、
まったくそんな風には感じさせない仕上がりになってました。編集もうまい!
澤田演出についてはおいおい触れていきたいと思ってます。

事務所のビルは確かに味がありましたね。そのあたりも演出力だと思うので、
前作と違って、ちゃんと考えて作られている感じがして好印象です。

大森美香さんの作品をこうやって並べてみるとよくわかると思うんですが、
やっぱり「軽い」作品が多いですよね(^^;。
「ブザー・ビート」はラブストーリーにスポ根要素を盛り込んだ作品でしたが、
同じテイストの作品で、野島伸司氏が手がけた「プライド」と比較してみるとよくわかるところだと思います。
夏には複雑な人間ドラマよりも、カラッとさわやかなシチュエーションドラマの方が似合いますからね。
大森脚本に大いに期待しましょう。
by ジャニスカ (2010-07-23 11:41) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0